老後の生活や将来のお金に対する不安から、資産投資を「自分ごと」として考える方が増えています。

中でも、初心者でもある程度安心して始められるNISAによる投資は、多くの人々の関心を集めています。

金融庁の最新調査では、NISA口座の開設者数は2647万人(2025年3月時点)に達しており、これは日本人の実に5人に1人以上が利用している計算になります。

本記事では一つのモデルケースとして、2024年に開始された新NISA制度を最大限に活用した場合のシミュレーションを行います。

10年間、上限額で積立投資を継続した結果、資産額がどう推移するのかを、3つの異なる想定利回りを用いて具体的に試算します。本記事が、皆さまの資産形成プランを考える際の一助となれば幸いです。

1. 新NISA「つみたて投資枠」の上限額

まずは、今回のシミュレーションで前提となる、新NISAの「つみたて投資枠の上限額」について説明していきます。

NISAには、1年間に非課税で投資できる金額に上限が定められています。この上限額までの投資で得られた利益(分配金や売却益)には、税金がかかりません。

2024年から始まった新NISAでは、この非課税で投資できる枠が引き上げられ、積立投資用の枠である「つみたて投資枠」では、年間120万円の非課税投資枠を利用することができます。

つまり、毎月最大10万円まで非課税での積立投資が可能です。

さらに、新NISAには生涯にわたって非課税で保有できる上限額として「生涯非課税保有限度額」が新たに設けられており、この金額は、もう一つの投資枠である「成長投資枠」と合わせて合計1800万円です。

仮に毎年120万円ずつ積み立てると、15年でこの上限に到達する計算です。

さらに、もし途中でNISA口座内の商品を売却した場合には、非課税保有限度額(総枠)は、売却の翌年以降に再び利用できるようになります。

2. 成長投資枠とつみたて投資枠の違い

新NISA制度には「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という2つの異なる投資枠が設けられており、それぞれ特徴や目的が異なります。

つみたて投資枠は、長期・積立・分散投資を基本理念とした投資枠です。この枠で購入できるのは、金融庁が定めた厳格な基準を満たした投資信託のみとなります。

投資初心者でも比較的安心して始められるよう設計されており、長期的な資産形成の土台として位置づけられています。

一方、成長投資枠は年間240万円という高い投資上限額が特徴で、つみたて投資枠対象商品に加えて、個別株式や多様な投資信託など幅広い金融商品に投資することができます。

投資の自由度が高く、ある程度の知識や経験を持つ投資家がより積極的な運用戦略を展開するのに適しています。

投資初心者で安全性を重視したい場合には、厳選された商品のみを対象とするつみたて投資枠を利用しての積立投資がおすすめです。

市場の変動に左右されにくい積立投資を通じて、着実な資産形成の第一歩を踏み出すことができるでしょう。

成長投資枠とつみたて投資枠の違い2/6

成長投資枠とつみたて投資枠の違い

出所:金融庁「NISAを知る」

3. 【つみたて投資枠】「上限いっぱい=年間120万円」積立投資したら15年後の資産はいくら?

今回は、つみたて投資枠で年間120万円を上限である15年間積立した場合に、最終資産額がいくらになるのか、3パターンの利回りでシミュレーションをしていきます。

【シミュレーションの前提条件】

  • 投資方法:毎月定額投資
  • 投資期間:15年間
  • 投資金額:月10万円(総投資額:1800万円)
  • 年間利回り:1%.3%.5%の3パターン

3.1 パターン1:利回り1%

  • 運用益: 141万円
  • 最終的な運用資産: 1941万円

パターン1:利回り1%3/6

パターン1:利回り1%

出所;金融庁「つみたてシミュレーター」

3.2 パターン2:利回り3%

  • 運用益: 470万円
  • 最終的な運用資産: 2270万円

パターン2:利回り3%4/6

パターン2:利率3%

出所;金融庁「つみたてシミュレーター」

3.3 パターン3:利回り5%

  • 運用益: 873万円
  • 最終的な運用資産: 2673万円

パターン3:利回り5%5/6

パターン3:利率5%

出所;金融庁「つみたてシミュレーター」

3.4 積立額による将来資産の差

本シミュレーションでは、新NISAのつみたて投資枠の上限額である月々10万円を15年間継続して積立投資した場合の資産形成結果を、異なる3つの利回りパターンで検証しました。

