「人生100年時代」といわれる今、定年後の資金計画は現役世代にとって喫緊の課題と言えるでしょう。

これを考える上で、貯蓄、就労、そして年金の3つは密接に関わる大切な要素です。

例えば、働き方や収入は貯蓄ペースに直結し、将来もらえる年金額にも影響しますよね。また、毎日の家計管理は老後の生活に大きく響いてくる、とも言えます。

そんな中、つい先日6月13日の年金支給日に「年金改革関連法案」が国会で成立しました。

この法案にはパートで働く人の「年収106万円の壁」(厚生年金加入条件)の撤廃に関する内容も含まれており、これまで働き方をセーブしてきた方々にも大きな影響を与えそうです。

政府の動向や社会の状況など「未来を読む」ことはできません。でも、今のシニア世代の現状を知ることは働き盛り世代のみなさんが、老後に向けたマネープランを立てるヒントとなるでしょう。

今回は、総務省統計局の最新データに基づき、65歳以上の「無職夫婦世帯」の家計収支の状況を確認。

年金受給額と生活費のギャップ、貯蓄事情や持ち家率についても見ていきます。

1. 【赤字は毎月3.4万円!?】65歳以上リタイア夫婦の家計収支を見る。生活費はいくらかかる?

完全リタイア後は、一般的には現役時代よりも少ない収入でやりくりをする必要があります。

総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」から、65歳以上無職夫婦世帯のひと月の家計収支を見ていきましょう。

1.1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)

毎月の実収入:25万2818円

■うち社会保障給付(主に年金):22万5182円

毎月の支出:28万6877円

■うち消費支出:25万6521円

  • 食料:7万6352円
  • 住居:1万6432円
  • 光熱・水道:2万1919円
  • 家具・家事用品:1万2265円
  • 被服及び履物:5590
  • 保健医療:1万8383円
  • 交通・通信:2万7768円
  • 教育:0円
  • 教養娯楽:2万5377円
  • その他の消費支出:5万2433円
    • 諸雑費:2万2125円
    • 交際費:2万3888円
    • 仕送り金:1040円

■うち非消費支出:3万356円

  • 直接税:1万1162円
  • 社会保険料:1万9171円

毎月の家計収支

  • 3万4058円の赤字

この世帯の場合、ひと月の収入は25万2818円、その約9割(22万5182円)を公的年金などの社会保障給付が占めます。

一方で支出の合計は28万6877円。そのうち社会保険料や税などの「非消費支出」が3万356円、いわゆる「生活費」にあたる消費支出が25万6521円でした。

この夫婦世帯の場合、毎月3万4058円の赤字となり、不足分を貯蓄の取り崩しなどでカバーしていく必要があります。

支出の内訳のうち「住居費」は1万6432円。持ち家率の高さが反映されて、比較的低く抑えられています。