証券業界、資産運用業界で「貯蓄から投資へ」が叫ばれ、随分と時間が経過しています。しかし、「預金信仰」「貯金信仰」があるといわれる日本ではなかなか投資が受け入れられていないのが現状です。今回は、なぜ「貯蓄から投資へ」が必要なのか、また実際に「貯蓄から投資へ」を実行する場合の活用すべき制度について見ていきます。
低金利とは言うけれど、預金金利をあらためて確認したい
低金利は慣れっこだ、という方も多いかと思います。では、その低金利の水準がどのくらいか、皆さん、ご認識でしょうか。
たとえば、国内で比較的が金利水準が高いといわれている「スーパー定期」で運用するとどれくらい資産が増えるのでしょうか。
とある大手メガバンクが、300万円以上の預け入れのスーパー定期において、金利が年率0.01%になっています(2018年12月31日確認時点)。
ちなみに、普通預金の金利は、0.001%となっています。小数点以下の「ゼロ」が多く、判別しにくいですが、普通預金の金利水準はスーパー定期の10分の1となっています。
この金利水準で5年間運用した場合、どれだけの利息が付くのでしょうか。
300万円を5年間に渡って年利0.01%で運用した場合(複利)をシュミレーションしてみました。
結果は、5年間に渡って複利で運用してもわずか1500円程度の利息しかつきません。
また、ここでは税金が発生しない前提で計算しましたが実際には利子には税金がかかります。
こうしてみると、低金利時代で資産運用をしようとすれば、金融機関の預貯金では対応しきれないことがお分かりいただけたと思います。こうしてみると、いつから始めるということではなく、すぐにでも「貯蓄から投資へ」スタンスを変更した方がよいことが分かります。
投資初心者にもおすすめのNISA
資産形成が必要だということが分かっても、どのように運用してよいかわからないという方もいるのではないでしょうか。
ここでは投資初心者がとっつきやすいNISA(ニーサ)制度について解説していきたいと思います。
そもそもNISAとは
「NISA(ニーサ)」とは、少額投資非課税制度であり、「一般NISA」とも呼ばれたりもします。2014年1月からスタートし、2018年で丸5年が過ぎることになります。2019年で6年目ということで、すでに同制度をご活用されている投資家も多いのではないでしょうか。
NISAの口座においては、年間120万円×5年円の合計600万円までの範囲で、投資をした上場株式や投資信託の配当や譲渡益(売却益)が非課税になるという制度です。
たとえば、通常の証券口座で株式の取引(売買)した場合、株式の売却時に売却益がある場合には、約20%の税金がかかります。
しかし、NISAの口座で同様の取引を行った場合は売却益への税金が「ゼロ」になるというお得な仕組みです。
投資初心者には「つみたてNISA」がとっつきやすい
NISAのほかに「つみたてNISA」という制度もあります。
つみたてNISAとは、2018年1月にスタートしたNISA同様の制度ですが、非課税枠が年間40万円×20年の合計800万円までの範囲で非課税枠であるというように金額と期間が先に見た一般NISAと異なります。
つみたてNISAでは、対象金融商品は金融庁が選別した投資信託となり(上場株式等は含まれません)、NISAのように自由に投資先を選ぶことができません。
しかし、投資初心者には「投資信託は商品数が多くて選ぶことが難しい」という人や「長期で資産形成をしたい」という人も多いでしょう。そうした場合には、金融庁が厳選した投資信託だけがラインナップされているつみたてNISAは選別に迷う作業を一部省くことができ、便利です。
長期投資とはわかっていても運用では厳しかった2018年
「貯蓄から投資へ」というスローガンは、証券業界だけではなく、国もかなり強力的な姿勢を見せています。
金融庁によるNISAやつみたてNISA、厚生労働省によるiDeCo(イデコ)のように非課税枠を活用できる投資インフラ、投資制度を用意してくれており、老後資金を自助努力によって形成できるように制度を用意してくれています。
とはいえ、すべてが順風満帆というわけではありません。
つみたてNISAは2018年に始まりましたが、2018年は投資家にとっては特に後半は非常に厳しかったのではないでしょうか。
「2018年は毎月つみたて投資したらどのくらい損をしたのか」によれば、毎月、同額のTOPIXのインデックス・ファンドをつみたてて投資で購入した前提の結果、評価損は▲17%程度あったとしています。
2018年はじめからに「つみたてNISAデビュー」をしているとすれば、含み損を抱えていてもおかしくはありません。
しかし、つみたてNISAのそもそものコンセプトは長期投資における資産形成です。自身のポートフォリオを改めて見直し、じれずに腰を据えて運用をしていきたいものです。
投資の素人がおかしがちな失敗談としては、相場が弱気になった時に極端にリスク回避型となり、ポートフォリオもデフェンシブにしてしまうことです。
極端にデフェンシブなポートフォリオ(極端にリスク回避的なポートフォリオ)にすると次の上げ相場が来た時についていけず、超過収益をとりきれなかったということも起こります。自身の運用の時間軸と目的を確認し、どの程度のリスクなら許容できるのかの確認は2019年に改めてするべきかもしれません。
貯蓄から投資はいつからはじめるべきか
ここまで見てきたように現在の日本では預貯金をしても利息に期待をすることができないのが現状です。「いつから」ではなく「今すぐ」投資へと移行したほうが、将来にわたるリターンに期待することができます。まずはNISAやつみたてNISAなどの非課税枠を活用したから投資を始めてみるのがよいでしょう。
参考にした記事
LIMO編集部