最近、「障害年金」申請に関するニュースが報じられ、障害者支援制度への関心が高まっています。このような状況において、「障害年金」と「障害者手帳」を同じ制度だと誤解されている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これらは目的も基準も異なる、それぞれ独立した制度です。
制度を正しく理解することで、自分や身近な人が必要な支援につながりやすくなります。そこで今回は、厚生労働省の調査をもとに、3種類ある障害者手帳の概要、なかでも「身体障害者手帳」の所持者の現状、そして「障害年金」との違いについて詳しく解説していきます。
1. 「それぞれの特徴とは?」【3種類ある障害者手帳】
障害者手帳とは、一般的に「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3種類のことをいいます。制度の根拠となる法律等はそれぞれ異なりますが、どの手帳を持っていても「障害者総合支援法」の対象となり、さまざまな支援を受けることができます。また、自治体や民間企業などが独自に提供しているサービスが利用できる場合もあります。
1.1 【身体障害者手帳】
身体障害者手帳は、視覚や聴覚、手足など身体の機能に一定以上の障がいがあると認められた人に交付されます。交付には指定医師の診断書・意見書などが必要になります。原則として更新は不要ですが、障害の状態に変化がある場合は再認定を受けることがあります。この制度は「身体障害者福祉法」に基づき、都道府県・指定都市・中核市が交付業務を担っています。
1.2 【療育手帳】
療育手帳は、児童相談所や知的障害者更生相談所で知的障害と判定された人に交付されます。手帳を持っていることで、障害福祉サービスや自治体・民間の支援を受けることができます。この療育手帳制度は自治体ごとで、運用方法や判定基準が定められています。
1.3 精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害があると認められた人に交付されます。手帳を持っている方々には、社会参加の促進等を図るために様々な支援を受けることができます。精神障害者保健福祉手帳には1級から3級までありますが、精神疾患の状態と能力障害の状態の両面から総合的に判断して等級が決まります。
障害者手帳の所持者は、どのくらいいるのでしょうか?
今回は「身体障害者手帳」の所持者について解説していきます。
2. 「所持者はどのくらいいるの?」【身体障害者手帳】の所持者数と傾向を確認
厚生労働省が公表している「令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」をみていきましょう。
※この調査は、前回2016年に行われて以来6年ぶりの実施であるため、2022年と2016年との比較である調査結果となります。
【2022年】障がいの種類別にみた身体障害者手帳所持者数について
※( )内は全体の割合
- 総数:415万9000人(100.0%)
- 視覚障がい:27万3000人(6.6%)
- 聴覚・言語障がい:37万9000人(9.1%)
- 肢体不自由:158万1000人(38.0%)
- 内部障がい:136万5000人(32.8%)
- 不詳:56万2000人(13.5%)
障がいの種類別にみた身体障害者手帳所持者数について、ポイントを2つにしぼって解説します。
2.1 ①6年ぶりの調査で全体数は微減も「肢体不自由」が最多
2022年の身体障害者手帳所持者は415万9000人で、2016年から12万8000人の減少となりました。障害の種類別では「肢体不自由」が158万1000人と全体の約38%を占め、最も多いことがわかります。
2.2 ②「内部障がい」の割合が増加、「不詳」も増加傾向
2022年時点で「内部障がい」は136万5000人(32.8%)で、2016年より約12万人の増加となりました。「内部障がい」は心臓や呼吸器、腎臓、膀胱・直腸などに関わる障がいで、高齢化や慢性疾患の影響が背景にあるとみられます。また、「不詳」とは「障害の種類が特定されていない」または「複数該当・分類不能」の場合に分類されますが、2022年は56万2000人と増加しています。
3. 「どの世代が多い?」【身体障害者手帳】の所持者の年齢
次に、「どの年代で身体障害者手帳を所持している人が多いのか」みていきましょう。
