4. 自己負担額が増える場合は「高額療養費」の有効活用を

医療費の自己負担額が2割に増えると、これまでの2倍の医療費がかかります。そのため、医療費の自己負担額が大幅に増える人もいるでしょう。

医療費の自己負担額が増える場合は「高額療養費制度」を活用しましょう。高額療養費制度とは、1ヵ月に支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合、超えた分が全額払い戻される制度です。

自己負担限度額は、70歳以上と69歳以下で異なります。後期高齢者医療保険に移行するのは原則75歳のため、70歳以上の自己負担限度額を見てみましょう。

高額療養費の自己負担限度額(70歳以上)

高額療養費の自己負担限度額(70歳以上)

出所:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」をもとに筆者作成

70歳以上〜

  • 年収約1160万円〜:25万2600円+(医療費-84万2000円)×1%
  • 年収約770万円~約1160万円:16万7400円+(医療費-55万8000円)×1%
  • 年収約370万円~約770万円:8万100円+(医療費-26万7000円)×1%
  • 年収156万~約370万円:5万7600円
    ※外来は18000円、年間14万4000円
  • 住民税非課税世帯:2万4600円
    ※外来は8000円
  • 住民税非課税世帯(年金収入80万円以下など):1万5000円
    ※外来は8000円

医療費負担割合が2割の後期高齢者は、基本的に年収156万円〜約370万円の区分に該当します。そのため、1ヵ月に5万7600円を超える医療費の支払いがある場合に、超えた分が払い戻されます。

なお、後期高齢者が高額療養費を受け取るには、加入する後期高齢者医療保険の運営団体宛に申請手続きが必要です。後期高齢者医療保険の運営は都道府県が行っていますが、申請時の書類は市区町村の窓口宛に提出します。また、窓口では一旦医療費を立替払いする必要がある点にも注意しましょう。

ただし、マイナ保険証があれば、窓口で支払う医療費が自己負担限度額までに制限されるため、立替払いをしなくても済みます。

5. まとめ

医療費の負担増の配慮措置は2025年9月末に終了する予定で、いよいよ一部の後期高齢者に「医療費2割負担」が課せられます。社会保障制度を維持するのは重要ですが、生活が苦しいなかでこれ以上負担が増えるのは厳しいと感じる人もいるでしょう。

高額療養費のような制度の活用、保険解約による返戻金の受け取り、資産の取り崩しなどさまざまな手段を用いて、医療費負担の増加に対応していきましょう。

参考資料

石上 ユウキ