3. 「老後の生活費」は平均でいくらかかる?《エンゲル係数》もチェック
老後の生活費について、総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」を参考に見ていきます。
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の実収入は25万2818円、社会保険料や税金を差し引いた可処分所得は22万2462円です。
対して、消費支出は25万6521円となっており、可処分所得から消費支出を差し引くと約3万4000円の赤字となります。
消費支出の内訳は以下の通りです。
- 食料:7万6352円
- 住居:1万6432円
- 光熱・水道:2万1919円
- 家具・家事用品:1万2265円
- 被服及び履物:5590円
- 保健医療:1万8383円
- 交通・通信:2万7768円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万5377円
- その他の消費支出:5万2433円
(内訳)
- うち諸雑費:2万2125円
- うち交際費:2万3888円
- うち仕送り金:1040円
食料費が最も多く7万6352円で、水道・光熱や交通・通信、教養娯楽、交際費が2万円以上かかっています。
3.1 シニア世代の《エンゲル係数》は高い傾向にある
老後の生活費の多くは食料費が占めていることがわかりましたが、エンゲル係数はどのくらいになるのでしょうか。
エンゲル係数とは、消費支出に占める食料費の割合のことで「食料費÷消費支出×100」で求めます。
消費支出が25万6521円、食料費が7万6352円であることから、エンゲル係数は約29.8%と計算できます。
全世帯のエンゲル係数は平均28.3% であるため、65歳以上ではやや高い傾向にあるといえるでしょう。
一般的にエンゲル係数は、所得が低い世帯ほど数値が高くなる傾向にあります。
というのも、食料費は全ての世帯で最低限必要な出費であり、収入の高い低いに関わらず食べる量はそれほど変わりないとされているからです。
収入が少ない世帯では同じ食料費でも家計の負担が重くなりやすく、結果的にエンゲル係数が高くなる傾向にあります。
シニア世代では、エンゲル係数が高く経済的な負担が大きくなりやすいことから、現役時代のうちから老後資金を計画的に準備することが大切です。
4. 現役時代のうちから将来を見据えた貯蓄を心がけましょう
70歳代の二人以上世帯の平均貯蓄額は、平均値が1923万円、中央値が800万円です。
貯蓄額の多い世帯が全体の平均を押し上げていると考えられるため、多くの方は「貯蓄が1923万円より少ない」ことが考えられます。
シニア世代の1ヵ月の生活費は平均約3万4000円の赤字となるため、切り崩せるだけの貯蓄が必要です。
短期間で準備することは難しいため、現役時代のうちから将来を見据えた貯蓄を心がける必要があるでしょう。
参考資料
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
木内 菜穂子