やはりベトナムにも「デジタル革命」の大きな波が迫ってきているようです。金融業界ではフィンテックに象徴されるように、他に先んじて、いわゆる破壊的技術による産業構造の破壊が進行していく気配がありました。
さて、このようなイベントへの参加を通じて、ベトナムのような親日国ですら日本や日本人への関心が薄れている兆しを感じました。理由は以下の2点です。
第一に、タイ同様、日本の製造業・裾野産業が集積してきたベトナムでも、日本の経済発展モデル、途上国で一般に適用されてきた「雁行型経済発展モデル」を語ってもベトナム人の心に響きません。
産業革命以来の大変革となるデジタル革命の波の中、ベトナムでも破壊的技術が既存の枠組みを壊し、オープンイノベーションが浸透して予測不能なビジネス環境に突入しようとしています。ベトナム人は、もはや日本の古い産業政策の理論や経験はあまり役に立たないことをよく知っています。
また、国としては社会主義国家なのですが、ベトナム人は、イノベーションを起こし、マーケットを創造し、経済のパイを広げるのは起業家であって公的セクターではないことをよく理解していて、日本の「計画経済型自由主義経済」(政府が新たな市場創出を先導できるという錯覚)を引きずった発想では議論が噛み合いません。
第二に、ベトナムの多くの起業家や金融業界の皆さんはグローバルネットワークとのコネクションを熱心に求めています。しかし、デジタル革命の波に乗り遅れた日本にはデータサイエンティスト人材は少ないですし、ベトナム人の期待に応えて最先端の経験知をフィードバックしてくれる日本人も少ないとみられているようです。
今回のイベント会場でも、欧米やアジアのフィンテック・スタートアップ企業が集結していましたが、日本人は私以外一人もいませんでした。
今、ベトナムは旧正月(テト)前ですので、ちょうど1年を振り返り翌年に思いを馳せる時期です。
今回のワークショップでの私のテーマの一つは中小企業向け信用スコアリングモデルの構築におけるAI等の活用でした。今は第3次AIブームとも言われますが、機械学習のテクニックを使う場合、ざっくり言えば、皆さんが知っている統計解析・重回帰分析における説明変数/被説明変数が、機械学習における素性/教示データのようなものです。
まだ、素性として何が重要で何に着目すべきかを決め素性設計・モデリングを作るのは人間なので、今のところ私の経験知も少しは役に立ちます。