寒さが身に染みる季節となり、高齢者世帯にとって大切な公的年金の支給日が間近に迫っています。

2025年度は、年金額が前年度比で1.9%引き上げられましたが、物価の高騰には追い付いていません。

また、実際の手取り額は個人差が大きく、年金や所得が少ない世帯では依然として生活費のやりくりに苦労されているのが現状です。

本記事では、2カ月に1度やってくる年金支給日に「ひとりで30万円(月額15万円)以上受給する人」の割合や、所得が一定基準額以下の年金生活者を支援する「年金生活者支援給付金」制度について詳しく解説します。

この機会に、ご自身の年金や生活支援の可能性を確認し、厳寒期を迎える前に老後の生活設計を見直すための参考にしてください。

1. 【年金制度改革関連法が成立】在職老齢年金制度の見直しとは?

2025年6月13日、国会で年金制度改革関連法が成立しました。

多様化する働き方やライフスタイルにフィットする年金制度を目指すものです。

この改正にはパートなどで働く人の社会保険加入対象の拡大(いわゆる「106万円の壁」の撤廃が関連)、遺族年金の見直し(遺族厚生年金の男女差解消、子どもの遺族基礎年金受給の要件緩和)など、注目すべきポイントがいくつかあります。

今回は、その中でも働くシニアへの影響が大きい「在職老齢年金制度の見直し」について見ていきましょう。

1.1 「在職老齢年金制度」の見直し

在職老齢年金とは、60歳以降で老齢厚生年金を受給しながら働いている場合、年金額(※)と報酬(給与・賞与)の合計が基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止となる制度のことです。
(※)老齢基礎年金は対象外となり、全額支給されます。

支給停止調整額(年金が全額支給される基準額)

支給停止調整額は年度ごとに少しずつ見直しがおこなわれてきました。

  • 2022年度:47万円
  • 2023年度:48万円
  • 2024年度:50万円
  • 2025年度:51万円
  • 2026年度:62万円

今回の改正(2026年4月から適用)では、51万円(2025年度金額)から62万円へと大幅に引き上げられることが決まりました。

厚生労働省の試算では、新たに約20万人が年金を全額受給できるようになるとされています。

この引き上げにより、年金の減額を気にして「働き控え」をするシニア世代が、より自由に働き方を選べるようになると考えられるでしょう。