【2022年】年齢階級別の身体障害者手帳所持者数について
※( )内は全体の割合
- 総数:415万9000人(100.0%)
《年齢階級》
- 0~9歳:4万7000人(1.1%)
- 10~17歳:4万9000人(1.2%)
- 18・19歳:9000人(0.2%)
- 20~29歳:8万7000人(2.1%)
- 30~39歳:8万6000人(2.1%)
- 40~49歳:20万5000人(4.1%)
- 50~59歳:34万4000人(8.3%)
- 60~64歳:25万4000人(6.1%)
- 65~69歳:37万1000人(8.9%)
- 70歳~ :259万1000人(62.3%)
- 不詳:11万6000人(2.8%)
年齢階級別の身体障害者手帳所持者数について、ポイントを2つにしぼって解説します。
3.1 ①70歳以上が全体の約6割を占める
2022年の統計によると、身体障害者手帳の所持者のうち70歳以上が62.3%を占めており、全体の約6割にのぼります。年齢が上がるにつれて、加齢や病気などによる身体機能の低下が進むことが背景にあり、高齢層での手帳所持率の高さが際立っています。
3.2 ②18歳未満はわずか2.3%で少数だが、対前回比で所持者数は増加
0〜9歳と10〜17歳の合計は約2.3%と、ごく少数にとどまります。若年層では、先天的な障がいや事故などによるケースが中心であり、全体に占める割合は非常に低いことがわかります。一方で、2016年の前回調査と比べると18歳未満の所持者数は増加しています。これは、医療の進歩による早期診断の広がりや、障がいのある子どもへの支援制度の周知が進んだことで、必要な支援を早く受ける環境が整ってきたことが背景にあると考えられます。
身体障害者手帳の所持者は、年齢が高くなるほど増える傾向にあり、なかでも70歳以上が全体の約6割を占めています。一方、若年層でも手帳の所持が徐々に増えており、支援制度の周知や医療の進歩が背景にあると考えられます。
また、障がいがある人を支える社会保障の一つに「障害年金」がありますが、実は「障害者手帳」とは制度の目的も認定基準も異なります。次は、その違いについて見ていきましょう。
4. 「障害年金」と「身体障害者手帳」の違いとは?
障害者支援制度の中には、「障害年金」と「身体障害者手帳」という仕組みがありますが、それぞれの目的や認定基準は大きく異なります。
まず、「障害年金」は病気やケガで生活や仕事に支障が出たときの所得保障として支給される年金です。初診日が国民年金や厚生年金の加入中であること、保険料納付要件を満たすことなどが前提で、日常生活や就労への影響を中心に等級(1級〜3級)が判断されます。対象となる病気は、うつ病、統合失調症、脳梗塞、がん、人工透析、リウマチなど多岐にわたります。
一方で「身体障害者手帳」は、視覚・聴覚・肢体・内臓機能など身体の機能障害に対する証明書であり、障害福祉サービスや優遇措置を受けるために必要です。
障害の種類や部位に応じて1級〜7級まで細かな認定基準があり、身体機能の構造的な障害(失明や手足の欠損など)を基準に判断されます。なお、7級単独では手帳の交付対象にはならず、複数ある場合に限り6級相当とされる場合があります。
このように、障害年金と身体障害者手帳は目的も認定基準も異なる制度です。
「身体障害者手帳を取得するにはどうすればいいの?」という疑問がある場合は、お住まいの市区町村の障害福祉窓口に相談してみると安心です。
5. 制度を知ることが「安心につながる第一歩」
今回は、厚生労働省の調査をもとに、3種類ある障害者手帳の概要と、身体障害者手帳の所持者の現状、そして障害年金との違いについて詳しく解説しました。
まとめると、
- 障害者手帳は「身体・知的・精神」の3種類あり、対象者や支援内容が異なる
- 身体障害者手帳の所持者は415万人、うち70歳以上が約6割を占める
- 障害年金と障害者手帳は目的も認定基準も異なる全く別の制度
制度を正しく理解することで、自分や身近な人が必要な支援につながりやすくなります。
参考資料
・厚生労働省「障害者手帳」
・厚生労働省「令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)結果の概要」
・厚生労働省「障害年金の制度をご存じですか?がんや糖尿病など内部疾患のかたも対象です」
マネー編集部社会保障班