3. 住宅ローン「繰上げ返済」は“確実な利回り”になる
投資と異なり、繰上げ返済には市場の値動きリスクがないという点は大きなメリットです。
返済に充てた分だけ将来支払う利息が確実に減るため、家計の負担軽減効果が「ほぼ確定」するという見方ができます。
たとえば、金利1.0%のローンを繰上げ返済すれば、その分だけ実質的に年1.0%分の利息支払いを回避したのと同等の効果が期待できます(=“確定した利回り”として働く)。
ただし、この「確定効果」を実際の意思決定に活かすには、
- 自分のローンの返済期間や金利タイプ
- 金利上昇時にどの程度の人が繰上返済を検討するか
といった状況を踏まえる必要があります。
住宅金融支援機構(JHF)の調査を見ると、最近の借入では返済期間は30年超〜35年以内が最も多く、さらに35年超の長期ローンの割合は増加傾向にあります(=長期返済だと、金利変動や繰上返済の影響が大きくなります)。
【2025年4月調査:住宅ローン利用者の返済期間】
- 10年以内:3.6%
- 10年超〜15年以内:3.7%
- 15年超〜20年以内:6.3%
- 20年超〜25年以内:6.6%
- 25年超〜30年以内:8.5%
- 30年超〜35年以内:45.8%
- 35年超〜40年以内:18.4%
- 40年超〜50年以内:7.1%
また、同じ調査では将来、金利上昇に伴い、毎月の返済額が増加した場合に「繰上返済、全額返済または借換えを検討する」と回答する人が一定割合いることも示されています(たとえば毎月返済が1万円増える想定では約12%、3万円増なら約35.5%、5万円増なら35.6%が繰上返済/借換えを選択肢に挙げています)。
これらの結果は、繰上げ返済が多くの人にとって検討に値する手段であることを示す実務的な裏付けとも言えるでしょう。
3.1 注意点として
ただし注意点もあります。
繰上げ返済は確実に利息を減らしますが、その一方で手元の流動性(生活防衛資金)が減るため、生活上の余裕や将来の大きな支出(教育・介護など)を考慮して判断する必要があります。
金利が低く返済期間が長いローンでは、投資で期待リターンが見込める場合に「繰上返済より投資を選ぶ」という合理的なケースも存在します。
結局は 「ローン条件(=金利・残期間)」「手元資金の余裕」「リスク許容度」 の三軸でバランスをとるのが現実的です。