2. どうして早くもらわないの?年金繰上げ受給のデメリット
早くから年金を受け取れる繰上げ受給ですが、なぜあまり利用されていないのでしょうか。繰上げ受給のデメリットをいくつか見てみましょう。
2.1 年金の減額が生涯続く
繰上げ受給による年金の減額は、生涯続きます。そのため、長生きするほど、65歳から受給し始めたときと比べて受給総額が少なくなっていくのです。
厚生労働省の「令和5年簡易生命表」によれば、平均寿命は男性が81.09年、女性が87.14年となっています。男性は前年から0.04年、女性は0.05年伸びています。長生きリスクを考えると、現代において繰上げ受給は有効な選択肢になりにくいのです。
2.2 国民年金に任意加入できない
年金を繰上げ受給すると、国民年金への任意加入ができません。
任意加入とは、60歳時点で国民年金の保険料納付月数が40年(480ヵ月)に満たない場合、60〜65歳までの間国民年金に加入して保険料を納めることで、老齢基礎年金の受給額を満額に近づけられる制度です。
繰上げ受給をすると、老齢基礎年金の受け取りが始まるため、国民年金への加入ができなくなります。そのため、繰上げ受給の選択肢を取った時点で、国民年金への任意加入は諦めなければなりません。
2.3 障害年金や遺族年金を受け取れなくなる
年金を繰上げ受給すると、老齢基礎年金や老齢厚生年金を受け取るため、障害年金や遺族年金の受給要件に当てはまっていても受け取れない場合があります。
年金は「1人1年金」が原則です。日本の年金構造は2階建てのため「老齢基礎年金・老齢厚生年金」のように、同じ支給事由で受け取れるものは、基礎年金・厚生年金あわせて1つの年金とみなされます。しかし、支給事由が異なる場合は、どちらかの年金を選択して受け取らなければなりません。
そのため、障害基礎年金を受け取っている人が繰上げ受給する際は、老齢基礎年金と障害基礎年金からどちらか1つを選択します。また、老齢厚生年金を繰り上げ受給すると、65歳に達するまでの間は、原則として遺族厚生年金は全額支給停止となります。
65歳以降、遺族厚生年金を受け取る人は、老齢厚生年金の支給が優先され「遺族厚生年金>老齢厚生年金」の場合に限って、差額が支給されます。
「遺族基礎年金と老齢基礎年金」「障害厚生年金と老齢厚生年金」といった組み合わせでの年金受給ができない点に、注意しなければなりません。
次章では、年金の繰上げ受給のメリットを解説します。