2026年5月19日、総務省統計局から2025年の「家計調査報告 貯蓄・負債編」が公表されました。

この調査結果によれば、二人以上世帯における平均貯蓄額は2059万円に達し、7年連続での増加を記録しました。前年比では75万円(3.8%)のプラスとなっています。

同調査における貯蓄額の分布を見ると、最も高い階級として「4000万円以上」が設定されています。この金額は平均値や中央値と比べてもかなり高額なため、「これほど多くの貯蓄を持つ世帯は、年収も相当高いのではないか」と想像する方も多いかもしれません。

しかし、実際のところ「年収の高さ」と「貯蓄額の多さ」は、必ずしも比例関係にあるのでしょうか。

この記事では、二人以上世帯の貯蓄事情について、「全体」「勤労者世帯(働く世帯)」「世帯主が65歳以上のシニア世帯」という3つの類型に分け、最新の統計データを基に詳しくご紹介します。

さらに、「貯蓄4000万円以上の世帯」がどれくらいの年収を得ているのかにも焦点を当て、高額な貯蓄を持つ世帯の家計の実態を解き明かしていきます。

1. ふたり以上世帯「全体」「働く世帯」「シニア世帯」の貯蓄平均と中央値

総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)―2025年(令和7年)平均結果―(二人以上の世帯)」を基に、世帯のタイプ別に貯蓄額の現状を確認していきましょう。

平均値は一部の高額資産保有者によって数値が押し上げられる傾向があるため、より実態に近いとされる「中央値(※)」も併せて見ていきます。

※貯蓄額が少ない順に並べたとき、ちょうど真ん中に位置する世帯の金額

1.1 二人以上世帯「全体」の貯蓄額:平均値と中央値

二人以上世帯(全体)の貯蓄に関するデータは以下の通りです。

  • 平均値:2059万円
  • 貯蓄保有世帯の中央値:1264万円
  • 貯蓄現在高が「0」の世帯を含めた中央値:1167万円(※参考値)

1.2 「勤労者世帯」の貯蓄額:平均値と中央値

次に、働いている世帯()に絞った場合、結果はどのようになるのでしょうか。

  • 平均値:1717万円
  • 貯蓄保有世帯の中央値:1015万円
  • 貯蓄現在高が「0」の世帯を含めた中央値:964万円(※参考値)

※家計調査では「勤労者世帯」と定義され、世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤務している世帯を指します。ただし、世帯主が社長や取締役、理事といった会社・団体の役員である場合は「勤労者・無職以外の世帯」に分類されます。

1.3 「世帯主が65歳以上のシニア世帯」の貯蓄額:平均値と中央値

二人以上世帯のうち「世帯主が65歳以上のシニア世帯」貯蓄額の平均・中央値4/5

二人以上世帯のうち「世帯主が65歳以上のシニア世帯」貯蓄額の平均・中央値はいくら?

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)貯蓄の状況」

世帯主が65歳以上の世帯に限定した場合の結果は、以下のようになっています。

  • 平均値:2564万円
  • 貯蓄保有世帯の中央値:1777万円

データを見ると、退職金などを受け取ったケースも多く含まれる「シニア世帯」が全体の平均を大きく引き上げていることが分かります。

一方で、現役世代である「働く世帯」の中央値は約1000万円となっており、シニア世帯とは大きな開きがあります。

2. 貯蓄4000万円超クラス!高額貯蓄世帯の「平均年収」はいくら?

