かつては「夫が外で働き、妻が家庭を守る」という役割分担が一般的であり、多くの家庭が専業主婦世帯でした。

しかし、現代では夫婦ともに働く共働き世帯が主流となり、家庭のあり方も大きく変化しています。

そうした背景の中で、「遺族厚生年金」の制度には、男女で受給条件に差がある点が以前から問題視されてきました。

そこで政府は、2025年5月16日、「年金制度改正法案」を国会に提出。遺族厚生年金の制度見直しを盛り込むなど、年金制度の強化を図る動きを進めており、6月13日にこの法案が成立しました。

では、遺族厚生年金の見直しがされた場合、影響が大きいのはどのような世帯なのでしょうか。

本記事では、「遺族厚生年金の改正」の概要とともに、影響を受けやすい世帯について解説していきます。

1. そもそも「遺族年金」とは?

「遺族年金」とは、国民年金や厚生年金に加入していた方が亡くなった際に、生活を共にしていた家族が受け取れる年金制度です。

この制度には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、故人の年金加入状況や遺族の条件によって、いずれかまたは両方の支給対象となります。

受給するためには、保険料の納付歴や遺族の年齢、扶養関係など、定められた条件をすべて満たしていることが前提となります。

なお、現行の「遺族厚生年金」には、性別によって要件に違いがある点も押さえておく必要があります。

1.1 「遺族厚生年金」は男女によって要件に違いがある?

これまで述べてきたように、現行の遺族厚生年金の仕組みには、男女で異なる受給条件が設定されています。

たとえば、配偶者を亡くした場合、30歳以上の妻には遺族厚生年金が生涯にわたり支給される一方で、夫は55歳以上でなければ受給資格が認められず、実際の支給も60歳からに限られています。

この制度は本来、家計を支えていた夫が亡くなった際に残された家族を支援するために設けられたものでした。

しかし現在では、男女ともに働く世帯が増加しており、制度の設計思想が現代の家族像と乖離しつつあることが問題視されています。

こうした状況から、遺族年金の受給条件について、「性別にかかわらず公平な仕組みに見直すべきだ」という意見が高まっており、政府も制度改正の検討を本格化させています。