物価高や収入減少で生活が苦しいときに、頼れる制度が「生活保護」です。
生活保護制度は日本国憲法25条に基づき、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し自立を助けることを目的としています。
収入が地域ごとに定められた最低生活費を下回る場合、その不足分を現金給付で補填する仕組みで、日常の生活費をまかなう生活扶助や住居費の住宅扶助、医療費の医療扶助など用途別に8種類の扶助から成ります。
「資産・預貯金は生活費に充当する」「働ける人は能力に応じて働く」「年金や手当など他の制度で受けられる給付は優先して利用する」「扶養義務のある親族から可能な限り援助を受ける」といった努力をしたうえで、それでもなお収入が国の定める最低生活費に満たない場合に保護が適用される仕組みです。
ただし、生活保護の「保護率」は地域によってかなり差があります。そこで本記事では、2026年4月1日に公表された最新資料に基づき、生活保護の「保護率」が高い都道府県と低い都道府県それぞれTOP10を紹介します。
1. 生活保護の「保護率」が高い都道府県ランキング(上位10位)
生活保護を利用している人の割合(保護率=被保護者数÷人口)は、全国平均で約1.61%です。しかし地域によってばらつきが大きく、2%を超える都道府県もあります。
では、どの都道府県が生活保護を受ける人の割合が高いのでしょうか。保護率の高い都道府県トップ10は以下のとおりです。
1.1 生活保護受給率が高い都道府県TOP10
- 1位:沖縄県 2.28%
- 2位:青森県 2.20%
- 3位:北海道 2.13%
- 4位:福岡県 2.04%
- 5位:大阪府 1.91%
- 6位:東京都 1.89%
- 7位:高知県 1.78%
- 8位:徳島県 1.71%
- 9位:大分県 1.59%
- 10位:鹿児島県 1.40%
最も生活保護利用者の割合が高いのは沖縄県で、全国平均の約1.4倍にあたります。次いで青森県、北海道がいずれも2%超で続きます。
上位に入るこれらの地域の特徴として挙げられるのは、所得水準の低さや雇用環境の厳しさです。生活保護率の高い地域では大規模な雇用先がなく平均所得が低いことが要因として指摘されています。
沖縄県・青森県・北海道などは年間平均収入が全国でも下位クラスであり、収入が少ない分だけ生活保護に頼らざるを得ない人が多いと推測されます。さらに、これらの地域は完全失業率も全国平均より高い傾向にあります。
地域の経済状況や雇用環境の厳しさが生活保護受給率の高さにつながっているといえるでしょう。
2. 生活保護の「保護率」が低い都道府県ランキング(上位10位)
生活保護の「保護率」が高い都道府県を確認しましたが、低い都道府県も多く存在します。では、どのような都道府県が生活保護を受けている人の割合が少ないのでしょうか。
生活保護の「保護率」が低い都道府県上位10位は、以下のとおりです。
2.1 生活保護受給率が低い都道府県TOP10
- 1位:富山県 0.28%
- 2位:福井県 0.34%
- 3位:長野県 0.42%
- 4位:岐阜県 0.43%
- 5位:石川県 0.44%
- 6位:岡山県 0.55%
- 7位:愛知県 0.57%
- 8位:島根県 0.58%
- 9位:新潟県 0.65%
- 10位:滋賀県 0.67%
最も低い保護率となっているのは富山県(0.28%)で、突出して低い数値です。次いで福井県(0.34%)、長野県(0.42%)、岐阜県(0.43%)、石川県(0.44%)と、中部・北陸地方の県が軒並み下位に並んでいます。
これら生活保護率の低い地域の背景として考えられるのは、地方でも産業や雇用が比較的安定しており、失業者や低所得者の割合が少ないことです。実際、富山県は所得格差が小さい傾向にあり、その結果として生活保護率が全国で最も低くなっています。
また、このような地域では家族や親族と同居して生活する人が多かったり、住民の貯蓄率が高かったりすることも指摘されています。
ただし、「親族に生活保護受給者がいるのは恥ずかしい」「行政に頼らず自力で生活するべきだ」という考えが根強い地域的気質も、生活保護申請を控えさせる要因になっているとの意見もあります。
以上のように、産業構造が安定し地域社会の相互扶助や自助意識が強い土地柄では、生活保護の利用率も低く抑えられる傾向です。
一方で、こうした地域では本来生活保護を必要とする人まで申請を躊躇してしまっている可能性もあり、必ずしも困窮者が少ないだけとは言い切れない点には注意が必要です。
3. 生活保護受給世帯の半数以上が高齢者
厚生労働省の被保護者調査によると、全国の被保護世帯数(保護停止中の世帯を含まない)は2026年(令和8年)1月時点で約163万6000世帯にのぼります。
そのうち、高齢者世帯(世帯主が65歳以上)は約89万8000世帯と全体の約55%を占めており、生活保護受給世帯の過半数が高齢者世帯です。
生活保護は若年層よりも年金や蓄えだけでは生活が成り立ちにくい高齢者、とりわけ身寄りのない単身高齢者を支える制度になっていることがわかります。
実際、高齢単身者の中には「年金だけでは家賃や医療費を賄えず生活できない」という理由で保護に至る事例が少なくありません。
生活保護受給世帯の中心が高齢者で占められている現状は、日本の高齢者保障(年金・介護など)の脆弱さを映し出していると言えます。
4. 生活保護の受給は決して悪いことではない
生活保護の保護率には地域差がありますが、「保護率が低い県に住んでいれば安心」「高い県に住んでいると不安」という単純な話ではありません。
病気や失業、家族構成の変化など、生活が苦しくなるきっかけは誰にでも起こり得ます。
生活保護は一部の人のためのものではなく、いざというときに誰もが使える制度です。生活が苦しくなったときには、一人で我慢するのではなく生活保護を受給できないか自治体に相談してみてください。
参考資料
苛原 寛