6. 成年後見制度を活用する際の「注意点」と「デメリット」
成年後見制度は、高齢者や認知症の方の財産や権利を守るうえで有効な仕組みですが、利用にあたってはいくつかのデメリットも存在します。
そのため、この制度を活用する際は、内容を十分に理解したうえで慎重に判断することが大切です。
まず一つ大きなポイントとして、成年後見制度は一度開始されると、本人の判断能力が回復しない限り原則として終了できません。このため、制度の利用を決める際には、将来を見据えた慎重な検討が必要です。
また、後見人には、以下のような義務と制約があります。
-
家庭裁判所への定期報告義務:後見人は、本人の財産状況や生活状況について、定期的に家庭裁判所に報告する義務があります。
-
財産の管理と処分に関する制約:後見人は、本人の財産を適切に管理し、必要な支出を行うことが求められますが、自由に財産を処分することはできません。
-
専門職後見人の選任と報酬:親族間で後見人の選任に合意が得られない場合や、適任者がいない場合には、家庭裁判所が弁護士や司法書士などの専門職を後見人に選任することがあります。この場合、後見人には報酬が発生し、その費用は本人の財産から支払われます。※報酬の額は家庭裁判所が決定し、本人の財産状況によっては自治体からの補助を受けられる場合もあります。
このように、成年後見制度は、財産を保護するために有効な仕組みですが、利用にあたっては慎重な検討と十分な準備が求められます。
制度の具体的な内容や手続きについては、家庭裁判所や専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
7. まとめ
高齢化が進む中、日本は認知症患者数が増加し、それに伴う財産管理の課題は深刻化しています。
とくに、認知症の進行により預金口座が凍結されるリスクがあり、医療費や生活費の支払いに支障をきたすケースも少なくありません。
こうした事態に備える有効な手段が成年後見制度です。
制度の利用率は現状では低いものの、もしもの時にご家族が困らないためにも、その仕組みを理解しておくことは非常に重要です。
成年後見制度は、財産と権利を守る上で非常に有効な制度ですが、一度開始すると原則として終了できない点や、後見人には家庭裁判所への定期報告義務や財産管理の制約があるといったデメリットも存在します。
利用を検討する際には、内容を十分に理解し、家庭裁判所や専門家へ相談しながら慎重に進めることが大切です。
参考資料
- 厚生労働省「認知症参考資料」
- 厚生労働省「成年後見はやわかり」
- 厚生労働省「任意後見制度とは」
- 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A」
- 厚生労働省「成年後見関係事件の概況 令和5年1月~12月」
奥野 友貴