それでは、今回のテーマでもある「高額な貯蓄を持つ世帯」の実態に迫りましょう。 貯蓄現在高が「4000万円以上」の世帯は、一体どれくらいの年収を得ているのでしょうか。

同調査から「貯蓄現在高階級別の年間収入」の平均を見てみましょう。

  • 二人以上世帯全体(貯蓄4000万円以上):平均年収837万円
  • 勤労者世帯のみ(貯蓄4000万円以上):平均年収1107万円

現役で働く「勤労者世帯」で貯蓄4000万円以上を達成している世帯は、平均年収が1000万円を超える“高所得世帯”であることが分かります。

しかし、「二人以上世帯全体」で見ると、貯蓄4000万円超クラスであっても平均年収は「837万円」に落ち着きます。

これは、年金生活などで現在の年収はそれほど高くなくても、長年の蓄積や退職金によって高額な資産を築いているシニア世代が多く含まれているためです。

3.  貯蓄4000万円超は何パーセント?ふたり以上世帯の「貯蓄額分布」

貯蓄の平均値や中央値を確認したところで、次はそれぞれの世帯がどのくらい貯蓄を持っているのか、より詳しい「分布」を見てみましょう。

3.1 全体の分布:貯蓄4000万円以上の世帯は15.2%

  • 100万円未満:10.1%
  • 100~200万円:5.4%
  • 200~300万円:4.8%
  • 300~400万円:3.8%
  • 400~500万円:4.1%
  • 500~600万円:4.2%
  • 600~700万円:3.4%
  • 700~800万円:3.3%
  • 800~900万円:3.1%
  • 900~1000万円:2.5%
  • 1000~1200万円:5.8%
  • 1200~1400万円:4.3%
  • 1400~1600万円:4.3%
  • 1600~1800万円:3.1%
  • 1800~2000万円:3.1%
  • 2000~2500万円:7.0%
  • 2500~3000万円:5.2%
  • 3000~4000万円:7.5%
  • 4000万円以上:15.2%

3.2 勤労者世帯の分布:貯蓄4000万円以上の世帯は10.9%

  • 100万円未満:11.2%
  • 100~200万円:6.5%
  • 200~300万円:5.6%
  • 300~400万円:4.5%
  • 400~500万円:4.8%
  • 500~600万円:4.8%
  • 600~700万円:3.8%
  • 700~800万円:3.6%
  • 800~900万円:3.3%
  • 900~1000万円:2.7%
  • 1000~1200万円:6.0%
  • 1200~1400万円:4.6%
  • 1400~1600万円:4.3%
  • 1600~1800万円:3.2%
  • 1800~2000万円:3.2%
  • 2000~2500万円:6.3%
  • 2500~3000万円:4.6%
  • 3000~4000万円:6.3%
  • 4000万円以上:10.9%

3.3 65歳以上シニア世帯の分布:貯蓄4000万円以上の世帯は21.1%

  • 100万円未満:7.7%
  • 100~200万円:3.7%
  • 200~300万円:3.4%
  • 300~400万円:2.8%
  • 400~500万円:3.2%
  • 500~600万円:3.4%
  • 600~700万円:2.6%
  • 700~800万円:2.9%
  • 800~900万円:3.0%
  • 900~1000万円:2.3%
  • 1000~1200万円:5.6%
  • 1200~1400万円:3.9%
  • 1400~1600万円:4.4%
  • 1600~1800万円:3.1%
  • 1800~2000万円:3.3%
  • 2000~2500万円:8.2%
  • 2500~3000万円:6.2%
  • 3000~4000万円:9.0%
  • 4000万円以上:21.1%

貯蓄額の分布は、世帯の類型によって大きく異なることがわかります。

「二人以上世帯全体」では、「200万円未満」の世帯が15.5%、「4000万円以上」の世帯が15.2%と、ほぼ同等の割合を占めており、貯蓄額の二極化が進んでいる様子がうかがえます。

