「会社員は年末調整だけでOK」と思っている会社員の方も多いのではないでしょうか。
年末調整では反映されない控除や所得がある場合、自分で確定申告を行うことで税金が戻ってくることがあります。
この記事では、会社員でも確定申告をした方が良い代表的な5つのケースを紹介します。
うっかり申告し忘れると、せっかくの還付を逃してしまうことも。ぜひチェックしてみてください。
1. 「年末調整」と「確定申告」の違いを整理
「年末調整」と「確定申告」はどちらも税金を精算するための手続きですが、目的と対象者が異なります。
年末調整は、会社員など給与所得者を対象に、1年間に支払われた給与から天引きされた所得税の過不足を調整する仕組みです。
勤務先が社員に代わって手続きを行うため、原則として従業員自身が税務署に申告する必要はありません。生命保険料控除や扶養控除など、会社に申告した内容をもとに税金が自動的に再計算されます。
一方の確定申告は、個人が自ら所得や控除額を申告し、正しい税額を確定させる制度です。
年末調整で対応できない控除(医療費控除や住宅ローン控除の初年度など)や、複数の収入源がある人、副業・不動産・投資などで所得を得ている人が対象になります。
つまり、会社員でも「年末調整で完結しないケース」では確定申告が必要です。
逆に言えば、年末調整で全ての収入や控除が処理されている場合は、追加の申告を行う必要はありません。
両者の違いを理解しておくことで、「自分がどちらの手続きに該当するか」「いつ申告が必要か」を判断でき、払いすぎた税金を取り戻すチャンスを逃さずに済みます。
2. ケース①:医療費が年間10万円を超えた場合 ~医療費控除の仕組みと注意点~
医療費控除とは、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が一定額を超えた場合、その超えた部分を所得から控除できる制度です。
国税庁の「医療費を支払ったとき(医療費控除)」によれば、医療費控除は次のような要件があります。
まず、対象となる「医療費」として認められるのは、本人あるいは生計を一にする配偶者・親族の医療費で、以下のようなものが含まれます。
- 病院・診療所での診療・治療・入院費用
- 処方された医薬品の購入費
- 通院時の公共交通機関利用費(タクシー代なども、例外的に認められる場合あり)
- 材料代・医療器具購入費(保険適用分・自己負担分)
- 特定条件下での補装具・義歯 など
ただし、次のような費用は対象外とされます:
- 美容目的の治療費
- 通院のための宿泊費
- 必要な医療を超えた自由診療の一部
- 医療費として補填される保険金や給付金など
2.1 控除額の計算方法
医療費控除額 = 支払った医療費の合計額 − 保険金などで補填された金額 − 控除の基準額(10万円または所得の5%)
ただし、総所得金額等が200万円未満であれば、控除の基準額は「総所得金額等の5%」となります。
例を挙げると、所得が300万円の人が年間医療費で15万円を支払っていた場合、控除基準は10万円なので、控除可能額は(15万円 − 10万円)=5万円です。
また、医療費控除を受けるには、「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付する必要があります。医療費の領収書そのものの提出は不要ですが、税務署からの求めに応じられるよう、領収書は自宅などで5年間保管する義務があります。
こうした控除を見逃すと、払いすぎた税金を戻せないことになるため、医療費がかさんだ年は確定申告を検討する価値が高くなります。
2.2 生計を一にするとは?家族で申告する際のポイント
税法上の「生計を一にしている」とは、同じ家計で生活費を共同に負担している状態を指します。必ずしも同居している必要はなく、別居していても仕送りなど経済的なつながりがあれば認められる場合もあります。
この「生計を一にする」関係にある家族がいると、医療費控除をまとめて申告できるというメリットがあります。
家族の所得や医療費をうまく合算することで、税負担を軽減できることがあります。申告の際は、家族の収入状況と控除の対象範囲を確認しておくことが大切です。
3. ケース②:ふるさと納税を複数の自治体に寄付した場合 ~ワンストップ特例と確定申告の切り替え~
ふるさと納税は、実質2000円の自己負担で地方自治体に寄付ができ、所得税・住民税から控除を受けられる制度です。
国税庁が定める「ふるさと納税ワンストップ特例制度」によれば、寄付先自治体数が5団体以内であれば、給与所得者など確定申告不要の人は確定申告をせずに控除を受けられます。
しかし、以下のような場合は確定申告が必要になります。
3.1 寄付先自治体が6団体以上になってしまった
6団体をこえた場合は、確定申告が必要になります。以下は作成画面のイメージとなっています。
詳しくは国税庁の確定申告に関するサイトをご確認ください。
3.2 ワンストップ特例の申請期限(翌年1月10日)を過ぎた
ワンストップ特例の申請には期限があります。これを過ぎてしまった場合は、確定申告をする必要が出てきます。
3.3 医療費控除や住宅ローン控除など、他の控除を利用するために確定申告をする必要がある
ワンストップ特例を選択していた人が、後から他の控除を受けるために確定申告をすると、その年の寄付分をすべて申告書に記載し直す必要があります。
その際、ワンストップ申請をしていた寄付分も、確定申告で再計算することになります。
4. ケース③:副業・アルバイトなどで20万円を超える所得がある場合 ~申告ラインと実例注意点~
