3. 老後資産の取り崩し方

資産を取り崩す際の代表的な2つの方法が、定額取り崩しと定率取り崩しです。それぞれの特徴を見ていきましょう。

3.1 定額取り崩し

定額取り崩しとは、老後資産から毎年決まった金額を取り崩す方法です。例えば、年間200万円ずつ取り崩すと決めた場合、運用成績に関係なく毎年必ず200万円を取り崩します。

毎月不足する生活費に合わせて取り崩す金額を決められるため、家計の管理が簡単になる点がメリットです。

しかし、市場が下落している年でも同額を取り崩すため、資産を安値で売却する可能性があります。

さらに、運用成績が悪い期間が続くと、元本の減少が加速します。当初2000万円だった資産が、数年後には予想以上に減少し、計画していた期間よりも早く資産が枯渇するリスクが考えられるでしょう。

資産の寿命を延ばすためにも、市場が下落している期間中は取り崩す金額を抑えるなど、柔軟な対応が求められます。

3.2 定率取り崩し

定率取り崩しとは、保有資産の一定割合を毎年取り崩す方法です。例えば、取り崩す割合を「4%」と決めた場合、2000万円の資産があれば初年度は80万円を取り崩します。

資産残高に応じて取り崩し額が自動調整されるため、資産が持続しやすい方法です。市場が好調な年は取り崩し額が増え、不調な年は自然に減少するため、資産を長期間維持できます。

また、運用環境に応じた柔軟性も魅力です。

株式市場が上昇基調の時期は取り崩し額も増加し、生活に余裕が生まれます。一方、市場が低迷しているときは取り崩し額が減ることで、自動的に資産保全が図られます。

しかし、この方法には生活設計上の課題があります。

毎年の収入が変動するため、生活設計が立てにくいと感じる人もいるかもしれません。

特に市場が長期間低迷すると、取り崩し額が大幅に減少し、基本的な生活費すら確保できない可能性があります。

4. まとめにかえて

年金だけでは老後生活費が不足する可能性が高いため、資産の取り崩しが必要となります。

定額取り崩しは、毎年一定額を取り崩す方法です。収入が予測可能で家計管理が簡単ですが、市場下落時に損失確定リスクがあります。

定率取り崩しは、資産の一定割合(年4%が目安)を取り崩す方法です。資産の持続可能性が高く長期間維持できますが、収入が変動するため生活設計が困難な場合があります。

生活安定重視なら定額取り崩し、資産保全重視なら定率取り崩しが適しており、個人の状況や価値観に応じて選択することが重要です。

参考資料

柴田 充輝