「働く世帯(勤労者世帯)」に目を向けると、全体と比べて貯蓄が少ない層の割合が高く、「4000万円以上」を持つ世帯は10.9%に留まっています。

その一方で、「世帯主が65歳以上のシニア世帯」では、貯蓄額が4000万円を超える世帯が21.1%を占めており、この世代特有の資産状況の偏りが顕著に現れています。

これらのデータから、現役世代とシニア世代とでは、貯蓄の状況に明確な違いがあるといえるでしょう。

では、こうした貯蓄の差は「年収の差」によるものなのでしょうか。次の章では、世帯の「貯蓄額」と「年収」の関連性について、さらに詳しく見ていきます。

4. 年収と貯蓄額は本当に比例する?データが示す「意外な逆転現象」

「年収が高ければ高いほど、貯蓄も多いはずだ」と考える人は多いでしょう。しかし、データを見ると必ずしもそうとは言い切れない「逆転現象」が見えてきます。

ここでは、総務省統計局の「家計調査 貯蓄・負債編-2025年(令和7年)-第8-11表<貯蓄・負債>貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高(二人以上の世帯・勤労者世帯)」のデータを参照し、「二人以上世帯全体」と「勤労者世帯」それぞれについて、貯蓄現在高の階級別に世帯年収を確認します。

4.1 二人以上世帯「全体」の貯蓄額階級別・平均年収

  • 貯蓄100万円未満: 489万円
  • 貯蓄100~200万円: 583万円
  • 貯蓄200~300万円: 607万円
  • 貯蓄300~400万円: 634万円
  • 貯蓄400~500万円: 617万円
  • 貯蓄500~600万円: 619万円
  • 貯蓄600~700万円: 655万円
  • 貯蓄700~800万円: 650万円
  • 貯蓄800~900万円: 651万円
  • 貯蓄900~1000万円: 718万円
  • 貯蓄1000~1200万円: 681万円
  • 貯蓄1200~1400万円: 686万円
  • 貯蓄1400~1600万円: 694万円
  • 貯蓄1600~1800万円: 733万円
  • 貯蓄1800~2000万円: 762万円
  • 貯蓄2000~2500万円: 688万円
  • 貯蓄2500~3000万円: 736万円
  • 貯蓄3000~4000万円: 753万円
  • 貯蓄4000万円以上: 837万円

4.2 「勤労者世帯」の貯蓄額階級別・平均年収

  • 貯蓄100万円未満: 564万円
  • 貯蓄100~200万円: 675万円
  • 貯蓄200~300万円: 697万円
  • 貯蓄300~400万円: 743万円
  • 貯蓄400~500万円: 714万円
  • 貯蓄500~600万円: 736万円
  • 貯蓄600~700万円: 773万円
  • 貯蓄700~800万円: 776万円
  • 貯蓄800~900万円: 776万円
  • 貯蓄900~1000万円: 883万円
  • 貯蓄1000~1200万円: 835万円
  • 貯蓄1200~1400万円: 855万円
  • 貯蓄1400~1600万円: 900万円
  • 貯蓄1600~1800万円: 883万円
  • 貯蓄1800~2000万円: 998万円
  • 貯蓄2000~2500万円: 863万円
  • 貯蓄2500~3000万円: 968万円
  • 貯蓄3000~4000万円: 977万円
  • 貯蓄4000万円以上: 1107万円

貯蓄4000万円超世帯の年収と「逆転現象」

データを見ると、貯蓄が「4000万円以上」ある世帯の平均年収は、二人以上世帯全体で837万円、勤労者世帯に限定すると1107万円という結果でした。

確かに他の貯蓄階級と比較すると年収は高い傾向にありますが、リストを細かく見ていくと、「貯蓄額の階級が上がっているのに、平均年収は下がっている」という逆転現象が所々で起きています。つまり、年収の差がそのまま貯蓄額の決定的な差になっているとはいえないのです。

貯蓄の多さは「年収」だけで決まるわけではない

ここで改めて注目したいのが、前の章で触れた「世帯主が65歳以上のシニア世帯の21.1%が、貯蓄4000万円以上に該当する」という事実です。

この背景には、定年退職時の退職金や親からの相続など、家計調査の「年収データ」には直接反映されにくい資金の動きが影響している可能性があります。

このことから、貯蓄額の多さは、必ずしも現在の年収の高さだけで決まるものではないと考えることができるでしょう。

5. 年収だけでは測れない貯蓄額の背景と「新富裕層」の台頭

年収の高さだけでは説明がつかない高額貯蓄世帯の存在は、「富裕層」と呼ばれる資産家の動向とも関連が見られます。

野村総合研究所が発表した富裕層に関するニュースリリース(※1)によると、富裕層(※2)の世帯数および保有資産額は、過去に一時的な減少はあったものの、長期的に見ると増加傾向にあります。

