4. 年金を一括受給するときの注意点
繰下げ待機中の年金を一括受給するときの注意点を2つ紹介します。
4.1 注意点①:年金収入の修正申告が必要になる
一括受給した年金は、全額がその年の収入になるわけではありません。本来受給すべき年度の収入となるため、年金収入の修正申告が必要になることもあります。
例えば、2025年に3年分を一括受給した場合、本来2023年度や2024年度に受け取るべきだった年金は、2023年度または2024年度の収入となります。
公的年金等控除や各種所得控除後に新たな所得が発生した場合、税務署などに相談して修正申告しましょう。
また、新たな所得が発生することによって、過去にさかのぼって医療保険や介護保険の自己負担・保険料が変わることもあります。
4.2 注意点②:80歳を過ぎると時効でもらえない
繰下げみなし増額制度の新設により時効による不利益が発生しないようにしていますが、80歳を過ぎて一括受給した場合、受給すべき時期から5年を経過した年金はもらえなくなります。
繰下げ受給した場合も同様です。
そのため、繰下げ受給、一括受給のどちらを選択する場合でも、「遅くとも75歳までに受給を始めなければならない」と覚えておきましょう。
80歳前なら時効の影響は受けませんが、受給を遅くしても利息はつかないため、利息や運用益を損したと考えることもできます。
5. まとめにかえて
年金額を増やそうと繰下げ待機している場合、繰下げ受給しないで65歳からの年金を一括して受け取ることも可能です。
また、70歳を過ぎて一括受給する場合は、特例的な繰下げみなし増額制度によって「5年前に繰下げ受給を請求した」とみなして年金額を計算します。
65歳時に年金の受取方法が決まらない場合は、とりあえず繰下げ待機し後から繰下げ受給または一括受給を選択するという方法もあります。人生100年時代を乗り切るために、年金の受給方法の選択も重要です。
参考資料
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 日本年金機構「令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました」
- 日本年金機構「老齢基礎・厚生年金裁定請求書/支給繰下げ請求書」
- 日本年金機構「老齢年金ガイド 令和7年度版」
西岡 秀泰