4. 金融庁の「資産形成商品」への位置づけ案

金融庁は、政府が閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン」の方針に基づき、暗号資産を「国民の資産形成に資する金融商品」として位置づける議論を進めています。

この議論の方向性として、株式などの他の金融商品と同等の投資家保護のための規制を整備するとともに、分離課税の導入など、税制面の抜本的な見直しを検討していく姿勢を示しています。

4.1 想定される法整備の柱

説明義務・適合性規制の導入

投資家がリスクを理解できるよう、取引所に十分な情報提供を義務づける。

税務当局への取引データ報告制度

  • 取引所が投資家の取引内容を税務当局に直接報告する仕組みを導入。
  • 申告漏れや計算ミスの防止につながる。

課税の整合性確保

  • 現行の総合課税から分離課税(20.315%)に変更する方向性が期待される。
  • 他の金融商品と同様に損益通算を可能にする仕組みも議論対象。

これらがもし、実際に改正されることになったらどうなるのでしょうか?

4.2 実現した場合に期待できる効果

税負担の軽減

例:現在は最大55%(所得税45%+住民税10%=55%)の税率がかかるが、分離課税20.315%になれば負担は大幅減少。
→ 課税所得が4000万円以上で税率が55%となる場合、100万円の利益に対する税金:55万円 → 約20万円に縮小。

申告の簡素化

税務当局へ取引所がデータを提出すれば、投資家の手続き負担が軽減される。

投資意欲の向上

損益通算が可能になれば、損失リスクを抑えやすくなり、暗号資産投資の心理的ハードルが下がる。

4.3 現行制度と改正後のイメージ比較

実際の例を紹介します。

現行税制のケース

10万円でビットコイン購入 → 20万円で売却(利益10万円)

年収500万円の場合:税率約30% → 税金約3万円

手取り利益:約7万円

改正後(仮定:分離課税20.315%)

同条件で税金約2万円

手取り利益:約8万円

損益通算が可能になれば、損失が出ても税負担を抑えられます。

4.4 今後の見通し

これらの法整備が実現すれば、暗号資産も株式や投資信託と同じように「資産形成の選択肢」として扱える日が来る可能性があります。

ただし、実現には法改正が必要であり、現時点ではまだ実現するとは決まっていません。