5. なぜ給付金制度ができたのか
給付金制度の開始前である2016年には、当初2017年から開始予定だった年金生活者支援給付金の前倒し的位置付けとして、1人3万円の「年金生活者等支援臨時福祉給付金」が支給されました。
その後、2019年に現在の制度が開始されています。
給付金ができた背景にはさまざまなことが考えられます。そのひとつとして「賃上げの恩恵の少なさ」が挙げられるでしょう。
賃上げの効果は、まず現役世代へわたり、その後年金額の改定により年金受給世代へと波及します。
しかし、年金額の改定は賃金だけでなく物価も考慮する必要があるため、効果は限定的です。
そうした世帯のなかでもとくに生活の苦しい低所得世帯をダイレクトに支援するために、年金生活者支援給付金ができたと考えられます。
また、年金額の底上げも理由のひとつです。基礎年金額は2025年現在でも満額で6万9308円と、東京都の生活保護費の目安(約13万円)よりも低い金額です。
そのため、厚生年金に加入できなかった人や60歳まで自営業として生活してきた人は、備えがなければ厳しい老後を強いられます。
そうした人が増えないよう、当時の政府は全世代型の社会保障の充実を掲げ、給付金制度を設立したのです。
6. まとめ
年金生活者支援給付金は、消費税の引き上げ分を財源として、低所得者を支援しています。2019年開始とまだ日の浅い制度ですが、現代のシニア世代の生活に役立つ制度といえるでしょう。
一方、消費税減税などを実施すれば、制度の存続自体が危ぶまれるものです。
また、本来は給付金に頼らず、最低限度の生活ができる水準の年金が支給されるのが望ましい状況です。そうした状況が将来的に訪れるよう、社会保障改革は早急に取り組まれる必要があるでしょう。
参考資料
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「障害年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「遺族年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求される方の請求手続きの流れ」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 厚生労働省「年金生活者等支援臨時福祉給付金」
石上 ユウキ