4. 貯蓄の多さは「年収だけでは測れない」新しいタイプの富裕層たちの台頭も気になる!
年収だけでは測れない高額貯蓄世帯の存在は、いわゆる「富裕層」と呼ばれる資産家たちの傾向との関連もありそうですね。
純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数の推移

出所:株式会社野村総合研究所 ニュースリリース「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日)
野村総合研究所の富裕層に関するニュースリリース(※1)によると、富裕層(※2)の世帯数と資産総額は、過去には一時的な減少があったものの、長期的に見れば右肩上がりとなっています。
特に2021年から2023年にかけては、株価上昇や円安が資産価値を押し上げ、顕著な増加が見られました。
なお前回(2022年)調査では相続によって富裕層入りするケースの増加が指摘されていました。さらに今回(2023年)調査では、自身の収入や資産運用によって富裕層となる「新しい資産家」たちの台頭が言及されています。
たとえば、株式相場の上昇の恩恵を受け、運用資産が1億円を超えた「いつの間にか富裕層」と名付け、40歳代後半から50歳代の会社員がメインとなるこの層が、富裕層以上の世帯のうち1~2割程度を占めていると推察。
また、都市部に住む年収3000万円以上の「大企業・共働き世帯」を「スーパーパワーファミリー」として分類。その高収入を背景に、40歳前後から資産が急増し、50歳前後で富裕層に到達する可能性が高いとされています。
こうした新しいタイプの「お金持ち」たちの登場は、今回の家計調査のようなデータからは見えにくい部分かもしれません。
贈与や相続ではなく、自分自身の手で「成り上がる」ことができるチャンスが増えていることは、特に働く世代にとっては心に響く、明るい話と言えるのではないでしょうか。
※1 株式会社野村総合研究所 ニュースリリース「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日)
※2 世帯の純金融資産額(金融資産から負債を差し引いた金額)をもとに、超富裕層(5億円以上)、富裕層(1億円以上5億円未満)準富裕層(5000万円以上1億円未満)アッパーマス層(3000万円以上5000万円未満)マス層(3000万円未満)の5つのランクに分類
5. まとめにかえて
今回は、貯蓄額と年収の関係を軸に、世帯類型による貯蓄分布の差に関するデータや、「新しいタイプの富裕層」の登場についても触れました。
とはいえ、貯蓄の理想的な目標額は、世帯の人数やライフスタイル、そして何より将来設計によって変わってきます。一概に「いくらあれば十分」と言い切れるものではないでしょう。
そして何より、貯蓄を考える上で忘れてはならないのが「負債」の存在です。住宅ローンを始めとする負債がある場合は、貯蓄額から負債額を差し引いた「純貯蓄額」、つまり本当の貯蓄額にも目を向ける必要あるでしょう。
今回のご紹介したデータはあくまでもみんなの「平均」です。世帯のライフプランや収入・負債の状況と照らし合わせながら、上手な資産形成に繋げるヒントになればと思います。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2024年(令和6年)平均結果-(二人以上の世帯)貯蓄の状況」
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株式会社野村総合研究所 ニュースリリース「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日)
6.1 【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
6.2 【ご参考】年間収入とは
総務省統計局の「家計調査」における「年間収入」とは、世帯全体の過去1年間の収入(税込み収入)です。以下1~6の収入の合計金額となっています。
1. 勤め先収入(定期収入、賞与等)
2. 営業年間利益(原材料費、人件費、営業上の諸経費等を除く。)
3. 内職年間収入(材料費等を除く。)
4. 公的年金・恩給、農林漁業収入(農機具等の材料費、営業上の諸経費等を除く。)
5. その他の年間収入(預貯金利子、仕送り金、家賃収入等)
6. 現物消費の見積り額
吉沢 良子