今年の春ごろに「近年、障害年金の不支給率が増加した」と報道があり制度の公平性が問われる事態となった障害年金制度。そしてこの秋、厚生労働省と日本年金機構は審査方法の抜本的な見直しを進めています。2025年9月19日に日本年金機構は「不支給等事案にかかる点検作業の進捗状況について」を公表しました。すでに、2024年度の精神障害の不支給事案2895件のうち124件が精査され、支給へと判断が改められています。
障害年金は、もしも働けなくなったり、生活に困難が生じたりした場合に、私たちを経済的に支える大切な「社会保障」です。今回はどのような障害が多く支給されているのかなどをふまえ、審査方法について今後のどのように見直されるのかなど、わかりやすく解説します。
1. 【障害年金】「どの障害が多く支給される?」診断書の種類別に確認
障害年金を受け取るためには、申請をおこない「受給資格がある対象かどうか」認定される必要があります。初めての申請は「新規裁定」、継続受給のための申請は「再認定」といいます。
1.1 《新規裁定》13万3614件の割合
日本年金機構が令和6年9月に発表した「障害年金業務統計(令和5年度決定分)診断書の種類別支給件数」によると、「新規裁定」は全体で13万3614件あり、そのうちの約70%が《精神障害・知的障害》、特に障害基礎年金では82.1%を占めていることがわかります。視覚・聴覚・肢体など含めた《外部障害》も「新規裁定」で19.3%、糖尿病などの《内部障害》11.2%であり、多様な障害に対応している実態がうかがえます。
1.2 《再認定》23万5011件の割合
一方、23万5011件あった「再認定」でも同様に《精神障害・知的障害》が74.5%と最多で、こちらも障害基礎年金では79.7%と約8割を占めていました。これは、継続的な支援を要する精神障害の特性を反映しています。次に多いのは《外部障害》の14.5%、《内部障害》が11.0%で、こちらも長期的な経過観察を伴うケースが多いとされるのがわかります。
これらの統計から、新規・再認定の合わせて約36万件のうち、《精神・知的障害》に対する支援ニーズが高く、また、年金制度が多様な障害に対応していることがわかります。ここでは主な傾向として、診断書の種類ごとの支給件数を紹介しました。
そして、障害年金の認定については審査の透明性や公平性を高めるための見直しが現在進められています。次の章でみていきましょう。