ところで、今回の世界的な株価急落において、日本株には株価下落以上に大きな衝撃が走っています。まずは、主要市場の年初来からの騰落率を見てみましょう。騰落率は昨年末終値と直近終値の比較であり、カッコ内は年後半の騰落率、つまり、6月末終値との比較です。
- 【ブラジル】ボベスパ指数:+12.2% (+17.8%)
- 【インド】ムンバイSENSEX:+4.1% (+0.1%)
- 【米国】Nasdaq指数:▲10.3% (▲17.5%)
- 【米国】NYダウ:▲11.8% (▲10.2%)
- 【英国】FTSE100:▲13.0% (▲12.5%)
- 【香港】香港ハンセン指数:▲14.3% (▲11.4%)
- 【日本】日経平均株価:▲15.9% (▲14.1%)
- 【ドイツ】DAX指数:▲17.7% (▲13.6%)
- 【日本】TOPIX:▲22.1% (▲18.2%)
- 【中国】上海総合指数:▲24.3% (▲12.0%)
気が付くと中国株の下落率に接近していた日本株
何と、日本株の下落率は、今年前半に“独り負け”だった中国株に迫っているのです。
日経平均株価はまだ中国株と差があるものの、東証全体の動きを示すTOPIXはごくわずかな差に縮まりました。それどころか、足元の状況(円高進行等)を勘案すると、最終的な年間騰落率において、TOPIXが中国株に逆転されて最下位になる可能性もあるのです。“まさか!?”と愕然としている人もいるでしょう。
年前半に“独り負け”だった中国株に逆転される可能性も
ここで、今年前半をもう一度思い起こしてみましょう。中国は、一昨年から顕在化した景況感の悪化に加え、トランプ大統領が主導する米中貿易摩擦の影響により、株価は大幅下落となっていました。“チャイナショックの再来か?”とも言われた通り、正しく中国株の“独り負け”だったのです。
一方の日本株は、“米中貿易摩擦で漁夫の利を得る”、“好調な企業業績が続く”、“世界経済成長の牽引役になる”等と持ち上げられていました。確かに、日本株(日経平均株価)は10月初旬に高値更新となりましたが、現在の株価を見る限り、こうした評価が正しかったのか疑問が残ります。
しかし、現実には日本株が、前半“独り負け”だった中国株式市場のパフォーマンスに限りなく接近しているのです。特に、年後半は日本株が“独り負け”に近い状況と言えなくもありません。
適正水準から乖離しているのは現在の株価急落か、それとも?
金融市場では「株価は経済の先行きを映す鏡」と言われますが、これは概ね正しい見方と考えられます。しかしながら、株価は様々な思惑で変動するため、適正水準から大きく乖離することも決して珍しくありません。これを踏まえて、現在の日本株の水準をどう見たらいいのでしょうか?
直近の日本株下落は実態から大きく乖離したものであると考える人は多いはずです。一方で、高値を付けた3カ月前こそが実態から大きく乖離したものだったと分析する人も少なくないかもしれません。その答えは、来年2019年の春頃になれば明らかになるでしょう。その答えが前者であることを切に祈るばかりです。
葛西 裕一