「積立(つみたて)投資」という言葉を耳にされた方も増えてきたのではないでしょうか。投資と積立は一見組み合わせとしてはしっくりこない、という方もいるかもしれません。しかし、積立投資は投資初心者にとっては非常に使い勝手のよい投資のアプローチです。積立投資が資産形成をする上で便利な理由について考えてみます。
そもそも積立投資とは何か
「積立」といえば、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。「預貯金!」という方も多いのではないでしょうか。ただ、ここでの「積立投資」とは定期的に投資を行うことを言います。
投資とは、「資産価格が値上がりしそうなタイミングに大金で一気に行うもの」とお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、積立投資では、あえて資金を一度で投資せず、投資のタイミングを分散させます。
投資を始めてみたものの…直面する問題とは
これまで投資をしたことがない方が、何らかの投資を始めるという第一歩を踏み出してみたものの、その後に直面するいくつかのハードルがあります。それはどのようなことでしょうか。
- 投資をしたものの、投資をしたことを忘れてしまう
- 資産価格が毎日動くのが怖くなり、追加で投資ができない
投資の初心者に多いのは、「投資は難しい」といって積極的に情報や知識を得ようとはしなくなったり、「いちいち資産価格をフォローするのがめんどくさい」という心理になってしまうことがあります。こうした状況は投資家としての行動に関係する問題とも言えるでしょう。
投資をしたことを忘れて本当に失うこと
では、投資をしたことを忘れるのは良くないことなのでしょうか。
たとえば、初めから一度に大金の投資ができ、その後に投資先の資産価格が大きく上昇するのであれば、投資をしたことを忘れてしまってもその投資家は幸せであったといえるでしょう。
しかし、最初に株式に投資をした金額が10万円だったとして、その後株価が10倍になるというケースはどうでしょうか。たとえ、そのような株式に投資をすることができても、はじめの投資資金が10万円であれば100万円となるのにすぎません。
「100万円もあればいろいろできるではないか」という指摘は当然あろうかとは思います。ただ、老後の生活資金をこれから形成していこうという世帯等には、とてもではないですが足りない金額です※。投資金額が少額の場合、投資を1回行って、その後は何もせずに忘れるというスタンスでは大きな資産を築くことはできません。こうしてみると、資産形成層は、少額の一度きりの投資ではなく、投資を継続することによって、老後資金のような大きな資産を築くことができるようになります。
※老後に必要な資金については、「ゆとりある老後の生活に必要な資金はどのくらいか」を参照のこと
資産価格の変動でいつ買ってよいのかわからない
さて、投資初心者によくある質問に「いつ、どのタイミングで買えばよいのですか」というのがあります。
確かに、資産価格が大きく値下がりした時に、その後の反発を期待して、一度に投資をし、その後資産価格が狙い通りに上昇すれば、大きな収益を手にすることができるでしょう。
ただ、こうした投資は初心者にとっては難しく、資産価格が下落すると「まだ下がるかもしれないから、少し様子を見よう」という姿勢になりがちです。
様子を見ている間に資産価格が上昇したケースでは、投資としては絶好の機会であったのにもかかわらず、そのチャンスを見逃してしまうことになりかねません。
一方、値下がり局面でも、定期的に投資をしていると、「ドルコスト平均法」と呼ばれるような資産の買値を下げる効果を享受することが場合によっては可能です※。一定の金額を定期的に投資する中で、資産価格が下がった時にはより多くの持分を購入し、資産価格が上がった時にはより少ない持分を購入するという考え方です。こうすることで、資産価格の変動を気にせずに投資を実行することができます。
このように、「買うタイミングを見極める」というスタンスを捨て去ることで投資初心者が直面するハードルの1つを乗り越えることができます。
※「ドルコスト平均法」については「積立投資ってそもそもどういう投資?」を参照のこと
投資初心者に規律を与える積立投資の2つの特徴
こうしてみると、投資初心者は、積立投資によって、冒頭に見た投資の初心者が陥りやすい2つの問題点をうまくクリアすることができます。ここまで見てきた内容を改めてまとめてみましょう。
- 継続的に投資をすることで中長期的に資産形成ができる条件を整えることが可能
- 資産価格や相場変動を気にせずに継続的に投資をすることができる
投資はややもすれば「どの資産を選択するのか」、また「いつ買うのか」や「いつ売るのか」といった専門知識やテクニカル面での要素に注目が集まりがちです。
投資の初心者がそうした知識に関して時間をかけて身につけていくこと自体は良いのですが、資産形成に使うことができる時間が刻々と過ぎているというのもまた現実としては忘れてはいけないでしょう。
株式市場では1日で大きく下落するシーンはよくある風景ですが、それと同時に大きく上昇する銘柄もあります。ただ、株式といっても短期間に何倍にもなる銘柄がいくつもあるわけではありませんし、その逆もまた同じです。老後に向けて資産形成をしたい層が目標とする金額を積み上げていくためには時間が必要なのは言うまでもありません。
このように積立投資というスタイルを受け入れることで投資家としての行動に規律を持ち込むことができると言えます。
まとめにかえて
最後になりますが、積立投資において「つみたてNISA」のような制度を活用することで税制のメリットを受けることが可能です。ここまで見てきたように積立投資は投資初心者にとって心理的にバリアとなるシーンを上手に回避することができますし、税制のメリットも条件次第で受けることができます。まだ積立投資に挑戦されていない方はこの機会に検討されてみてもよいのではないでしょうか。
mattoco Life編集部