ただ、深層学習のテクニックを駆使する世界では、モデルを作ること自体を機械がやるわけで、いったんモデルができてしまうと、人間がやることは、なぜそのようなモデルとなったのかと考えることになるかもしれません。私もそのあたりがブラックボックス化しないよう勉強していかなければなりませんし、未来の金融コンセプトについても模索を続けていこうと考えています。

また、もし途上国の金融・産業政策立案を支援するような機会があれば、日本での昔の経験や理論だけを適用して「昔取った杵柄」にならないよう、デジタル革命の波、オープンイノベーション、様々な産業ドメインにおけるAI活用等、世界の新しい事象に関する理解を深めつつ、謙虚に途上国の方々と対話していきたいと思います。

おわりに

ふと耳にした日本の歌手、竹原ピストルの「オールドルーキー」の歌詞が心にしみます。

「積み上げてきたもので勝負しても勝てねえよ、積み上げてきたものと勝負しなきゃ勝てねえよ。必要なのは走り続けることじゃない、走り始め続けることだ。」

この歌を聞きながら、東南アジアの片隅で日本人ゆえのアドバンテージをきっぱり諦め、個人のスキルをアップデートしながら、オールドルーキーの気持ちでしぶとくやっていこうと思います。

大場 由幸