筆者はファイナンシャルアドバイザーとして資産運用の相談を承っていますが、その中の多くは「NISAをやろうと思っているのですが」「iDeCoが気になっているのですが」などの相談が多くなっています。

「周りが始めているから」「ニュースで見たから」「何かしらしないといけないと思ったから」など理由は様々です。中には「税金対策として」「非課税だから」などもあります。

色々な非課税制度は世の中にありますが、今回は住民税が非課税になる世帯はどんな世帯か。住民税の基礎的な仕組みも踏まえて詳しく解説していきます。

1. 【実施済】住民税非課税世帯の3万円給付金をおさらい

コロナ禍以降、住民税非課税などを対象とする「現金給付」により、家計を支援する施策がしばしばおこなわれています。

2024年度補正予算(※2024年12月可決・成立)では、特に物価高の影響を受けやすい「住民税非課税世帯」を対象に実施された「3万円給付金」もその例です。

「住民税非課税世帯」は、こうした各種公的支援の対象基準になることが多い区分です。

【ご注意】「住民税非課税世帯」を対象とする「3万円給付金」は、2025年1月以降、各自治体で順次給付作業がスタートし、7月現在、多くの市区町村ですでに申請期限を迎えています。

給付金の申請方法や給付までのスケジュール、細かい支給要件などは市区町村により異なります。お住まいの自治体の最新情報を、ホームページや広報誌などでご確認ください。LIMOでは個別のお問い合わせへのお答えはいたしかねます。

2. 「住民税のしくみ」と「非課税の基準」を確認

「住民税非課税世帯」は、今回の給付金のような公的支援の対象基準としてよく使われる区分です。所得に関係なく一律で課税される「均等割」と、所得に応じて決まる「所得割」の両方が免除されている世帯を指します(※)

住民税が非課税となるのは、以下のいずれかに該当する場合です。

  1. 生活保護を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年の所得が135万円以下
  3. 前年の所得が各市町村の定める基準を下回る

ただし、3つめの所得基準は自治体ごとに異なります。

※なお「住民税の所得割のみ非課税となるケース」もあります。ただし今回の給付金の対象となるかどうかは自治体により異なるため、必ずお住まいの市区町村などの基準をご確認ください。

3. 【真岡市の例で解説】住民税非課税世帯の所得目安

先述の通り、住民税が非課税となる所得要件は、自治体により違います。栃木県真岡市の例を見てみましょう。

3.1 住民税非課税世帯に該当する要件(栃木県真岡市の例)

(1) 生活保護法による生活扶助を受けている人
(2) 障がい者、未成年者、寡婦またはひとり親で前年中の合計所得金額が135万円以下の人
(3) 前年中の合計所得金額が【28万円×(本人+同一生計配偶者・扶養親族の人数)+10万円+17万円(※)】以下の人
(※)17万円は、同一生計配偶者または扶養控除の対象となる扶養親族を有する人について加算

真岡市の場合、単身世帯(同一生計配偶者や扶養親族がいない人)であれば、下記の計算式により、前年の合計所得金額が38万円まで、均等割がかからないことになります。

【28万円×(本人1+同一生計配偶者0+扶養親族0)+10万円=38万円】

ただし「所得」は、収入から各種控除がされたあとの金額です。収入換算の方がイメージしやすいかもしれませんね。

そこで住民税非課税限度額を、年収ベースで見ていきます。

3.2 住民税が非課税となる限度額(栃木県真岡市)

栃木県真岡市の場合、扶養人数が0人の場合、アルバイトやパートなどの「給与収入」ならば、住民税非課税限度額は「93万円以下」です。

一方、年金収入のみであれば住民税非課税世帯となる限度額は上がります。65歳未満は「98万円」ですが、65歳以上になると「148万円」にまで引き上がります。

非課税限度額は扶養家族の数が多いほど高くなります。加えて、65歳以上で「公的年金収入のみ」となる場合はさらに引き上がります。

このようなしくみから、老齢年金を受け取るシニア世帯は「住民税非課税世帯」の要件を満たしやすいと考えられるでしょう。

4. 老齢年金世帯が「住民税非課税世帯」になりやすいワケ

老齢年金世帯は「住民税非課税世帯となりやすい」ことを裏付けるデータがあります。

厚生労働省が公表する「令和6年国民生活基礎調査」によると、「住民税が課税される世帯」の割合は、60歳代で79.8%、70歳代で61.3%、80歳代以上では52.4%と低下しているのです。

現役時代よりも収入が減ることは想像にたやすいですが、遺族年金が非課税であることや、老齢年金には各種控除枠が大きく設けられていることも要因と考えられます。

ただし、住民税非課税の判定の基準はあくまでも所得です。預貯金をたくさん持っているお金持ちシニアが、年金収入が基準額以下で住民税非課税となるケースもあります。

住民税非課税世帯には、もちろんシニア以外の幅広い年齢層が含まれます。そして、住民税非課税世帯が受けられる支援は、一時的な現金給付だけではありません。

  • 国民健康保険料(応益割)の減額
  • 介護保険料の減額
  • 国民年金保険料の免除・納付猶予
  • 幼児教育・保育の無償化
  • 高等教育の修学支援新制度

などを始めとする、公的な優遇措置についても確認しておけたらよいですね。

5. 2025年の年金改正でどう変わる?

2025年6月13日、国会で年金制度改正法が成立しました。今回の改正の見直しポイントには、働き盛りの現役世代の暮らしと関わり深い項目がいくつかあります。

今回はこのうち「保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ」について紹介します。

5.1 保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ

厚生年金保険料や健康保険の保険料、年金額を計算する際には、月々の報酬と賞与を一定の幅で区切った「標準報酬月額」という基準額が用いられています。

2025年7月現在、標準報酬月額の上限は月65万円。月の収入が65万円を超えた場合でも、保険料や将来の年金額の計算に使われるのは上限の65万円までとなっています。いくら稼いでも保険料や年金額が「頭打ち」となるのです。

厚生労働省によると、現在会社員男性の約10%がこの上限に該当。賃金が上限を超えると保険料負担は相対的に軽くなりますが、老後に受け取る年金額も低くなります。

今回の改正では、この標準報酬月額の上限を段階的に「月65万円→75万円」へ引き上げることが盛り込まれました。

標準報酬月額の上限《引き上げイメージ》

  • 2027年9月~:月68万円
  • 2028年9月~:月71万円
  • 2029年9月~:月75万円

これにより、高収入層の保険料負担は増えますが、これまでよりも現役時代の賃金に見合った年金を受給することが可能となります。

6. まとめ

本記事では住民税の仕組みから住民税非課税世帯の該当要件、給付金などについて見てきました。

税金が非課税になるのは生活する上でうれしいことかもしれません。しかし、今回の要件を見てもらうとわかるように決して生活にゆとりある世帯が対象になるとは言えません。

老後生活を送るうえで必要になる資金の基本は「貯蓄」と「年金」です。

場合によっては、働き続けるという選択をされる方もいるかもしれません。

働くうえでも健康状態によって働けるかどうかも変わってきます。

予想していなかった未来が来てもある程度対応できるように余裕をもって準備しておきましょう。

参考資料