今年(2025年)は「団塊の世代」がすべて75歳以上の後期高齢者となり、超高齢社会の大きな節目となった年でもあります。
晩秋を迎え、年末の足音が聞こえるこの時期、「人生100年時代」を生きる私たちにとって、「年金は本当に足りるのか?」「貯蓄はいつまで持つのか?」という不安は尽きません。
本記事では、総務省、厚生労働省の一次資料をもとに、75歳以上の後期高齢シニア夫婦の「生活費」「年金」「貯蓄」のリアルな数字をご紹介。後期高齢者医療制度の基本や、医療費の窓口負担の割合についても触れていきます。
1. 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】無職世帯:ひと月の生活費、平均いくらかかる?
総務省の「家計調査 家計収支編(2024年)」から、後期高齢シニア夫婦(75歳以上の無職二人以上世帯)の平均的な家計のすがたを見てみましょう。平均世帯主年齢は80.8歳、持ち家率は95.4%です。
1.1 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】無職世帯:毎月の収入と支出
実収入: 25万2506円
- うち社会保障給付(主に公的年金給付): 20万7623円
実支出:27万3398円
- 消費支出: 24万2840円
- 食料: 7万6039円
- 住居: 1万7261円
- 光熱・水道: 2万2973円
- 家具・家事用品: 1万1301円
- 被服及び履物: 5050円
- 保健医療: 1万7280円
- 交通・通信: 2万4520円
- 教育: 390円
- 教養娯楽: 2万1536円
- その他の消費支出: 4万6490円
- 非消費支出: 3万0558円
- うち直接税: 1万1058円
- うち勤労所得税: 471円
- うち個人住民税: 2877円
- うち他の税: 7709円
- うち社会保険料: 1万9481円
- うち公的年金保険料: 1963円
- うち健康保険料: 1万0244円
- うち介護保険料: 718円
毎月の家計収支
- 実収入:25万2506円
- 実支出:27万3398円
- 家計収支:▲2万892円(赤字)
- 黒字率:▲9.4%
- 平均消費性向(※1)109.4%
- エンゲル係数(※2):31.3%
家計調査の結果から、後期高齢シニア夫婦の平均的な家計は、毎月約2万1000円の赤字であることがわかります。
年金などの収入だけでは生活費を賄えず、毎月貯蓄を取り崩している状態ですね。この赤字額をどう埋めるかが、老後生活の不安を左右します。
平均消費性向……可処分所得(いわゆる「手取り収入」)に対する消費支出の割合
エンゲル係数……消費支出に占める食料費の割合
1.2 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】支出の特徴
支出の特徴1:住居費が低め
この世代の持家率は95.4%と非常に高く、住宅ローンを支払っている世帯はわずか1.6%です。家賃やローンの支払いがほとんどないため、現役世代に比べて住居費が格段に低いことが、家計の大きな特徴です。
支出の特徴2:介護費用が含まれていない
この家計調査の支出は、一般的な日常生活費を示しており、特別大きな介護費用は含まれていません。
介護サービス利用料などは、必要に応じて一時的に大きな支出となるため、もし介護が必要となった場合、上記の赤字額はさらに拡大し、貯蓄の取り崩しペースが速くなる点に注意が必要です。
1.3 ゆとり生活との差額に注意
生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版)」によると、夫婦2人の老後の最低日常生活費は平均23万9000円、ゆとりある老後生活費は平均39万1000円。
実収入(約25万円)は、最低日常生活費をかろうじて上回る水準ですが、ゆとりある老後生活費との間には、毎月約13万円の差があります。
この差をどう埋めるか、あるいは支出をどこまで抑えるかが、老後の暮らしやすさを大きく左右するでしょう。そこで見ておきたいのが、リタイア生活を支える柱となる「年金と貯蓄」です。
