3. 【2025年度】厚生年金・国民年金は1.9%増に
2025年1月24日、厚生労働省は2025年度(令和7年度)の年金額を公表し、年金額は前年度より1.9%引き上げとなりました。
3.1 2025年度の国民年金と厚生年金の年金額例
- 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):6万9308円(+1308円)
- 厚生年金(夫婦2人分):23万2784円(+4412円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額6万9108円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
年金額が増えることは一見すると良いことのように思えます。
しかし、物価上昇率が年金額の増加率を上回る場合、受け取る年金の金額は増えても、実際に購入できる商品の量やサービスの質は低下してしまいます。
3.2 年金が「実質目減り」といわれる理由
年金額の改定率の決め方は次のとおりです。
まず、物価変動率(+2.7%)と賃金変動率(+2.3%)の「低い方」を基準とします。年金額が増えると現役世代の負担が増大します。
賃金変動率以上に年金額を増やすと、現役世代の負担が賃金上昇率を超えて増大するとの考え方から、賃金上昇率<物価上昇率の場合には、賃金上昇率に合わせて改定率を決める仕組みです。
令和7年度での改定では、賃金上昇率が物価上昇率より低かったため、この時点で物価上昇率「2.7%」より下回る形となります。
さらに、マクロ経済スライドによる調整で、▲0.4%下方修正されています。これは、年金制度を持続可能なものにするために、被保険者の減少や平均余命の伸びによる一人あたりの受給期間の伸びを踏まえて、年金額の引上げを抑えるルールです。
以上の仕組みにより物価変動率+2.7%に対して、年金額の改定率は+1.9%となります。つまり、物価上昇に年金額が追い付いていません。このような「実質的な目減り」は、年金生活者にとっては厳しい状況と言えるでしょう。