3. 給付付き税額控除が抱える課題

給付付き税額控除の制度設計には、さまざまな課題も存在します。制度の完成まで時間がかかる点や仕組みが決して簡単ではない点などがありますが、なかでも「所得額の把握」は難題といえるでしょう。

会社員の場合は年末調整、個人事業主や高齢者などは確定申告で、毎年自分の所得金額を申告しています。しかし、この仕組みだけでは、全国民の正確な所得をすぐに把握するのは難しいでしょう。なかには所得を隠してわざと税額を少なくして控除しきれない分を増やし、残りの給付金を不正受給するといったことを考える人も出てくる可能性もあります。

また、所得が少なくても金融資産を多く保有している人もいるでしょう。そうした人に減税で控除しきれなかった分を給付しても、制度本来の目的である「低・中所得者層の支援」はできません。資産額の把握もするとなれば、さらに複雑なルール設計をしなければなりません。

所得額の把握や資産の扱いについては、慎重に設計していく必要があるでしょう。

次章では、給付付き税額控除と「マイナンバー制度」の関連性を解説します。

4. あわせて議論する必要がある「マイナンバー制度」

給付付き税額控除の課題である資産額の把握には、2016年1月から制度運用が始まっている「マイナンバー制度」の活用が有効です。とはいえ、実態は難しいものです。

公平な給付付き税額控除を実現するには、マイナンバーと国民の預貯金口座の紐付けが必要になります。個人の金融資産を国が把握できる状態になれば「本当に支援が必要な人は誰なのか」を、国が見極めやすくなるうえ、不正受給などにも対応できます。

しかし、なかには国に資産を把握されるのに嫌悪感を示す人もいるでしょう。また、マイナンバー制度の関連施策である「マイナンバーカード」が任意発行であることなども相まって、マイナンバー自体に不信感を抱いている人もいるのではないでしょうか。

こうした感情面に対してどう配慮できるか、どのように対応するのかによって、制度設計の進み具合は大きく変わる可能性があるでしょう。