年金制度や経済の先行きが不透明な現代、将来に向けた資産形成は、あらゆる世代にとって重要なテーマとなっています。
特に12月は、一年を振り返り、来年の家計や投資計画を見直す絶好のタイミングです。その有力な選択肢として注目されているのが、コツコツと資産を育てる「積立投資」です。特に、税制優遇を受けられるNISA制度の普及が、この流れを力強く後押ししています。
統計データによれば、2024年末時点でのNISA口座開設数は2559万口座に達し、20代が307万口座、30代が449万口座を占めるなど、若年層からも強い関心が寄せられていることが明らかになっています。
また、NISA口座で商品購入をした投資家のうち、「積立投資」の枠を活用した割合は50代以下の全世代で80%を超えており、NISAを通じた積立投資が広く浸透していることが窺えます。
本記事では、新NISAのつみたて投資枠を活用して毎月5万円、15年間の積立投資を行った場合のシミュレーションを3つの異なる利回りパターンで検証します。
加えて、NISA口座を効果的に活用するための方法や、投資における含み損の捉え方についても解説していきます。投資の参考として、ぜひご覧ください。
1. 積立投資のシミュレーション
この説明では、15年間にわたって毎月5万円を投資した場合の最終的な利益を、3つの異なる利回りでシミュレーションします。
【シミュレーションの前提条件】
- 投資期間:15年間(50歳から65歳)
- 年間利回り:1%・3%・5%の3パターン
- 投資方法:毎月定額投資
- 投資金額:月5万円(年間60万円)
1.1 パターン1:年間利回り1%
- 総投資額: 900万円
- 運用益: 71万円
- 最終的な運用資産: 971万円
1.2 パターン2:年間利回り3%
- 総投資額: 900万円
- 運用益: 235万円
- 最終的な運用資産: 1135万円
1.3 パターン3:年間利回り5%
- 総投資額: 900万円
- 運用益: 436万円
- 最終的な運用資産: 1336万円
1.4 年間利回りによる将来資産の差
今回は月額5万円の積立投資を15年間続けた場合について、年利回り1%、3%、5%の3パターンで最終的な運用益を計算しました。
結果として、年利1%の低金利でも15年後には71万円の運用益が発生することがわかりました。
さらに年利3%では235万円、5%では436万円と、利回りに比例して利益が大きく増加します。このことから、たとえ低金利環境でも、普通預金に預けるよりは積立投資の方がはるかに多くの利益を期待できることが明らかになりました。
ただし、このシミュレーションではすべてプラスの利回りで計算していますが、投資は元本保証ではありません。
価格の下落により利益が出ないだけでなく、投資した元本が減少する可能性もあることを忘れてはいけません。
このような元本割れのリスクも考慮した上で、自分自身が許容できる範囲内で積立額を決めることが重要です。
1.5 「年間利回り」の考え方
今回のシミュレーションで使用した「年間利回り」という言葉は、投資信託の積立投資と株式投資では少し意味が異なります。
株式投資の世界では、「利回り」と言うと多くの場合「配当利回り」を指します。これは「株価に対して、会社が年間に支払う配当金がどれくらいの割合か」を表すものです。例えば、株式を1万円分保有している場合、年間300円の配当があれば、配当利回りは3%となります。この配当利回りには、株価自体が上がることで得られる利益(値上がり益)は含まれていません。
一方、投資信託では配当金に相当するものが基本的に存在しないため、「利回り」と言えば基準価額の値上がり率を意味することが一般的です。
例えば「年間利回り5%」とは、1年間で投資信託の価値が5%増加することを指します。
しかし、投資信託の価値は市場の状況によって日々変動するため、「平均の年間利回り」は実際に売却するまで確定しません。今回のシミュレーションは「もしこの利回りで順調に資産が増えた場合」という仮定に基づく将来予測です。
つまり、最終的な資産価値を予測するための目安として利用しています。
2. 新NISAでの積立投資で知っておくべき3つの注意点
メリットが多く取り上げられるNISA口座ですが、積立運用をする際に知っておくべき注意点も存在します。ここでは、損失が出た際のNISA口座特有のデメリットと、注意点を説明します。
2.1 損益通算ができない
まず知っておきたいのは、NISA口座で投資して損失が出た場合、他の口座で得た利益と損益通算ができないという点です。
通常の特定口座であれば、ある銘柄の売買で出た損失を、別の銘柄の利益と相殺して税金の計算ができますが、NISA口座ではそれができません。
これはNISAがそもそも「非課税」制度であるため、利益に税金がかからない代わりに、損失についても税制上の恩恵を受けられない仕組みになっているからです。
そのため、他の口座で株式を運用しており、その利益が出た時であっても、NISA口座で運用している商品の売買による損失では相殺ができないのです。
2.2 損失が出たらどうすれば良いか?
新NISAのつみたて投資枠で選択できる商品は比較的安定しており、大暴落などが想定されていないものが多いです。
しかし、それでも売却をする際に価値が下落して損失が出る状態になることもあり得なくはありません。
ここで言う損失とは、実際にはまだ売却していない「含み損」の状態、つまり積み立てた銘柄の現在価値が投資額より下がっている状態を指します。
このような状況になったとき、これ以上損を出したくないがために売却という判断をとると、その含み損はそのまま積立投資の損失となります。
しかし、焦って売却せずに様子を見た方が、結果的に損失を防いで利益を得ることができるケースも多くあります。
2.3 なぜ焦って売らないほうが良いのか?
新NISAのつみたて投資枠で選べる銘柄は、基本的に株式市場全体と連動して推移するインデックスファンドや分散投資型の投資信託が中心です。株式市場は短期的には上下に変動しますが、長い目で見ると緩やかに上昇する傾向があります。
例えば、過去100年の世界の株式市場を見ると、様々な危機や不況を乗り越えながらも、長期的には上昇してきました。一時的に価値が下がったとしても、長期的に見れば再び利益になる可能性が高いのです。
この「時間の力」を味方につけるのが、積立投資の大きな魅力です。一時的な下落に動じず、淡々と積立を続けることで、むしろ安い価格で多くの口数を買えるという利点もあります。
そのため、新NISAのつみたて投資枠において損失に対処するためのポイントとして、長期的な視点を持ち、一時的な市場の変動に惑わされずに売却のタイミングを考えることが重要となります。
3. おわりに
この記事では、15年間、毎月5万円を積立投資した場合のシミュレーション結果を見てきました。
年利1%でも71万円、5%なら436万円もの運用益が生まれる可能性があることが分かりました。これは「時間」と「複利」の力を味方につけることの大切さを示しています。
人生100年時代と言われる現代では、退職後の生活資金を年金だけに頼るのではなく、自分自身で資産を育てていく姿勢がますます重要になっています。特に新NISA制度を活用することで、より効率的な資産形成も可能です。
もちろん、投資には元本割れのリスクも存在します。
しかし、長期的な視点で、自分の許容できるリスクの範囲内で始めることで、将来の経済的な選択肢を広げることができるでしょう。
15年間の投資と考えれば、50代からでも遅くありません。ぜひ、ご自身の老後の生活設計を改めて考えてみてください。




