「富裕層」と聞くと、どのような人々を思い浮かべるでしょうか。実は、日本における富裕層の数は年々増加傾向にあります。

特に12月は、ボーナスや年末調整などで家計や資産状況を見直すタイミングでもあり、資産形成への関心が高まる季節です。

この記事では、調査データを基に富裕層の定義や世帯数を解説するとともに、彼らがなぜ資産を増やし続けているのか、その背景に迫ります。

また、富裕層が実践するとされる資産運用のコツや、年収別の金融資産データも紹介しますので、ご自身の資産形成の参考にしてみてはいかがでしょうか。

1. 富裕層が実践する資産運用のコツ3選

ここでは、富裕層が資産を運用する際に重視しているとされる、3つの基本的な考え方をご紹介します。

1.1 資産運用のコツ1:コア・サテライト戦略でリスクを管理する

富裕層の資産運用では、リスクをうまくコントロールするために「コア・サテライト戦略」がよく使われます。簡単に言うと、資産を安定した“コア(核)”と、積極的にリターンを狙う“サテライト(衛星)”に分けて運用する方法です。

コア部分には、インデックスファンドや国債など、比較的リスクの低い商品を組み込み、長期的に安定した収益を目指します。一方で、サテライト部分では個別株や新興国株式など、より高いリターンが期待できる資産に挑戦します。

こうすることで、守りの資産で土台をしっかり固めながら、攻めの資産で成長を狙う、そんなバランスの取れた運用が可能になるわけです。

1.2 資産運用のコツ2:長期的な視点で複利効果を最大化する

富裕層は、短期的な市場の動きに振り回されず、長い目で資産を育てることの大切さを理解しています。そのカギになるのが「複利の力」です。

複利とは、運用で得た利益を元本に組み込み、さらに再投資することで、利益が利益を生む仕組みのこと。時間が経つほどこの効果は大きくなり、まるで雪だるまが転がって大きくなるように資産が増えていきます。だからこそ、時間を味方につけることが重要です。

目先の利益にとらわれるのではなく、10年、20年といった長期の計画を立てて投資を続けること。それが、資産をしっかり増やすための本当の秘訣といえるでしょう。

1.3 資産運用のコツ3:専門家を活用し、最新の情報を取り入れる

富裕層と呼ばれる人たちの多くは、投資をすべて自分ひとりで判断しているわけではありません。

プライベートバンカーやファイナンシャルアドバイザーなど、金融のプロの力を上手に借りています。第三者の視点でアドバイスをもらうことで、相場に一喜一憂したり、感情に流された判断を避けやすくなったりするのが大きなポイントです。

また、専門家とのやり取りを通じて、自分では見落としがちなリスクや、思いがけない投資の選択肢に気づけることもあります。

日々の経済ニュースや市場の動きを確認しつつ、「必要に応じて投資方針を見直していく」そうした姿勢が、長い目で資産を守り、育てていくための土台になっています。

2. 日本の富裕層とは?定義と世帯数を解説

一般的に「富裕層」と呼ばれる人々は、具体的にどのような世帯を指すのでしょうか。株式会社野村総合研究所の調査報告を基に、その定義を確認していきましょう。

2.1 純金融資産1億円以上が「富裕層」の定義

株式会社野村総合研究所のレポートによると、日本の全世帯は預貯金や金融資産から負債を差し引いた「純金融資産保有額」によって、5つの階層に分類されています。

この中で、純金融資産が1億円以上の世帯を「富裕層」、さらに5億円以上の世帯を「超富裕層」と定義しています。

2.2 日本における資産家の割合は?世帯数で見る富裕層の実態

株式会社野村総合研究所の調査では、「富裕層」と「超富裕層」を合わせた世帯数は165万3000世帯にのぼり、これは日本の全世帯のうち約3%を占めています。

  • 超富裕層(5億円以上):11万8000世帯/135兆円
  • 富裕層(1億円以上5億円未満):153万5000世帯/334兆円
  • 準富裕層(5000万円以上1億円未満):403万9000世帯/333兆円
  • アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満):576万5000世帯/282兆円
  • マス層(3000万円未満):4424万7000世帯/711兆円

富裕層と超富裕層が保有する純金融資産の合計額は469兆円です。これは、全世帯の保有資産総額(1795兆円)の約26%にあたり、資産が上位約3%の層に集中していることがわかります。

3. 富裕層と超富裕層はなぜ増えているのか?

株式会社野村総合研究所の調査によると、「富裕層」および「超富裕層」の世帯数と資産規模は、2005年以降の推移を見ると長期的に増加傾向にあります。リーマンショックや東日本大震災といった経済的な出来事による一時的な減少はあったものの、特に2011年以降は一貫して増え続けています。

富裕層と超富裕層が保有する「純金融資産保有額の合計」の推移は以下の通りです。

  • 2011年:188兆円
  • 2013年:241兆円
  • 2015年:272兆円
  • 2017年:299兆円
  • 2019年:333兆円
  • 2021年:364兆円
  • 2023年:469兆円

2013年から2023年の10年間で、これら2つの層が保有する純金融資産の総額は約72%も増加しており、著しい伸びを見せています。

4. 日本で富裕層が増加している3つの背景

近年、日本において富裕層が増え続けている背景には、主に3つの要因が考えられます。

4.1 背景1:世界的な株価の上昇トレンド

第一の要因として、国内外の株価上昇が挙げられます。米国の「ダウ工業株30種平均」や「S&P500」などの主要な株価指数が示すように、世界の株式市場は短期的な変動を繰り返しながらも、長期的には上昇傾向を維持してきました。

