2025年5月16日、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化に関する「年金制度改正法案」が国会に提出されました。

この法案には、現役世代にも影響を与える複数の見直し項目が含まれており、その一つが「高所得者に対する厚生年金保険料について」です。

政府が公表した資料では、一定以上の収入を得ている人に対して、厚生年金保険料の上限を引き上げる方針が示されています。

本記事では、公開されている法案資料をもとに、「厚生年金保険料の引き上げ」の具体的な内容やその影響についてわかりやすく解説していきます。

1. そもそも「厚生年金保険」ってどうやって決まるの?

厚生年金保険は、主に会社員やパートなどの労働者が加入する公的年金制度で、保険料は収入額に基づいて決定されます。

保険料は、毎月の給与(報酬)および賞与それぞれに対して算出され、現在は保険料率18.3%が適用され、そのうち半分は事業主が負担し、残り半分を加入者本人が支払います。

なお、収入が高いほど保険料も増える仕組みですが、上限が設けられているため一定以上の収入には反映されません。

現行制度では、標準報酬月額の上限が65万円とされており、それを超える高所得者にとっては、実際の収入に見合った額での保険料負担や将来の年金給付が十分に反映されにくくなっています。

その結果、実際に支払っている保険料に対して、将来的に受け取れる年金額が相対的に少なくなるというギャップが生じています。

こうした課題を踏まえ、政府は厚生年金保険における標準報酬月額の上限を段階的に引き上げる方針を打ち出しました。

これにより、高所得者層には保険料の負担増が求められる一方で、将来的に受け取る年金額も現役時代の収入により適した水準に引き上げられることが期待されています。