結果として、最も控えめな「利回り1%」であっても、15年後には141万円の運用益が生まれることが分かりました。

さらに利回りが3%、5%と上昇するにつれて、投資利益も470万円、873万円と大幅に増加していきます。

複利効果が長期間にわたって働くことで、利回りの小さな差が最終的な資産額に大きな違いをもたらすのです。

ただし、新NISA「つみたて投資枠」の商品は比較的安定した運用が期待できるとはいえ、投資である以上、元本保証はありません。投資金額が大きくなれば、市場下落時の資産減少額も同様に大きくなる点に留意する必要があります。

「預金として眠らせておくには惜しいけれど、過度なリスクは避けたい」と考える方にとって、新NISAの「つみたて投資枠」は理想的な資産形成手段といえるでしょう。

積立額を決定する際には、自分自身のリスク許容度を冷静に判断し、長期間無理なく継続できる金額を設定することが何よりも重要です。

市場の一時的な下落に動揺せず、長期的視点で投資を続けられる金額こそが、あなたにとって最適な積立額なのです。

4. NISAを活用することによるメリット

最後に、積立投資を行う場合に「NISA」を利用することのメリットを、簡潔にご紹介していきます。

4.1 投資利益が非課税

NISA制度の最大のメリットは、投資による利益が非課税である点です。

通常、投資利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を利用することでこの税金が免除されます。

例えば、今回のシミュレーションで、パターン1の場合、通常の投資口座であれば利益141万円に対して約28万円の税金がかかるため、手元に残るのは約113万円となります。

しかし、NISA口座で運用した場合は141万円の利益がそのまま手に入ります。

NISAを活用することによるメリット6/6

NISAを活用することによるメリット

出所:金融庁「NISAを知る」

4.2 少額でも積立投資ができる

新NISAの「つみたて投資枠」では、商品や証券会社によっては、毎月1000円程度からの少額な積立投資が可能です。

そのため、無理のない範囲で投資を続けることができます。

4.3 安全性の高い商品が豊富

つみたて投資枠で購入できる商品は、金融庁が定めた「長期・積立・分散投資」に適しているという基準を満たしたものに限定されています。

その大半を、特定の市場指数への連動を目指す商品が占めており、比較的リスクが分散された商品が中心となっています。

これらの点から、新NISAの「つみたて投資枠」は初心者であっても始めやすく、長期的な資産形成を目指すためのツールとしておすすめできると言えます。

5. おわりに

本記事では、新NISAのつみたて投資枠を活用した資産形成シミュレーションを通して、将来の可能性を具体的な数字でご覧いただきました。

利回りわずか数パーセントという小さな差が、「時間」と「複利」という力を借りることで、最終的に数百万円もの大きな違いを生み出します。

特に新NISA制度は、非課税メリットを生涯にわたって享受できる画期的な仕組みであり、将来への経済的な不安を抱える多くの人にとって、大きな支えとなる可能性を持っています。

もちろん、シミュレーションはあくまで一つの未来予想図であり、実際の市場がこの通りに動く保証はありません。

大切なのは、この記事をきっかけに、皆さま自身のライフプランと向き合い、無理のない範囲で「最初の一歩」を踏み出すことです。

NISA制度は、投資の専門家だけのものではなく、将来のために、コツコツと資産を作りたいと考える人にも活用されることを目的とした制度です。この記事が、今後の資産形成を考える皆さまの参考になれば幸いです。

参考資料