10月は飲食料品を中心に多くの品目で値上げが行われました。11月も値上げは続く見通しです。

政府の迅速な物価高対策が望まれます。

これまで物価高への対応策として幾度か行われてきた現金給付。この現金給付の主な対象となったのが住民税非課税世帯です。この記事では、住民税非課税世帯とは具体的にどのような世帯を指すのか、給与収入や年金収入がいくらで該当するのか解説していきます。

1. 住民税非課税世帯が知っておきたい主な「優遇措置」5選

コロナ禍や物価高への対応策として、これまでに主に住民税非課税世帯を対象とした現金給付等の支援が行われてきました。

住民税非課税世帯とは、所得が一定の基準に満たない世帯を指します(具体的な定義は後述します)。

この住民税非課税世帯の暮らしを支援するために、現金給付以外にもさまざまな優遇措置が講じられているのをご存じですか?どのような優遇措置があるのか、5つピックアップしてご紹介します。

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置1/6

【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置

LIMO編集部作成

◆国民健康保険料(応益割)の減額

  • 応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額

◆介護保険料の減額

  • 第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる

◆国民年金保険料の免除・納付猶予

  • 全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか

◆保育料の無償化

  • 0歳から2歳までの保育料が無償化
  • これにより、0~5歳までの保育料が無料になる

◆高等教育の修学支援新制度

  • 授業料・入学金の免除または減額
  • 返還を要しない給付型奨学金
  • 上記により大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化

このほか、自治体が独自で行うものも含めると、多くの支援策があります。

では、住民税非課税世帯とは具体的にどういう世帯を指すのか、次章で確認していきます。

2. 住民税非課税世帯とは?

まずは住民税の仕組みを確認し、住民税非課税世帯となる要件を見ていきましょう。

2.1 住民税の基本

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造2/6

個人住民税のしくみ

出所:総務省「個人住民税」

住民税は、住んでいる都道府県や市区町村に支払う地方税です。地方自治体の重要な財源であり、公共サービスやインフラ整備に使われます。

個人住民税は、均等割と所得割の2つの部分から成り立っています。

  • 均等割:所得に関係なく一律に課税される部分
  • 所得割:所得に応じて税額が決まる部分

均等割・所得割ともに免除になることを「住民税非課税」と言います。「住民税非課税世帯」は、世帯全員が住民税非課税となる世帯を指します。

なお、「住民税の所得割のみ非課税」となる区分もあります。ただし今回の給付金の対象となるかどうかは自治体により異なるため、必ずお住まいの市区町村などの基準をご確認ください。

3. 住民税が「非課税」となる3つの要件とは?

では、住民税が非課税となる要件を詳しく見てみましょう。

以下のいずれかに該当した場合、住民税が非課税となります。

  1. 生活保護を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年の所得が135万円以下である
  3. 前年の所得が各市区町村の基準を下回る

1と2の要件は全ての市区町村で共通ですが、3の所得要件は市区町村ごとに異なる基準があります。

4. 住民税非課税世帯「所得要件」は?《例:神戸市》

「住民税非課税世帯」となる所得基準を、兵庫県神戸市の例を見てみましょう。

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?3/6

住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?

出所:神戸市「住民税(市県民税)が課税されない所得額はいくらですか?」

35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円

ただし、21万円は同一生計配偶者(※)または扶養親族がいる場合のみ加算

※同一生計配偶者とは、納税義務者と生計を一にする配偶者で、前年の合計所得金額が48万円以下の人

5. 住民税非課税世帯「収入目安」は?年金いくらで該当する?《例:神戸市》

住民税が非課税となる所得の基準は、上述の「同一生計配偶者や扶養親族数」の他、収入の種類によっても変動します。

所得は収入から各種控除額を差し引いた金額となるため、神戸市の基準を「収入金額に換算」して確認しましょう。

単身世帯

合計所得金額が45万円以下になる方

  • 給与収入のみで収入金額が100万円以下
  • 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)

同一生計配偶者か扶養家族が1名いる場合

合計所得金額が101万円以下になる方

  • 給与収入のみで収入金額が156万円以下の方
  • 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
  • 年金収入のみで収入金額が171万3333円以下の方(65歳未満)

単身世帯の場合、給与収入のみであれば100万円以下、65歳以上の年金収入のみであれば155万円以下で住民税が非課税となります。

同一生計配偶者や扶養親族がいる場合、非課税となる収入目安は引き上げられます。

とくに65歳以上の年金収入のみの世帯では211万円以下と、単身世帯より大幅に緩和されていることが分かります。

このように、世帯構成や収入源によって、住民税の負担が変わってくるのです。

6. 住民税非課税世帯は高齢になるほど割合が高くなる

厚生労働省の「令和6年国民生活基礎調査」の資料から、年齢層別に住民税が「課税される世帯」の割合を見てみましょう。

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合5/6

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

出所:厚生労働省「令和6年国民生活基礎調査」(第131表)をもとにLIMO編集部作成

  • 29歳以下:63.0%
  • 30〜39歳:87.5%
  • 40~49歳:88.2%
  • 50~59歳:87.3%
  • 60~69歳:79.8%
  • 70~79歳:61.3%
  • 80歳以上:52.4%
  • 65歳以上(再掲):61.1%
  • 75歳以上(再掲):54.4%

※  全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
総数には、年齢不詳の世帯を含む
住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む

住民税が課税される世帯の割合は、30~50歳代では90%弱でしたが、60歳代で79.8%となります。その後65歳以上は61.1%、75歳以上は54.4%となっています。

年齢が高くなるにつれて、住民税が課税される世帯の割合は低くなっています。

一般的に年金生活に入ると現役時代よりも収入が減少し、それに加えて65歳以上の方には公的年金に対する所得控除が大きく、また遺族年金は課税対象とはなりません。

こうしたことからも、年金受給中のシニアは「住民税非課税世帯」に該当しやすい傾向があると言えるでしょう。

7. 老後「公的年金だけ」で生活できている高齢者世帯は43.4%

公的年金のみの収入で暮らすシニア世帯、公的年金以外の収入があるシニア世帯、その比率はどのようになっているのでしょうか。

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯(※)の収入の実態を見ていきましょう。

まず、高齢者世帯全体の平均的な所得構成を見ると、収入の63.5%を「公的年金・恩給」が占めており、次いで仕事による収入である「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%となっています。

しかし、これはあくまで全体の平均値です。

「公的年金・恩給を受給している世帯」に絞ると、収入のすべてが「公的年金・恩給」である世帯が43.4%にものぼることがわかっています。

※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯

7.1 【総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成】

総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成6/6

総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成

出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%

このようにシニア全体で見れば稼働所得なども一定の割合を占めていますが、年金受給世帯に絞ると、その半数近くが公的年金収入のみに頼って生活しているという実態が浮き彫りとなっています。

8. まとめ

今年も毎月「値上げ」のニュースを見聞きします。

この「値上げ」の波に対し、これまでに実施された現金給付は一時的な家計の助けとなったかもしれません。

しかし、こうした臨時的な給付は、物価高騰による家計の負担を根本的に改善するものではありません。

その現金給付の主な対象となってきたのが住民税非課税世帯です。

とくに老齢年金を受給しているシニア世代は、年金収入に対する所得控除が大きいため、他の層に比べて非課税世帯に該当するケースが多くなります。

物価高が続く今、給付の有無にかかわらず、非課税世帯が享受できる恒久的な優遇措置を理解し、活用することが、安定した家計運営の鍵となるでしょう。

参考資料