4. 【ポイント解説】年金制度改正「遺族厚生年金」のルールはどう変わる?

2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」の大きな狙いの一つは、働き方や家族構成の多様化に応じた年金制度の整備です。

今回の改正では、いわゆる「106万円の壁」撤廃に関連する社会保険加入要件の拡大のほか、遺族年金に関する見直しも盛り込まれました。

4.1 遺族厚生年金《男女差の解消》に向けた見直し

現在の遺族厚生年金のしくみでは、受給者の性別によって下記のような男女差がありました。

現在のしくみ

  • 女性
    • 30歳未満で死別:5年間の有期給付
    • 30歳以上で死別:無期給付
  • 男性
    • 55歳未満で死別:給付なし
    • 55歳以上で死別:60歳から無期給付

こうした男女差の解消に向けた見直しは、男性については2028年4月から実施、女性は2028年4月から20年かけて段階的に実施されます。

見直し後

  • 男女共通
    • 60歳未満で死別:原則5年間の有期給付(配慮が必要な場合は5年目以降も給付継続)
    • 60歳以上で死別:無期給付(現行通り)

なお、今回の改正では「遺族基礎年金」の見直しも盛り込まれました。

同一生計にある父または母が遺族基礎年金を受け取れなかったケースでも、2028年4月からは、こどもが単独で「遺族基礎年金」を受け取れるようになります。

5. まとめにかえて

公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造で、老後の生活を支える柱となります。

2025年度の年金額は前年度より1.9%増額されましたが、国民年金のみの場合の満額は月額7万円弱にとどまります。老後の生活水準を維持するためには、上乗せである厚生年金が不可欠です。

厚生年金の受給状況を見ると、月額15万円以上を受け取っている人は全体の半数以下にとどまっており、老後の生活資金を公的年金だけで賄うことの難しさが浮き彫りになりました。

また、年金制度は常に変化しており、直近では2025年の制度改正で、遺族厚生年金における男女差の解消が盛り込まれました。

公的年金制度の改正や受給水準を常に把握し、ご自身の年金見込み額と平均額との差を理解することは、将来の資金計画を立てるうえで欠かせません。

公的年金を基盤としつつ、新NISAなど私的年金制度も活用して、安心できる老後生活を目指しましょう。

参考資料

マネー編集部年金班