富裕層は、一般の世帯と比較して株式の保有額が大きく、総資産に占める株式の割合も高い傾向にあります。そのため、こうした世界的な株高が、資産を持つ人々の資産をさらに押し上げる大きな要因になったと考えられます。

4.2 背景2:NISAなど非課税制度の普及

第二に、非課税で投資できる制度が拡充され、個人が資産形成に取り組みやすくなったことも影響しています。

具体的には、「NISA(少額投資非課税制度)」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」といった税制優遇制度が広く知られるようになりました。特にNISAは2014年に開始された後、2024年からは「新しいNISA」として制度が拡充されています。

これらの制度をきっかけに、これまで投資に関心がなかった層も資産運用を始めるケースが増えました。制度開始の早い段階から運用を始めた人の中には、相応の利益を得ている人もいると推測されます。

4.3 背景3:相続・贈与による資産承継

富裕層が増加している第三の要因は、相続や贈与による資産の承継です。日本は少子高齢化が進行しており、一人の子どもが相続する遺産の額が増加する傾向にあります。

この結果、これまで富裕層ではなかった一般的な家庭の人々が、親や祖父母から多額の資産を相続することで、新たに富裕層の仲間入りをするケースも増えています。

このように、株価の上昇、資産形成機会の拡大、そして資産承継という複数の要因が重なり、富裕層の増加につながっていると考えられます。

中には、本人の意図とは別に、こうした社会環境の変化によって富裕層になった人も少なくないでしょう。

5. 年収別にみる金融資産の内訳

2024年12月にJ-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」から、世帯の年間収入別に見た金融資産の内訳データを確認します。※金額等は執筆時点での情報にもとづいています。

5.1 年収と金融商品の保有額の関係性

年間収入別の金融資産保有額

全国平均:1374万円

  • 収入はない:249万円
  • 300万円未満:661万円
  • 300~500万円未満:1065万円
  • 500~750万円未満:1233万円
  • 750~1000万円未満:1939万円
  • 1000~1200万円未満:2069万円
  • 1200万円以上:4178万円
  • 無回答:-

年間収入別の預貯金額

全国平均:582万円

  • 収入はない:154万円
  • 300万円未満:322万円
  • 300~500万円未満:446万円
  • 500~750万円未満:533万円
  • 750~1000万円未満:750万円
  • 1000~1200万円未満:821万円
  • 1200万円以上:1781万円
  • 無回答:-

年間収入別の債券保有額

全国平均:66万円

  • 収入はない:1万円
  • 300万円未満:14万円
  • 300~500万円未満:35万円
  • 500~750万円未満:83万円
  • 750~1000万円未満:114万円
  • 1000~1200万円未満:76万円
  • 1200万円以上:195万円
  • 無回答:-

年間収入別の株式保有額

全国平均:260万円

  • 収入はない:15万円
  • 300万円未満:111万円
  • 300~500万円未満:237万円
  • 500~750万円未満:219万円
  • 750~1000万円未満:348万円
  • 1000~1200万円未満:311万円
  • 1200万円以上:872万円
  • 無回答:-

年間収入別の投資信託保有額

全国平均:155万円

  • 収入はない:41万円
  • 300万円未満:65万円
  • 300~500万円未満:103万円
  • 500~750万円未満:109万円
  • 750~1000万円未満:300万円
  • 1000~1200万円未満:340万円
  • 1200万円以上:437万円
  • 無回答:-

年間収入別:投資商品(債券・株式・投資信託)の合計額と割合

全国平均:35.0%

  • 収入はない:57万円(22.9%)
  • 300万円未満:190万円(28.7%)
  • 300~500万円未満:375万円(35.2%)
  • 500~750万円未満:411万円(33.3%)
  • 750~1000万円未満:762万円(39.3%)
  • 1000~1200万円未満:727万円(35.1%)
  • 1200万円以上:1504万円(36.0%)
  • 無回答:-

このデータを見ると、「債券・株式・投資信託」といった投資商品の保有額は、年収が高いほど多くなる傾向が見られます。

一方で、金融資産全体に占める投資商品の割合に注目すると、年収750~1000万円未満の層で39.3%とやや高くなりますが、「収入がない」世帯を除けば、他の年収層でもおおむね30%台で推移しています。

このことから、資産運用は一部の富裕層だけが行うものではなく、一般的な年収の世帯にも広く浸透している様子がうかがえます。

物価上昇が進む現代において、預貯金だけで資産を保有するのではなく、ご自身に合った無理のない範囲で投資を行い、資産を育てていくことが将来の安心につながるかもしれません。

いわゆる「富裕層」の資産規模に達することは難しくても、自身のリスク許容度に合わせた運用方法を選択することが大切です。

6. 富裕層の資産運用から学ぶこと

この記事では、富裕層の定義や世帯数、そして富裕層が近年増加している背景について解説しました。

富裕層や超富裕層は、預貯金だけでなく株式や投資信託といった金融資産を積極的に活用して資産を形成していると考えられます。

現在の低金利時代では、銀行にお金を預けておくだけで資産を増やすことは困難です。物価上昇によって実質的な資産価値が目減りするインフレリスクへの対策も重要になります。

富裕層に限らず、多くの世帯で資産運用が広まっています。この機会に、物価高の状況も踏まえながら、将来に向けた資金計画を一度見直してみてはいかがでしょうか。

参考資料

菅原 美優