以上のように、株の短期売買を行う際には美人投票の考え方が重要ですが、長期投資ならば話は違います。人の噂も75日ですから、10年保有するつもりで株を買うならば、人の噂を探ることは無意味です。それより決算書等を眺めて「10年後も利益を出し続けている会社か否か」をしっかり判断しましょう。
あるいは日本株の投資信託を購入すべきか否かを検討する際には、10年後も日本経済は元気で日本企業がしっかり稼いでいるか否かを予想しましょう。
株式投資と一言で言っても、短期売買の場合と長期投資の場合では、全く考えるべきことが違うのだ、ということはしっかり覚えておきましょう。
余談:筆者が株価の見通しを聞かれても答えない理由
筆者に株価の予想を聞く人がいますが、筆者は答えません。筆者は、会社の決算書を分析したり日本経済の景気を予想したりすることはできますが、株式市場で流れている噂を知れる立場にありませんから、美人投票の世界で株価を予想することは難しいのです。
というのが模範的な答ですが、「不真面目に見えても実は真面目な答」もあります。「筆者にそんなことがわかるのだったら、筆者はもっと高級なスーツを着ているはずです」「今の株価は、売り注文と買い注文の数が一致しているから今の株価なのです。つまり、プロの半分は値上がりを予想して買い注文を出しており、プロの半分は値下がりを予想して売り注文を出しているわけです。そんな時に筆者の予想を聞いても役に立ちませんよ」というものです。
そして、実は本心は別のところにあります。筆者が株価の見通しを答えたとして、それを聞いた人が筆者の予想を信じて株を買ったとします。儲かったら「自分の株価予想能力は素晴らしい」と思いますから筆者に感謝してくれることはないでしょうが、外れたら「塚崎のせいで損をした」と思って恨まれることはあるでしょう。それなら、何も言わない方が得ですよね。
必要があれば「私は最近株を買いました」「私は最近株を売りました」ということは言いますが、「あくまでも投資は自己責任でお願いします」と付け加えることは当然ですね。
本稿は以上ですが、日銀の金融緩和に関する拙稿『黒田緩和を偽薬だと気づいていない人に驚く』も併せてご覧いただければ幸いです。
なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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塚崎 公義