リタイア後の生活で、現役時代と最も大きく異なるのは、収入が給与から年金に変わる点です。月の手取りが大きく変化する方もいらっしゃるため、毎月の支出管理がこれまで以上に大切になります。

そうした中で、近年は住居費・食費・光熱費といった基本的な生活費が上昇しており、予期せぬ出費が発生すると家計を圧迫するケースも増えています。

平均的な老後生活がどの程度の水準なのかを知ることは、将来への備えを考えるうえで大きなヒントになります。

そこで本記事では、総務省の家計調査などのデータをもとに、1カ月の平均的な生活費はいくらかかっているのかを具体的に解説します。貯蓄の内訳や年金の平均月額、実際の家計収支の状況について見ていきましょう。

※記事内で扱う金額等は執筆時点での情報にもとづいています。

1. シニア世帯の生活意識は?「大変苦しい」25.2%

最初に、厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯の生活意識を見てみましょう。

調査結果は以下のとおりです。

・大変苦しい:25.2%
・やや苦しい:30.6%

・普通:40.1%
・ややゆとりがある:3.6%
・大変ゆとりがある:0.6%

この結果からまず注目したいのは、「大変苦しい」「やや苦しい」を合わせた割合が55.8%と、半数を超えている点です。

多くのシニア世帯が、年金中心の収入の中で生活費や医療費、物価上昇への対応に厳しさを感じている現状がうかがえます。

一方で、「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と回答した世帯は合計4.2%にとどまり、経済的な余裕を実感できている世帯はごく少数派です。

その中間に位置するのが「普通」と回答した40.1%の層で、余裕はないものの現時点では大きな不安を抱えておらず、堅実に暮らしているシニア世帯が一定数存在していることが読み取れます。

1.1 参考|「児童のいる世帯」と「全世帯」の生活意識

【児童のいる世帯】

  • 大変苦しい:33.9%
  • やや苦しい:30.4%
  • 普通:30.6%
  • ややゆとりがある:4.6%
  • 大変ゆとりがある:0.6%

【全世帯】

  • 大変苦しい:28.0%
  • やや苦しい:30.9%
  • 普通:36.5%
  • ややゆとりがある:4.0%
  • 大変ゆとりがある:0.7%

全体的に見ると、生活が「苦しい」(大変苦しいとやや苦しいの合計)と答えた世帯は、児童のいる世帯が一番多く、高齢者世帯は全世帯平均よりも少ない状況です。

ただし、高齢者世帯は収入を増やす手段が限られているため、一度「苦しい」状態に入ると改善しにくい点が大きな問題と言えます。