この夏、定年退職を迎えるという人もいるでしょう。定年退職すると国民健康保険に加入するか、前勤務先の健康保険(社保)に任意継続加入するかして健康保険制度に入ることになります。

保険料や保障内容などが異なるため、どちらが得か悩むところです。

本記事では、定年退職後に加入するのは国民健康保険と社保のどちらが得かについて解説します。

損をしないために、自分の場合はどちらが得になるのかを定年前に確認しておきましょう。

1. 定年退職後に加入する「健康保険制度」2つの選択肢

定年退職後に加入する健康保険制度は、国民健康保険(国保)または前勤務先の健康保険(社保)のどちらかです。

社保に加入する場合、前勤務先の健康保険に任意で継続加入することになります。

国保と社保では、保険料だけでなく加入対象者や保障内容も異なります。どちらが得かは家族状況や収入などによって違ってくるため、両制度内容を理解して慎重に検討しなければなりません。

1.1 国民健康保険(国保)

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Mehaniq/shutterstock.com

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国保は市区町村が運営する保険制度で、自営業者や無職の人などが加入対象です。定年退職後は、原則国民健康保険に加入することになります。

国保の保険料は、世帯の加入者数や前年の所得によって決まります。

加入者数が多いほど、また前年の所得が多いほど保険料は高くなります。

1.2 健康保険の任意継続(社保)

勤務先の健康保険に継続して2ヶ月以上加入していた場合、退職後最長2年間は勤務先の社保に任意で加入できます。定年退職時も同様で、在職中に加入していた健康保険組合などに申し出れば継続加入できます。

社保の保険料は退職時の標準報酬月額を基に計算しますが、勤務先と折半していた保険料が全額自己負担となるため保険料は大幅にアップします。

保険料は原則2年間変わりません。

ここまで、定年退職後に加入する2つの健康保険制度について解説してきました。次章では、国保と社保のメリット・デメリットやケース別のお得な健康保険制度について解説します。

2. 国民健康保険のメリットとデメリット

国保のメリットは、定年前の収入が低かったり、定年後に収入がなくなる(または減少する)場合、社保と比較して国保の方が保険料が安くなることです。

国保の保険料計算方法は市区町村によって異なりますが、世帯所得が一定額以下になると保険料の軽減措置が受けられるからです。

デメリットは、扶養家族がいる場合、扶養家族の人数に応じた保険料を支払わなければならないことです。扶養家族が多いほど保険料は高くなります。

国民健康保険料・保険税のしくみ2/2

国民健康保険料・保険税のしくみ

出所:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」

また、休業時の所得保障機能を持つ傷病手当金や出産手当金(定年退職する人はあまり関係がありませんが)が出ないこともデメリットです。

3. 健康保険の任意継続(社保)のメリットとデメリット

社保のメリットは、扶養家族がいる場合、任意継続する社保に扶養家族を保険料負担なしで入れられることです。在職中と同様、自分1人の保険料を負担するだけで、扶養家族は無料で健康保険に加入できます。

また、所得の高い人(または高かった人)は、国保より保険料を抑えられる可能性があります。

社保の保険料は退職時の標準報酬月額を基に計算しますが、標準報酬月額には上限が設定されているからです。条件を満たせば、傷病手当金や出産手当金も出ます。

デメリットは、加入期間が最大2年であることです。2年を経過すると、結局は国保に加入しなければなりません。加入手続きが2度必要になるため、面倒に感じる人もいるでしょう。

在職中と異なり保険料が全額自己負担となるため、国保より保険料が高くなることもあります。

4. ケース別のお得な健康保険制度

国保と社保のどちらが得かは、家族状況や収入状況などによって異なります。ケース別におすすめの健康保険制度を紹介します。

4.1 ケース①:単身者の場合

扶養家族がいない単身者で定年退職によって収入がなくなる(または減少する)場合、国保の方が保険料が安くなる可能性があります。保険料の軽減措置が受けられれば、多くの場合、国保の方が保険料が安くなります。

社保は収入が下がっても原則2年間保険料が変わらないため、国保の方が保険料を抑えられる可能性が高いでしょう。

4.2 ケース②:扶養家族がいる場合

扶養家族がいる場合、社保を選択した方が保険料が安く済む可能性が高いでしょう。

社保は自分1人分の保険料を負担するだけですが、国保は扶養家族分の保険料も必要です。

4.3 ケース③:給与以外の所得がある場合

定年前から、または定年後に給与以外の所得がある場合、社保を選択した方が保険料を抑えられる可能性があります。

国保の保険料は前年所得に応じて決まるため、所得が高ければ社保より保険料が高くなりがちです。

5. まとめにかえて

定年退職後に加入する国保と社保には、さまざまなメリットとデメリットがあります。選択のポイントは、退職後2年間の扶養家族を含めた保険料の総額です。

保険料計算では、国保は収入が減少した2年目の保険料が安くなること、社保は扶養家族の保険料が必要ないことなどに注意が必要です。

実際に保険料をシミュレーションしないと判断できないことも多いため、社保は勤務先(または健康保険組合など)、国保は市区町村の担当課に試算依頼しましょう。

手続きには期限があるため、退職前に比較・検討を済ませておくと安心です。

参考資料

西岡 秀泰