先週8月15日は今年4回目の年金支給日でした。次回は10月15日で、残りの支給はあと2回となります。そんな日本の年金制度には60歳から受給できる「繰上げ受給」という制度があるのはご存知でしょうか。
「予定より早く年金を手にする」ことで安心感を得られる一方で、安易に選ぶと将来の年金額が一生涯減ってしまうだけでなく、妻にとっても大きな影響が出る可能性があります。今回は、最新の統計データを交えながら「夫が繰上げをすると妻にはどんな影響があるのか?」をわかりやすく解説します。
1. 「繰上げと繰下げ」のしくみとは
老齢年金は65歳からの「本来受給」が基本ですが、60歳から前倒しして受け取る「繰上げ」や、66歳以降に遅らせて増額する「繰下げ」も選択できます。
「繰上げ受給」は60歳から受給できる制度ですが、その代わりに請求する時期に応じて1か月あたり0.4%ずつ年金額が一生涯減額されることになります。
一方の「繰下げ受給」は66歳以降75歳まで受給を遅らせる仕組みで、遅らせた分だけ年金額が増えるという特徴があります。繰下げ受給は、請求する時期に応じて1か月あたり0.7%ずつ年金額が一生涯増額されることになります。
ちなみに、老齢年金の繰上げ受給は、原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を同時に請求する必要があります。このため、一度繰上げを選択すると、すべての老齢年金が減額されることになります。
一方、繰下げ受給は老齢厚生年金と老齢基礎年金のどちらか一方のみを選択することも可能です。たとえば、老齢基礎年金は65歳から受け取り、老齢厚生年金だけを繰り下げて増額させる、といった柔軟な選択ができます。