2. 給付付き税額控除は本当に「公平」なの?
過去の給付金事業でも「非課税世帯への給付の集中」に対して不満の意見が出ました。給付付き税額控除は、前述のとおりさまざまな人に恩恵があるため、比較的公平な制度といわれます。果たして、この制度は本当に公平なのか、見ていきましょう。
まずは、実際に制度運用をシミュレーションしてみます。控除額が10万円の場合を例として、所得層別に受けられる恩恵を見てみましょう。
【中・高所得層】
- 所得税の納税額:30万円(控除額10万円を上回る)
- 控除・給付の適用:10万円が減税として適用
- 最終的な効果:納税額が20万円となり、納税負担が軽減される。
【低所得層】
- 所得税の納税額:8万円(控除額10万円を下回る)
- 控除・給付の適用:8万円は減税(納税額がゼロに)。残りの2万円を現金給付。
- 最終的な効果:納税額がゼロになり、さらに2万円が現金で支給される。
【非課税世帯】
- 所得税の納税額:ゼロ
- 控除・給付の適用:控除する税金がないため、10万円が全額現金給付される。
- 最終的な効果:減税の恩恵がなかった層にも、直接的な支援が届く。
どの所得層も、10万円の控除額を余すことなく減税や給付を受けられます。
では、次は別視点で考えてみましょう。高市総理は、給付付き税額控除について、自身の所信表明演説で以下のように述べています。
税・社会保険料負担で苦しむ中・低所得者の負担を軽減し、所得に応じて手取りが増えるようにしなければなりません。早期に給付付き税額控除の制度設計に着手します。
今回制度設計する給付付き税額控除は、低・中所得者層の負担軽減を目的としています。つまり、給付付き税額控除は、公平性を保ちながらも、低・中所得者層により手厚い支援ができる仕組みなのです。
公平性に加え「必要なところに支援を届ける」ことができるため、政府は早期の制度設計に着手しているのです。
次章では、給付付き税額控除が抱える課題を解説します。