会社員であっても、副業やアルバイト、投資収入などがある場合には、確定申告義務が発生するケースがあります。基準となるルールは以下です。
年金以外の所得(給与・事業収入・家賃収入・配当・譲渡所得など)から必要経費を差し引いた所得金額が年間20万円を超えるときに申告が必要
※逆に、この額が20万円以下であれば、確定申告不要となることが多い
例えば、給与所得が本業で年末調整済みでも、ネットで少額の副業をしていて、その所得が30万円になっていたなら、その副業分について申告が必要です。
最近では、YouTube広告収入・アフィリエイト収入・フリマアプリの売上なども「雑所得」として扱われるケースがあります。
たとえ少額の場合でも、複数の収入源を合算して20万円を超えることがあるため注意が必要です。
さらに、副業でかかる交通費・通信費・備品代などを必要経費として正しく差し引けるかどうかが所得の左右を大きく影響するため、経費の証拠(領収書など)をきちんと保管しておくことが重要です。
5. ケース④:住宅ローンを組んだ初年度 〜初年度だけは確定申告が必要〜
「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」は、住宅ローンを利用してマイホームを購入した際に、最大13年間にわたり所得税・住民税の一部が戻る制度です(※控除期間は購入年度や制度改正時期により異なります)。
この制度は、国税庁の「住宅を新築・購入したときの控除(住宅借入金等特別控除)」に定められています。
控除を受けるには、次の条件を満たす必要があります:
- 自分が住むための住宅であること(投資・別荘は対象外)
- 返済期間が10年以上の住宅ローンであること
- 床面積が50㎡以上(または特例で40㎡以上)あり、登記上の所有者であること
- 年収要件:合計所得金額が2000万円以下(令和6年分の場合)
初年度は必ず確定申告が必要です。
住宅ローンの契約書や登記事項証明書、金融機関の年末残高証明書などを添付し、税務署に申告します。2年目以降は、会社員であれば年末調整で自動的に控除が適用されるため、申告の手間はかかりません。
6. ケース⑤:年の途中で退職し、その後再就職していない場合 〜年末調整されない人は還付申告のチャンス〜
会社員は通常、年末調整によってその年の所得税が精算されますが、年の途中で退職して再就職していない場合、年末調整が行われません。年末調整は「その年の最後に勤務している会社」でしか行われないというルールがあるからです。
この場合は、自分で確定申告を行うことで、払いすぎた税金が戻る可能性があります。
退職時に会社から渡される源泉徴収票を基に、1年間の所得を確定申告書に記入します。申告の結果、所得控除(社会保険料控除・基礎控除など)が適用されることで、税額が減り、源泉徴収された所得税の一部が還付されるケースが多くあります。
また、次のような場合も確定申告を行うことで還付を受けられる可能性があります:
- 退職後に国民年金・国民健康保険を支払った
- 医療費が多くかかった
- 生命保険料控除や地震保険料控除を申告していない
6.1 転職・再就職した人も注意!
転職した場合は、通常は現職の会社が前職の源泉徴収票を合算して年末調整を行いますが、それが間に合わなかったり、提出を忘れたりした場合は、ご自身で確定申告を行うと税の過不足を正確に調整できます。
特に短期間で転職した場合、どちらの勤務先でも年末調整がされず、二重で源泉徴収されているケースも少なくありません。
6.2 源泉徴収票がもらえなかった場合
転職後に前の職場から源泉徴収票をもらえていない場合は、まず旧勤務先に発行を依頼しましょう。会社には、退職者からの求めに応じて源泉徴収票を交付する義務があります。
前の勤務先が倒産・連絡不能などで源泉徴収票を発行してもらえない場合は、給与明細や振込記録をもとに所得金額を算出し、「源泉徴収票不交付の届出書」を添付して申告可能です。
税務署が会社に確認を行うこともあり、手続き自体は個人で完結できます。
記載事項や提出のプロセスについては、国税庁のサイトを事前に確認してください。
7. まとめにかえて
年末調整だけでは受けられない控除や還付は意外と多くあります。
医療費控除やふるさと納税、副業など、少しでも該当する項目がある人は、確定申告をすることで払いすぎた税金を取り戻せるかもしれません。
手続きは面倒に感じるかもしれませんが、スマートフォンやマイナンバーカードを使えばオンラインで簡単に申告できます。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」は、令和7年1月から、スマートフォンでも操作しやすくなりました。
これまで一部の控除についてPCでしか対応できなかった項目がスマホ申告に対応するなど、利便性がさらに向上しています。パソコン画面もシンプルで見やすくなり、スマホ申告がより便利になっています。
「知らなかった」で損をしないよう、毎年の年末調整シーズンに合わせて見直してみましょう。
参考資料
- 国税庁「医療費控除を受ける方へ」
- 国税庁「確定申告が必要な方」
- 国税庁「医療費を支払ったとき」
- 国税庁「確定申告書作成コーナー」
- 国税庁「公的年金等の課税関係」
- 国税庁「マイホームの取得等と所得税の税額控除」
- 国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
- 国税庁「中途退職で年末調整を受けていないとき」
- 国税庁「源泉徴収票不交付の届出手続」
- 政府広報オンライン「令和6年分の確定申告はご自宅から申告できる便利な「e-Tax」をご利用ください!確定申告会場への来場や書類の持参が不要です」
和田 直子