2025年1月24日、厚生労働省より2025年度の年金額が発表になりました。来月1月には、来年度の年金額が発表される予定です。
年金額は前年度から1.9%の引上げとなりましたが、年金受給者の中には厚生年金や国民年金が増えているか、減っているか気になる人も多いでしょう。
本記事では、年金額の推移について解説します。年金額の決定方法なども紹介しますので、老後の家計収支を考えるときの参考にしてください。
1. 直近の年金額の推移
最初に、直近の年金額の推移について老齢基礎年金と老齢厚生年金に分けて見ていきましょう。
1.1 老齢基礎年金は増えている?減っている?
老齢基礎年金の満額(20歳から60歳まで40年間保険料を納付したケース)の推移は次の通りです。
2021年度と2022年度は減額となりましたが、近年の物価上昇などにより3年連続で年金額は増えています。年金には増額改定だけでなく減額改定もあることを覚えておきましょう。
老齢基礎年金の満額・月額1/3
出所:厚生労働省等の資料を参考に、筆者試算・作成
- 2020年度:6万5141円(前年差133円)
- 2021年度:6万5075円(前年差▲66円)
- 2022年度:6万4816円(前年差▲259円)
- 2023年度:6万6250円(※)(前年差1434円)
- 2024年度:6万8000円(前年差1750円)
- 2025年度:6万9308円(前年差1308円)
※68歳以上の人は6万6050円で増加率は1.9%でした。
1.2 老齢厚生年金は増えている?減っている?
老齢厚生年金については、厚生労働省の試算によるモデル年金額例の推移を見ていきます。
こちらは「平均的な収入で40年間就業した場合の老齢基礎年金(満額)を含む給付水準です。ただし、前提となる平均的な収入は年度によって異なっています。
老齢厚生年金のモデル年金額例・月額2/3
出所:厚生労働省等の資料を参考に、筆者試算・作成
- 2020年度:15万5583円(前年差325円)
- 2021年度:15万5421円(前年差▲162円)
- 2022年度:15万4777円(前年差▲644円)
- 2023年度:15万8232円(前年差3455円)
- 2024年度:16万2483円(前年差4251円)
- 2025年度:16万3476円(前年差993円)
平均的な収入が年度で異なるため単純比較できませんが、老齢基礎年金と同じように直近3年間は増額が続いています。
男性の老齢厚生年金受給額の平均値と、ほぼ同じくらいの給付水準です。
ここまで、直近の年金額の推移について紹介しました。次章では、年金額の改定方法と今後の見通しについて解説します。
2. 老齢基礎年金の改定方法
年金額の改定は毎年4月に行われますが、そのとき68歳に達していない受給者(以下「新規裁定者」)と68歳に達している人(以下「既裁定者」)では改定方法が異なります。
2.1 新規裁定者と既裁定者の改定方法の違い
新規裁定者は「名目手取り賃金変動率(以下「賃金変動率」)」に応じて改定が行われ、既裁定者は「物価変動率」に応じて改定されます。
ただし、物価変動率が賃金変動率より高い場合、既裁定者の年金額は賃金変動率に応じて改定される点に注意が必要です。
つまり、既裁定者の年金額は、原則物価変動率に応じて改定されるものの、賃金変動率が低い場合、物価変動率よりも低く抑えられることになるのです。
前述の老齢基礎年金額の推移をみると、2023年度を除き新規裁定者と既裁定者の年金額改定率が同じだったのは、直近のほとんどの年度で物価変動率が賃金変動率より高かったためです。
その結果、新規裁定者と既裁定者の年金額はどちらも賃金変動率に応じて改定されました。
2.2 マクロ経済スライドによる減額
マクロ経済スライドとは、年金の給付水準を抑える仕組みのことです。少子高齢化に伴い、保険料負担者が減少する一方、年金受給者は増加しています。
現役世代の負担が大きい保険料水準は引き上げずに、年金額を少しずつ減額して年金財政の均衡を図っているのです。
具体的には、「現役世代の年金加入者の減少」と「平均余命の伸び」から算出した「スライド調整率」を使って次の通り改定率を決定します。ただし、物価や賃金が下がった場合、マクロ経済スライドによる減額は行われません。
- 新規裁定者:改定率=賃金変動率-スライド調整率
- 既裁定者:改定率=物価変動率(※)-スライド調整率
※「物価変動率が賃金変動率より高い場合」は賃金変動率を使用。
2025年度改定では、物価変動率が2.7%、賃金変動率が2.3%、スライド調整率が0.4%となり、改定率が1.9%(=2.3%-0.4%)となりました。
3. 今後の見通し「年金額はどうなるか」
近年、物価と賃金の上昇が続いているため、年金額もしばらくの間は増額するものと予想されます。
ただし、マクロ経済スライドによって年金額は物価や賃金ほどアップしません。
年金額が増えても、物価水準の上昇によって年金の価値は現在よりも相対的に低くなるでしょう。
4. まとめにかえて
厚生年金や国民年金の金額は、物価や賃金の変動率に応じて毎年4月に改定されます。近年、物価や賃金の上昇が続き、年金額も3年連続で増額改定されました。
ただし、マクロ経済スライドによって、年金の給付水準は継続的に低下していくことを覚えておきましょう。
2025年度の年金制度改正後も、年金制度の見直しが議論されています。
保険料水準や年金給付水準、第3号被保険者制度の見直しなど内容は多岐に亘りますが、老後生活に大きく影響する可能性もあるため、今後の動向に注意しましょう。
参考資料
西岡 秀泰