夫婦共働きでの家事分担をめぐる議論について、たびたび聞かれる「ケンカになるくらいなら家事は代行サービスに外注すればいい」「家事はお金で解決できる」という意見。筆者は常々、そういった論調に疑問を感じていました。

先日、実際に家事を外注したところ、やはりお金を払って家事代行を使ったところで家庭内の家事のすべてが解決されるわけではないことがわかりました。では、利用して実感した「家事は外注すればいい」に潜む落とし穴とは何でしょうか。

外注できない細かい家事が多すぎる

「家事を外注する」というと、掃除や洗濯、買い出しや料理などをイメージするでしょう。しかし、24時間体制と言ってもいい家の中では、そういったわかりやすい家事よりも、名前も付けられないような細かい家事の方が圧倒的に多いもの。

トイレットペーパーやティッシュの交換、食後に食器を下げてテーブルを拭く、お茶の作り置き、ゴミ出し前のゴミのとりまとめ、加湿器の水の補充、玄関の靴を揃える、出しっぱなしにした物をしまう、飲みっぱなしのコップの片付け…。

こうした“名もなき家事”は数多く、積もり積もって毎日の負担になっています。そしてその負担の多くは、妻が担っているのが一般的。「これ、お願いします」と言えない毎日の名もなき家事に対して、利用時間が決まっている家事代行サービスにすべてカバーしてもらうというのは無理がありますよね。

なかなか拭えない罪悪感とどう戦うか

家事を自分でやらず、他人にお願いすることに対して、まだまだ付きまとうのが強い罪悪感。ここには、仕事や育児に忙しい30~40代の母親たちの世代の影響があります。厚生労働省によると、1980年には専業主婦家庭が1100万世帯と、共働き世帯よりも圧倒的なマジョリティでした。

そのため今の30~40代は、母親が家事をやるのは当たり前の光景でした。今、いくら時代が変化しているとは言っても、潜在的にはなんとなく「夫よりも妻が家事を」「家事は自分でやれる」といった意識が働き続けています。

これは、現代女性にとってはもはや呪いにさえなっていると感じられます。専業主婦であった母親がこなしていた「完璧な家事」のイメージ。毎日の料理はもちろん手作り、掃除の行き届いた部屋、家族全員分の洗濯物を畳んでいる姿。こうした原風景からか、「夫が自分の母親と比較してきて辛い」という女性も少なくありません。

家事代行サービスで夫婦の家事分担を解決しようと思うなら、女性だけでなく、男性も、このイメージから脱却することが絶対条件。脱却しなければ、「家事を他人にお願いする」罪悪感から抜けられないままとなってしまいます。

他人を家にあげるハードル