1年が始まり、確定申告の準備が視野に入ってくるこの時期は、これからの暮らしや家族の将来について考え始めるタイミングでもあります。年末年始ほど賑やかではなくても、日常に戻る中で「この先、どんな備えをしておきたいか」と落ち着いて考える方も多いのではないでしょうか。

そんな中で浮かびやすいのが、「子どもや孫の将来を応援したい」「元気なうちに資金を渡しておきたい」といった思いです。こうした気持ちと深く関わるのが、贈与の制度です。

1. 贈与税の申告状況、過去最高の3935億円!約47万人が申告

国税庁が公表した令和6年分の確定申告状況によると、贈与税の申告人員は約47万人でした。前年(令和5年分)の約51万人からは減少しています。

一方で、申告された贈与税の総額は3935億円と、前年より10.9%増加し、過去最高を更新しました。「人数は減っているのに、税額は増えている」この逆転現象が大きな注目を集めています。

1.1 申告人数は減り、納税額が増えた背景

この背景の一つとして考えられるのが、令和6年分からの制度改正です。相続時精算課税制度に「年110万円の基礎控除」が新設されたことで、これまで申告が必要だった少額の贈与が、申告不要になるケースが増えました。その結果、申告人員が全体として減少した可能性があります。

一方で、資産移転そのものは活発化しており、一件あたりの贈与額が大きくなる傾向も見られます。こうした動きが、納税額の増加につながっていると考えられます。

2. 贈与の基本、「暦年課税」と「相続時精算課税制度」

贈与税の仕組みは、大きく分けて次の2つです。

  • 暦年課税
  • 相続時精算課税制度

令和6年の税制改正により、この2制度の使い分けはこれまで以上に重要になっています。

2.1 複数年に分けてコツコツ渡す「暦年課税」

暦年課税は、贈与を受けた人ごとに、1年間で110万円までであれば贈与税がかからない仕組みです。複数年にわたって計画的に贈与しやすい点が特徴です。

ただし、令和6年の改正により、相続開始前に行われた贈与を相続財産に加算する期間が、従来の3年から7年へと段階的に延びました。長期的な視点での検討がより重要になっています。

2.2 まとまった資金をはやめに渡したい「相続時精算課税制度」

近年、利用者が増えている制度の一つが「相続時精算課税制度」です。令和6年分からは、これまでの累計2500万円までの特別控除に加えて、新たに「年110万円の基礎控除」が設けられました。これにより、少額の贈与でも使いやすくなった点が注目されています。

ただし、この制度には大きな特徴があります。一度、相続時精算課税を選択すると、同じ贈与者からの贈与について暦年課税へ切り替えることはできません。制度を選ぶ段階で、将来まで見据えた判断が求められます。

3. 実際に選ばれているのはどっち?「暦年課税」と「相続時精算課税制度」

では、現実にはどちらの制度が多く使われているのでしょうか。国税庁が公表した令和6年分の確定申告データを見ると、暦年課税を利用した人はおよそ40万人と、依然として多数派です。ただし、その人数は前年より14.0%減少しています。

「暦年課税」及び「相続時精算課税」別の申告状況の推移4/4

「暦年課税」及び「相続時精算課税」別の申告状況の推移

出所:国税庁「令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(報道発表資料)」

一方、相続時精算課税を選択した人は約8万人と、前年比でおよそ6割増となりました。年110万円の基礎控除が新設されたことで、「使いにくい制度」というイメージが和らぎ、選択肢として検討する人が増えたと考えられます。

3.1 贈与の目的で考える制度選び

制度の向き・不向きは、贈与の目的によって大きく変わります。

たとえば、毎年110万円以内で子や孫に少しずつ渡していきたい場合は、暦年課税がなじみやすいでしょう。一方、住宅購入の頭金や開業資金などで、数百万円から数千万円規模の援助を考えている場合には、相続時精算課税を活用することで、贈与時の税負担を抑えながら早めに資金を移すことができます。

4. 押さえておきたい!贈与の非課税特例3選

贈与を考える際、ぜひ押さえておきたいのが、特定の目的に限定した非課税制度です。住宅や教育、結婚・子育てといった分野では、暦年課税や相続時精算課税よりも優先して検討したい手厚い枠が用意されています。

4.1 住宅取得等資金の贈与に関する非課税制度

父母や祖父母から、住宅の新築・購入・増改築などのために資金を受け取った場合、一定額まで贈与税がかかりません。

  • 非課税限度額:省エネ等住宅は1000万円、それ以外の住宅は500万円
  • 対象期間:令和6年1月1日から令和8年12月31日まで

適用には、受贈者の合計所得金額が原則2000万円以下であることや、住宅の床面積要件など、いくつかの条件があります。事前に確認しておくことが大切です。

4.2 教育資金の一括贈与に関する非課税制度

30歳未満の子や孫が、教育費として一括で資金を受け取る場合に利用できます。

  • 非課税限度額:受贈者1人あたり1500万円
  • 対象期限:令和8年3月31日までの契約分

4.3 結婚・子育て資金の一括贈与に関する非課税制度

18歳以上50歳未満の子や孫が、結婚や子育てのために資金を受け取る場合が対象です。

  • 非課税限度額:受贈者1人あたり1000万円(うち結婚資金は300万円まで)
  • 対象期限:令和9年3月31日までの契約分

5. まとめにかえて

暦年課税は、少額を計画的に渡したい人に向いた制度です。一方、相続時精算課税は、まとまった資金を早めに移したい場合に活用しやすい仕組みといえます。住宅や教育、結婚など明確な目的がある場合は、まず各種特例が使えるかを確認することが重要です。

確定申告を前に、「その年の贈与に税金がかかるかどうか」だけに目が向きがちですが、制度によっては将来の相続時の扱いが変わります。目先の負担が軽くなることが、必ずしも長期的に有利とは限りません。

「今の生活を支えたいのか」「将来の相続まで含めて考えたいのか」。年のはじめに、こうした視点で家族と話し合ってみることが、納得感のある資金計画につながっていくでしょう。

参考資料

東大森 勝太