3. もしもの時、おひとりさまの遺産はどうなる?ケース別に解説

おひとりさまが亡くなった場合、遺産の行方は遺言書の有無や法定相続人の状況によって大きく異なります。

3.1 ケース1:遺言書がある場合の遺産の行方

遺言書が残されている場合、基本的にはその内容に従って遺産が引き継がれます。

ただし、法定相続人がいる場合には「遺留分侵害額請求」をされる可能性がある点には注意が必要です。

遺留分侵害額請求とは、法定相続人(兄弟姉妹とその子どもは除く)が持つ「遺留分」、つまり法律で保障された最低限の遺産取得分を主張する権利のことです。

法定相続人は、遺言によって財産を受け取った人や、法定相続分を超えて遺産を受け取った他の相続人に対して、遺留分に相当する金銭を支払うよう請求できます。

なお、この遺留分侵害額請求権は、兄弟姉妹やその子どもである甥・姪には認められていません。

「自分の家族は大丈夫」と考えていても、相続をきっかけに親族間でトラブルが起こることは珍しくありません。

例えば、離婚した元配偶者との間に娘と息子がいて、生前お世話になった娘に多くの財産を遺したいと考えても、息子が遺留分侵害額請求を行えば、娘は息子に遺留分を支払う義務が生じます。

また、遺言書があっても法定相続人全員が合意すれば、遺産分割協議によって法定相続分とは異なる割合で財産を分けることも可能です。

遺言書の内容が必ずしも絶対ではないケースもあるため、生前のうちに法定相続人と話し合っておくと安心かもしれません。

3.2 ケース2:遺言書がない場合の遺産の行方

遺言書がない場合、一般的には法定相続人全員で話し合い(遺産分割協議)、財産の分け方を決めて引き継ぎます。

この手続きには、遺産分割協議書や金融機関所定の相続届に、法定相続人全員の署名と実印の押印が必要です。そのため、一人でも合意しない人がいると、相続手続きを進めることができません。

※金融機関によっては、預貯金の残高が少ない場合に簡易的な手続きが用意されていることもあります。

3.3 ケース3:法定相続人がいない場合の遺産の行方

お子さまがおらず、ご両親や兄弟姉妹もすでに亡くなっている場合など、法定相続人が一人もいない状況も考えられます。

遺言書がなく、法定相続人もいないケース

遺言書がなく、内縁のパートナーや献身的に介護をしてくれた人(特別縁故者)からの申し立てが家庭裁判所に認められなかった場合、最終的に遺産は国に帰属します(国庫納付)。

ご自身が築いた大切な資産を国庫に納めたくない場合は、特定の法人や公益財団など、支援したい団体へ「寄付」する意思を遺言書に記しておくという選択肢があります。この場合も、手続きを円滑に進めるために遺言執行者を指定しておくことが大切です。