本記事の3つのポイント

  •  独コンチネンタルは世界第4位に位置する車載部品サプライヤー。自動車関連売上高の約40%が日系自動車向けで、同社にとって日本市場の重要性は非常に高い
  •  18年秋から無人運転技術の開発プラットフォーム「無人運転車両」を日本拠点へ初めて導入。世界で3台所有するうちの1台で、日本市場に求められる特殊な要件の有無などを調べ、その先の製品開発に貢献する重要なテスト車両
  •  国内外の関連企業と連携した技術開発にも積極的に取り組んでいる。18年末にはエリクソン、日産、NTTドコモなどと5.8GHz帯を用いた日本初のセルラーV2Xの基本的な通信特性の実証実験の成果を発表

 

 コンチネンタル(ドイツ・ハノーファー)は、2017年の売上高ベース(自動車関連)で世界第4位に位置する車載部品のリーディングサプライヤーだ。世界61カ国に554拠点を構えており、ワールドワイドで23.5万人もの従業員を擁している。

 ビジネス分野は大きくオートモーティブグループとラバーグループの2つに分かれており、5つの事業部門(約30のビジネスユニット)から構成されている。オートモーティブグループは、シャシー&セーフティー、パワートレイン、インテリアの3部門で、全社売上高の約60%を占める。一方、ラバーグループはコンチテック、タイヤの2つの事業部門から成り、売上高は約160億ユーロを計上している。特にタイヤまでを含めた車載部品を提供できるティア1はほかになく、同社の大きな特徴と言える。

自動車関連売上高の4割が日系自動車向け

 日本では現在、約1600人の従業員が在籍しているが、そのうち50%以上がエンジニアであり、ADAS(先進運転支援システム)をはじめとする各種先進技術の開発に従事している。研究開発拠点としては、コンチネンタル・エンジニアリングセンター(横浜市)、コンチネンタル・エンジニアリングセンター(豊田市)のほか、千葉県旭市と北海道紋別市にテストセンター(テストコース)を持つ。

 トヨタや日産、ホンダなど、日本の主要OEMすべてに車載部品を提供しており、自動車関連売上高の約40%が日系自動車向けで、同社にとって日本市場(日系自動車メーカー)の重要性は非常に高い。

 現在、世界の交通事故死亡者数は年間約130万人。交通量の増加は排気ガスや大気汚染増加の要因となっている。また、高齢化社会も進展しており、特に日本は2030年には65歳以上の割合が3割以上に達すると見込まれている。

 「当社では、これらの課題を受け、ADASをはじめとするソリューション開発に取り組んでいる。自動運転分野が次のステージに進むためには、新たなセンサー類、制御ユニットがそのベースとなる。車両の全周囲を検出する能力は、自動運転における基礎的な必要条件だ。カメラは、最新の運転支援システムの実現において非常に重要な役割を果たすことになる。カメラ開発の発展が、安全で快適な無事故運転の実現の前提条件となる」とコンチネンタル・ジャパン社長のバート・ヴォーフラム氏は語る。

バート・ヴォーフラム氏

自動運転関連技術の開発に注力

 コンチネンタルでは、2018年10月に自動運転・シームレスモビリティー関連技術を体験できる試乗会「TechRide2018」を開催。プレス向けに各種最新技術を披露した。

 例えば、同社が開発した第5世代の多機能カメラ「MFC500」は、優れた暗視性能と最大800万画素の高い解像度を備え、画角も120度まで向上。横切る物体を早期に検知することができるセンシングシステムとなる。

 車を取り巻く環境は、駐車時の単純な物体検知から、サラウンドビューカメラの画像処理、道路交通における複雑な状況の制御に至るまで、環境検知条件の多様性も増加の一途をたどっている。MFC500では、従来のコンピュータービジョンの方法に加え、利用可能なハードウエアに合わせて拡大・縮小できるCNN(Convolutional Neural Network)も採用。このニューラルネットワークは、複雑な機能を学び、それらを処理・実行することができる複数の演算装置で構成されている。

 そのほか同社は、18年秋から無人運転技術の開発プラットフォーム「無人運転車両」を日本拠点へ初めて導入した。世界で3台所有するうちの1台で、日本市場に求められる特殊な要件の有無などを調べ、その先の製品開発に貢献する重要なテスト車両となる。

2018年秋に日本に初めて導入した無人運転車両

 センシングデバイスとしては、カメラやレーダー、LiDAR、GPSなどをフュージョンしており、誘導員による手信号に応じた走行も実現可能だ。なお、現在は米国製のLiDARを搭載しているが、将来的には同社で開発中のソリッドステート型フラッシュLiDARを搭載して、その性能を検証していく考え。「走査する方式ではないため、検知スピードが速く、解像度が高いのが特徴。サイズやコストに配慮した広く普及しやすいデバイスとして開発しており、21年の量産を視野に入れている」と担当者は語る。

国内外の企業と日本で実証実験

 一方、コンチネンタルは、国内外の関連企業と連携した技術開発にも積極的に取り組んでいる。18年末には、エリクソン、日産、NTTドコモ、OKI、クアルコムと行った、5.8GHz帯を用いた日本初のセルラーV2Xの基本的な通信特性の実証実験の成果を発表した。

 この実証実験は、車車間(V2V)、車と交通インフラ間(V2I)、車と歩行者間(V2P)の直接通信、また、車とネットワーク(V2N)の基地局経由通信といった車対X通信における特性評価を目的としたもの。

 日本国内のテストコースなど、複数の実験場所で行われ、追い越し禁止警告や急ブレーキ警告、ハザード警告、交差点通過アシスト、歩行者警告などのケースを想定した試験を実施。直接通信の実験では、最大時速110kmで走行する車両同士のすれ違い、車両間に遮蔽物が存在する環境などで基本的な通信性能を確認した。その結果、「中央値20ミリ秒の通信遅延、および、見通し環境で最大伝送距離1.2kmを達成、セルラーV2Xの有効性を確認しました」(担当者)としている。

 なお、実証実験では、コンチネンタルが直接通信用のクアルコム社製「9150」チップセットを搭載した試験端末「9150 C-V2X Reference Design」を日産の試験車両に組み込み、クアルコムと日産は、セルラーV2X技術の評価指標を含むテストシナリオの構築とV2Xユースケースの選定を行った。OKIはITS関連インフラ導入実績を踏まえ、V2Iによる各種アプリケーションの適用可能性を検証するため、「9150 C-V2X チップセット」を用いて交通インフラとして設置するRSUを構築。エリクソンは直接通信技術とLTE-Aネットワーク技術を融合したV2Nユースケースを検討し、ドコモはLTE-A網とLTE-A網に閉域接続したV2Nアプリケーションサーバを提供、通信を用いた様々な車両のユースケースの実現に向け、直接通信と基地局経由通信が相互補完する関係にあることを確認した。

実証実験のユースケース

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 清水聡

まとめにかえて

 「CASE(Connected Autonomous Shared Electric)」と呼ばれる100年に一度の大変革の波が押し寄せる自動車業界にあって、今回取り上げたコンチネンタルのような車載ティア1が果たす役割は非常に大きいとされています。完成車メーカーがモビリテイーサービス分野に傾注(ものづくり企業からサービス企業への脱却)するなか、ハードウエア開発は今後、ティア1企業が主導していくかたちがスタンダードになりそうです。

電子デバイス産業新聞