9月も多くの飲食料品が値上がりしています。

公的年金も3年度連続で増額改定されているものの、物価上昇の勢いには追い付いていないため、実質的には「年金が増えた」とはいえない状況です。

こうした状況下、年金収入を中心として暮らすシニア世帯はどのように暮らしているのでしょうか。

この記事では、シニア世帯の暮らしぶりを、「70歳代の平均貯蓄額」、「年金収入」、「ひと月の生活費」に関するデータを眺めながらイメージしていきます。

1. 【シニアの貯蓄額】70歳代の平均貯蓄額と中央値

老後の経済的な安心感は、どれだけ貯蓄を持っているかによって大きく左右されます。

ここでは、70歳代二人以上世帯の貯蓄状況を確認してみましょう。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」の「70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」をもとに確認していきます。

※金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

「70歳代・二人以上世帯」の平均貯蓄額は1923万円です。

しかし、この数字は一部の富裕層が平均を押し上げているため、実際の多くの世帯の状況とはかけ離れている可能性があります。

実態をより反映する中央値を見ると800万円となり、多くの世帯の貯蓄はこの水準に集中していると考えられます。

世帯ごとの貯蓄額分布は以下のとおりです。

  • 金融資産非保有:20.8%
  • 100万円未満:5.4%
  • 100~200万円未満:4.9%
  • 200~300万円未満:3.4%
  • 300~400万円未満:3.7%
  • 400~500万円未満:2.3%
  • 500~700万円未満:4.9%
  • 700~1000万円未満:6.4%
  • 1000~1500万円未満:10.2%
  • 1500~2000万円未満:6.6%
  • 2000~3000万円未満:8.9%
  • 3000万円以上:19.0%
  • 無回答:3.5%

なお、貯蓄額階層別にみていくと、最も多いのが金融資産非保有、つまり「貯蓄ゼロ」の世帯で全体の約2割(20.8%)を占めていることがわかりました。

一方で「貯蓄額3000万円以上」の世帯も約2割(19.0%)を占めています。

貯蓄額は、現役時代の働き方やライフスタイル、退職金の有無や相続など、さまざまな要因によって左右されます。

また、十分な貯蓄を用意していても、取り崩すペースが早ければあっという間に減ってしまいます。老後資金を長持ちさせるには、「収入」と「支出」のバランスを意識することが欠かせません。

では、シニア世帯の主な収入源のひとつである「年金収入」は実際どのくらいなのか。次章で確認していきましょう。