2025年10月4日、高市氏が就任会見で、支援策として「給付付き税額控除」の具体化に向けた党内議論を進める方針を明らかにしました。

この制度について高市氏は、「社会保険料の逆進性を考えると最もメリットがあり、中所得、低所得の方々を応援する方法だ」と述べ、導入の意義を強調しています。

本記事では、この「給付付き税額控除」の仕組みや導入の背景について解説します。また、「住民税非課税世帯」の収入・所得の目安についても確認していきます。

1. 高市氏が言う「社会保険料の逆進性」とは

社会保険料(年金、健康保険など)は、所得に比例して一定率を負担するように見えますが、実際には低所得者のほうが負担が重くなりやすいという特徴があります。

これを「逆進性(ぎゃくしんせい)」といいます。

1.1 例:年収200万円と年収1000万円の場合

  • 年収200万円の人が社会保険料を30万円払う→所得の15%
  • 年収1000万円の人が社会保険料を150万円払う→所得の15%

一見同じ割合ですが、低所得者は生活費の余裕が少ないため、この15%の負担が生活に与える影響が大きいというわけです。

さらに、保険料には上限があるため、実際には高所得者の負担率は下がり、低所得者ほど相対的に重くなります。

2. 「給付付き税額控除」の仕組みと特徴

「給付付き税額控除」は、所得税の減税(税額控除)と現金給付を組み合わせた新しい支援制度です。

通常の税額控除と違い、控除しきれなかった分は現金で受け取れる点が特徴です。

以下に、仕組みと特徴をわかりやすく解説します。

2.1 具体例で見る仕組み(控除額:10万円の場合)

具体例で見る仕組み(控除額:10万円の場合)1/7

具体例で見る仕組み(控除額:4万円の場合)

LIMO編集部作成

Aさん(中所得層)

税額10万円をまるごと控除できるため、結果的に税金がゼロになります。
ただし、税金をすべて控除したので給付はありません。

Bさん(低所得層)

税額が5万円しかないので、控除後も5万円分余ります。
その余り分5万円が現金で給付されます。

Cさん(非課税世帯)

そもそも税金を払っていないため、10万円の控除はすべて給付(現金支給)されます。

このように、給付付き税額控除は、「税金を減らす」だけでなく、「税金を払っていない人にも現金を支給する」しくみです。

3. なぜ「一律給付」ではなく「給付付き税額控除」なのか

「給付付き税額控除」が一律の現金給付より注目されているのは、公平性や効率性など、いくつかのメリットがあるからです。

3.1 所得に応じた支援が可能

一律給付の場合、所得に関係なく全員に同じ額を配るため、高所得者にも支援が届いてしまい、結果として財源の無駄遣いになる恐れがあります。

これに対して、給付付き税額控除は所得税の控除をベースにし、控除しきれない分を現金で補う仕組みです。こうすることで、支援を本当に必要としている低所得層に重点的に届けることができます。

3.2 非課税世帯にも対応できる

これまでの減税では、税金を払っていない非課税世帯には恩恵が届きませんでした。

しかし、給付付き税額控除なら、控除しきれない分を現金で支給できるため、非課税世帯にも直接支援が行き渡ります。

こうした仕組みによって、「給付付き税額控除」は単なる現金給付よりも、より的確に支援を届けられる制度として政策面で注目されています。今後の制度設計や導入のタイミングにも関心が高まっています。

4. 「住民税非課税世帯」ってどんな世帯?

非課税世帯になると、医療費や介護保険料の軽減、給付金など、さまざまな支援を受けられる可能性があります。

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置2/7

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置

出所:各種資料をもとにLIMO編集部にて作成

ここからは、住民税非課税世帯となるための要件や収入・所得の目安をわかりやすく解説します。

4.1 「住民税」の仕組み

住民税は、所得に関係なく一律課税される「均等割」と、所得に応じて税額が決まる「所得割」の2層構造です。

均等割・所得割どちらも課税されないことを「住民税非課税」と言います。そして「住民税非課税世帯」とは、世帯全員が住民税非課税となる世帯のことです。

※なお「住民税の所得割のみ非課税となるケース」もあります。ただし今回の給付金など、各種支援の対象となるかどうかは自治体により異なるため、必ずお住まいの市区町村などの基準をご確認ください。

5. 「住民税非課税世帯」となる3つの要件

下記3つのいずれかに該当する場合に、住民税が非課税となります。

  1. 生活保護を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦、ひとり親で、前年の所得が135万円以下である
  3. 前年の所得が各市区町村などの基準を下回る

1と2の項目は全国共通ですが、3は市区町村ごとに異なる基準が定められています。

6. 「住民税非課税」となる所得要件・収入の目安(大阪市)

住民税が非課税となる所得要件は自治体ごとに異なります。ここでは大阪市を例に見ていきましょう。

6.1 「住民税非課税世帯」となる所得のボーダーライン

前年の合計所得金額が、次の算式で求めた額以下となる人

(1)同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
    35万円 × (本人 + 同一生計配偶者+扶養親族)の人数+ 21万円 + 10万円
(2)同一生計配偶者および扶養親族がいない場合
    35万円 + 10万円(給与所得者の場合、年収100万円以下の人が該当)

大阪市の住民税非課税限度額は、単身世帯であれば「前年の合計所得45万円以下」です。

同一生計の配偶者や扶養親族が1名の場合は「101万円以下」、2名の場合は「136万円以下」のように上がっていきます。

ただし「所得」は、収入から各種控除が差し引かれたあとの金額です。次は、この基準を「収入ベース」に換算した金額も見ていきましょう。

6.2 「住民税非課税世帯」となる収入の目安

単身世帯の場合

前年度の所得合計:45万円以下

  • 給与収入が100万円以下
  • 65歳未満で年金受給のみ:年金収入が105万円以下
  • 65歳以上で年金受給のみ:年金収入が155万円以下

同一生計の配偶者や扶養親族が1名の場合

前年度の所得合計:101万円以下

  • 給与収入が156万円以下
  • 65歳未満で年金受給のみ:年金収入が171万3334円以下
  • 65歳以上で年金受給のみ:年金収入が211万円以下

同一生計の配偶者や扶養親族が2名の場合

前年度の所得合計:136万円以下

  • 給与収入:205万9999円以下
  • 65歳未満で年金受給のみ:年金収入が218万1円以下
  • 65歳以上で年金受給のみ:年金収入が246万円以下

非課税限度額は収入の種類や、世帯構成により変動します。また、年金収入のみの場合は、65歳未満より65歳以上のほうが、非課税となるラインがぐんと上がります。

現役時代よりも収入が下がるケースが一般的であること、遺族年金が非課税であること、さらに65歳以上は公的年金の最低控除枠が多くなっていることなどからも、シニアの年金世帯は「住民税非課税世帯」に当てはまりやすいと言えるでしょう。

7. まとめ

「給付付き税額控除」は、これまで支援が届きにくかった低所得層にも確実に手を差し伸べられる可能性がある制度として、注目を集めています。

ただ、導入までの道のりは簡単ではありません。高市新総裁は就任会見で、この制度の議論を進める方針を示しつつも、「給付付き税額控除はすぐに実現できるものではない。制度設計や対象の決定、所得の把握、システム構築など、数年単位で時間がかかる」と語っています。

一方で、長引く物価高で国民生活は厳しさを増しています。だからこそ、この制度の検討と並行して、より即効性のある対策を急ぐことが強く求められています。

※LIMOでは、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。

参考資料