特に2021年から2023年にかけては、株価の上昇や円安が資産価値を押し上げ、その増加が顕著になりました。

前回の2022年調査では、相続を機に富裕層入りするケースの増加が指摘されていましたが、今回の2023年調査では、自らの収入や資産運用によって富裕層の仲間入りを果たす「新たな資産家層」の存在がクローズアップされています。

例えば、株式市場の活況を背景に運用資産が1億円を超えた人々を「いつの間にか富裕層」と称し、主に40歳代後半から50歳代の会社員が中心で、富裕層以上の世帯の1~2割を占めると推計されています。

また、都市部に居住し年収3000万円を超える「大企業・共働き世帯」を「スーパーパワーファミリー」と名付け、高い収入を元手に40歳前後から急速に資産を増やし、50歳前後で富裕層に到達する可能性が高い層として紹介しています。

こうした新しいタイプの資産家の存在は、家計調査のような統計データだけでは捉えきれない側面かもしれません。

贈与や相続に頼ることなく、自身の収入や運用によって資産を築くチャンスが広がっていることは、特に現役世代にとって前向きな動きといえるのではないでしょうか。

※1 株式会社野村総合研究所 ニュースリリース「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日)
※2 世帯の純金融資産額(金融資産から負債を差し引いた金額)を基に、超富裕層(5億円以上)、富裕層(1億円以上5億円未満)、準富裕層(5000万円以上1億円未満)、アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満)、マス層(3000万円未満)の5段階に分類

6. まとめ:自身の家計状況を把握し、適切な資産形成を

今回は、世帯のタイプによる貯蓄分布の違いや、年収と貯蓄の関係、そして「新しいタイプの富裕層」の出現など、現代のリアルな資産状況を解き明かしてきました。

データから浮かび上がってきたのは、現役世代とシニア世代の資産状況の格差や、同じ年収層でも貯蓄水準に大きな差が生まれる「二極化」の現実です。

とはいえ、理想的な貯蓄目標額は、家族構成やライフスタイル、そして将来の計画によって大きく異なります。一概に「いくらあれば安心」と断言できるものではありません。

また、家計の健全性を正確に評価する上で見過ごせないのが、「負債」と「実物資産」の存在です。

住宅ローンなどの借入れがある場合、単純な貯蓄額から負債を差し引いた「純貯蓄額」や、現在住んでいる「不動産の価値」も考慮に入れた、実質的な資産全体で判断する必要があります。

今回ご紹介したデータは、あくまで全体的な傾向を示す一つの目安です。

まずはご自身のライフプランや、現在の資産と負債のバランスを正確に把握することから始めてみてはいかがでしょうか。その上で、自分たちに合った無理のない資産形成を考えていくことが、将来の安心につながる確実な一歩となるでしょう。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

7.1 【補足】家計調査における「貯蓄」の定義

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によれば、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行、その他の金融機関(普通銀行など)への預貯金、生命保険や積立型損害保険の掛金(払込総額)、そして株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式・投資信託は時価、債券・貸付信託・金銭信託は額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金や勤務先の共済組合など金融機関外への貯蓄の合計を指します。

7.2 【補足】家計調査における「年間収入」の定義

総務省統計局の「家計調査」でいう「年間収入」とは、世帯全体の過去1年間の税込み収入を指します。具体的には、以下の1から6までの収入を合計した金額です。
1. 勤め先収入(定期収入、賞与など)
2. 営業年間利益(原材料費、人件費、営業上の諸経費などを除く)
3. 内職年間収入(材料費などを除く)
4. 公的年金・恩給、農林漁業収入(農機具などの材料費、営業上の諸経費などを除く)
5. その他の年間収入(預貯金利子、仕送り金、家賃収入など)
6. 現物消費の見積り額