障害年金制度は、生活や就労に困難が生じたときに支える大切な社会保障のひとつです。最近、「不支給の増加」といった報道もありましたが、まずは制度の全体像を知ることが重要です。障害年金は一定の条件を満たし、自ら申請して認定を受けることで受給できる制度です。今回は令和5年度の「障害年金業務統計」をもとに、新規裁定や再認定の状況をひもときながら、制度の基本や支給額の仕組みについて解説します。

1. 【精神障害が最多】診断書別に見る障害年金の支給実態

障害年金を受給するためには、受給資格がある人かどうか認定されなければいけません。初めて障害年金受給の申請をする件数を「新規裁定」といいます。また、すでに障害年金の受給者が引き続き年金をもらうために申請をする件数を「再認定」といいます。

障害年金は、どの障害が多く支給されているのでしょうか?

年金機構が令和6年9月に発表した「障害年金業務統計(令和5年度決定分)」の診断書の種類別支給件数についてみていきましょう。

令和5年度 診断書種類別件数①診断書種類別支給件数

令和5年度 診断書種類別件数①診断書種類別支給件数

出所:日本年金機構「障害年金業務統計(令和5年度決定分)」

障害年金の【新規裁定】と【再認定】に分けて、それぞれのポイントを解説していきます。

1.1 【新規裁定】およそ7割が「精神障害・知的障害」

令和5年度の新規裁定では、全体のおよそ70%を「精神障害・知的障害」が占めており、とくに障害基礎年金では8割以上がこの分類に該当しています。一方、外部障害や肢体障害もそれぞれ15%以上を占めており、身体的障害も一定の割合で支給されています。眼や聴覚障害、内部障害などは構成比としては比較的少数にとどまっていますが、多様な障害に対応している実態がうかがえます。

1.2 【再認定】継続的な支援の中心も「精神障害・知的障害」

再認定においても、「精神障害・知的障害」が最多で全体のおよそ75%を占め、障害基礎年金では8割近くを占めています。これは、継続的な支援を要する精神障害の特性を反映しています。次に多いのは肢体障害などの外部障害で、安定的な継続支給が多くを占めていることがわかります。また、糖尿病などの内部障害も再認定件数全体の約11%を占めており、長期にわたる経過観察と支給が行われていることが読み取れます。

令和5年度の障害年金では、新規裁定・再認定ともに「精神障害・知的障害」が最多で、肢体障害や内部障害も一定の割合を占めていることがわかりました。

では、「実際に障害年金はどのような仕組みで、それぞれの障害等級でいくらもらえるのか?」

障害年金の仕組みと年金額についてみてみましょう。