ただ、深層学習のテクニックを駆使する世界では、モデルを作ること自体を機械がやるわけで、いったんモデルができてしまうと、人間がやることは、なぜそのようなモデルとなったのかと考えることになるかもしれません。私もそのあたりがブラックボックス化しないよう勉強していかなければなりませんし、未来の金融コンセプトについても模索を続けていこうと考えています。
また、もし途上国の金融・産業政策立案を支援するような機会があれば、日本での昔の経験や理論だけを適用して「昔取った杵柄」にならないよう、デジタル革命の波、オープンイノベーション、様々な産業ドメインにおけるAI活用等、世界の新しい事象に関する理解を深めつつ、謙虚に途上国の方々と対話していきたいと思います。
おわりに
ふと耳にした日本の歌手、竹原ピストルの「オールドルーキー」の歌詞が心にしみます。
「積み上げてきたもので勝負しても勝てねえよ、積み上げてきたものと勝負しなきゃ勝てねえよ。必要なのは走り続けることじゃない、走り始め続けることだ。」
この歌を聞きながら、東南アジアの片隅で日本人ゆえのアドバンテージをきっぱり諦め、個人のスキルをアップデートしながら、オールドルーキーの気持ちでしぶとくやっていこうと思います。
大場 由幸
執筆者
SME Financial Architect x Fintech x Frontier Markets
新潟大学法学部卒業、フィンランドAalto大学 Executive MBA取得、英国オックスフォード大学 Fintech課程修了、米国マサチューセッツ工科大学 AI課程修了。中小企業金融公庫(神戸、宇都宮、東京)、在ベトナム日本国大使館(ハノイ)、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(東京)、東京中小企業投資育成(東京)を経て、2008年4月、クロスボーダー・ジャパン(株)代表取締役社長(東京&シンガポール)に就任。日系中堅・ベンチャー企業のアジア戦略・財務を支援する傍ら、新興アジア諸国にて多数のSME金融関連プロジェクトに従事し、マレーシア信用保証公社 JICAアドバイザー(クアラルンプール)、ベトナム信用情報センター 世界銀行コンサルタント(ハノイ)、インドネシア経済調整庁 MSME金融包摂アドバイザー(ジャカルタ)、ミャンマー経済銀行 SMEファンド助言チームリーダー(ネピドー&ヤンゴン)等を歴任。現在、エンジェル投資家/アドバイザーとして複数のフィンテック企業(ロンドン、ニューヨーク等)の経営に関与。ポルトガル政府公認ビジネスエンジェル(アヴェイロ拠点のエンジェル投資家団体REDangelsに所属)。APEC関係機関であるPBEC(太平洋経済委員会)メンバー。マレーシア在住、エストニア居住。