3. 老齢年金に「上乗せ」で支給される2つの給付金
シニア世代の生活に深く関わる公的年金には、基本的な老齢年金を補うための制度がいくつか設けられています。
ここでは、老齢年金を受給している方が特定の条件を満たした場合に、年金額に上乗せして受け取れる2種類の給付について解説します。
3.1 年金生活者支援給付金:所得が一定基準以下の年金受給者を支援
年金生活者支援給付金は、基礎年金を受給している方のうち、所得が一定の基準を満たす場合に支給されるものです。この制度は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金のそれぞれに設けられています。
今回は、特にシニア世代の生活と関連の深い「老齢年金生活者支援給付金」について詳しく見ていきましょう。
老齢年金生活者支援給付金を受け取るための条件
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
- 同じ世帯の全員が市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金などの収入金額(※1)とその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下(※2)であること
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降に生まれた方で合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
老齢年金生活者支援給付金の基準額と計算方法
2025年度における老齢年金生活者支援給付金の基準額は、月額5450円と定められています。
ただし、これはあくまで基準であり、実際の支給額は保険料の納付状況に応じて計算され、以下の①と②を合計した金額となります。
- ①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5450円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- ②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1151円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
例えば、国民年金保険料を40年間すべて納付した場合、2025年度は月額5450円(年額6万5400円)が支給されます(ただし、昭和16年4月1日以前に生まれた方は計算方法が異なります)。
3.2 加給年金:条件を満たすと受け取れる「年金の扶養手当」
「加給年金」は、公的年金における「扶養手当」や「家族手当」に相当する制度と考えると分かりやすいでしょう。
老齢厚生年金を受給している方が、年下の配偶者や子どもを扶養している場合に、特定の条件を満たすと年金額に上乗せして支給される年金です。
加給年金が支給される条件
- 厚生年金の加入期間が20年(※)以上ある方:65歳に達した時点(または定額部分の支給が始まる年齢に達した時点)
- 65歳到達後(または定額部分の支給開始後)に被保険者期間が20年(※)以上となった方:在職定時改定時や退職改定時(または70歳到達時)
※共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が、40歳(女性や坑内員・船員は35歳)以降に15年から19年ある場合も含まれます。
上記のいずれかの時点で、「65歳未満の配偶者」または「18歳になった年度の末日までの子ども、もしくは1級・2級の障害を持つ20歳未満の子ども」がいる場合に、年金に加算して支給されます。
ただし、扶養されている配偶者自身が、被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金、または障害年金などを受け取る権利を持っている場合は、加給年金の対象外となります。
加給年金の支給額はいくら?
2025年度における「加給年金」の年金額は以下の通りです。
- 配偶者:23万9300円
- 子ども(1人目・2人目):各23万9300円
- 子ども(3人目以降):各7万9800円
さらに、老齢厚生年金受給者の生年月日に応じて、配偶者加給年金額に3万5400円から17万6600円の特別加算が上乗せされます。
加給年金は、対象の配偶者が65歳になると支給が終了します。しかし、その配偶者が老齢基礎年金を受け取る資格があり、一定の条件を満たせば、今度は配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」が行われる場合があります。

