年金は老後の生活を支える重要な柱です。しかし、現役時代の働き方によって、将来受け取ることができる年金額には大きな差が生じることをご存知でしょうか。

最新の統計によると、公的年金被保険者全体のうち、約30%が厚生年金に加入していない状況です。

加入をしていないのは、自営業などの国民年金第1号被保険者と、専業主婦などの第3号被保険者です。

厚生年金加入者は、老後の年金額として基礎年金である国民年金に加えて、収入に応じた上乗せ部分を受け取ることができます。一方、国民年金のみの加入者は基礎年金部分しか受け取れないため、将来の年金受給額が厚生年金加入者と比べて大幅に少なくなってしまいます。

このような状況を踏まえ、本記事では年金受給額の統計から見た月額10万円未満の年金受給者の実態や低所得の年金生活者向けの経済支援制度である年金生活者支援給付金について解説します。

ぜひ参考にしていただければと思います。

1. 最新の年金受給額データ

まずは、最新のデータである、2024年度末の年金受給額の実態を確認していきます。

1.1  年金受給額の実態

厚生労働省による統計である「厚生年金保険・国民年金事業統計年報」の最新データによると、老齢厚生年金保険の年金月額階級ごとの受給権者数は男女合計で以下のようになっています。

老齢厚生年金保険の年金月額階級ごとの受給権者数2/4

老齢厚生年金保険の年金月額階級ごとの受給者数

出所:厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業統計」

  • 5万円未満:1.9%
  • 5万円以上10万円未満:19.3%
  • 10万円以上15万円未満:31.2%
  • 15万円以上20万円未満:31.3%
  • 20万円以上25万円未満:14.6%
  • 25万円以上30万円未満:1.6%
  • 30万円以上:0.1%

1.2 年金受給額が月額10万円未満の割合

上記の統計によると、年金受給額が月額10万円未満、つまり年額120万円未満である受給権者の割合は21.2%です。年金受給者全体のうち、5人に1人以上が月額10万円未満の年金額で生活をしていることがわかります。

収入が「10万円未満」と聞くと、それだけでかなり少なく感じられますが、年金受給額は額面通りの金額がそのまま受け取れるわけではなく「受給額」から住民税や健康保険料などが控除されるため、実際に振り込まれる金額はさらに少なくなります。

そのため、受給額が10万円未満の場合、年金収入だけで生活をするのはかなり苦しい状況になることがわかります。

2. 年金支給額の決定方法

次に、月々の年金受給額がどのように決定するのか、簡単に説明していきます。

2.1 国民年金(老齢基礎年金)受給額

国民年金の受給額は、受給者が「国民年金保険料」を納めた月数によって決定します。

国民年金保険は日本国内に居住する20歳から60歳未満が原則として加入する義務があり、全員が一律の保険料を支払います。

会社に勤めるなどで社会保険に加入している期間や、社会保険に加入している配偶者の扶養である期間には、国民年金保険料の支払いをすることなく「納付済み期間」として月数がカウントされます。

保険料が加入者全員一律であるため、老後に支給される国民年金(老齢基礎年金)も、加入月数が同じであれば同額となります。

日本に居住をしていない未加入期間や保険料の免除期間がある場合には、その月数分の年金額が受給額から控除されます。

2025年度において、40年間満額で支払いをしている場合であれば、老齢基礎年金の月額は6万9308円(年額83万1700円)です。

2.2 厚生年金(老齢厚生年金)受給額

厚生年金の受給額は、受給者が社会保険に加入していた「加入期間」と「報酬月額相当額」によって計算されます。

個人事業主など社会保険に加入をしない働き方をしていた場合には、厚生年金を受給することはできません。加入期間と報酬月額相当額によって、以下のように受給額の差が生じます。

【加入期間】

厚生年金受給額は加入期間に応じて高額になるため、社会保険の加入期間が長いほど受け取ることができる厚生年金の金額も大きくなります。

【報酬月額相当額】

月額の報酬額と、年間の賞与額によって決定するのが「報酬月額相当額」です。厚生年金は報酬月額相当額と比例して受給額も上がるため、社会保険加入時の給与や賞与が高いほど、将来受け取ることができる年金額が高くなります。

2.3 最終的な年金額の決定方法

老齢年金の最終的な受給額は、基礎年金と厚生年金を合わせた金額になります。

厚生年金に加入している場合、その保険料には国民年金の保険料も含まれているため、同時に国民年金の加入期間としてもカウントされます。

このため、厚生年金に加入していると、基礎年金に加えて厚生年金も上乗せされて受け取ることができます。

一方、厚生年金に加入していない期間は基礎年金のみの受給となり、将来的に受け取る年金額が大幅に少なくなることがあります。

このようにして、老後の年金額に大きな差が生まれ、月額10万円未満という低所得な年金受給者層が発生することにつながります。

3. 低所得シニア向け「年金生活者支援給付金」

年金生活者支援給付金は、年金受給額が一定以下である低所得の年金生活者に対して用意されている、政府による経済支援です。

3.1 年金生活者支援給付金の概要

年金生活者支援給付金は、老齢・障害・遺族それぞれの基礎年金を受給している人が、年金等の収入や所得の合計額が一定以下である場合に、経済的支援を図るために支給されるものです。

支援給付金の種類は以下の3種類あり、受給権を持っている基礎年金の種類によって受給できるものが異なります。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

※老齢年金の場合のみ、給付金を受け取っている人が受け取っていない人の年金額を上回ることがないよう、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という制度により調整が行われます。

年金生活者支援給付金制度4/4

年金生活者支援給付金制度

出所:厚生労働省「「年金生活者支援給付金制度」について」

3.2 老齢年金生活者支援給付金の対象者

「老齢年金生活者支援給付金」の支給対象となるのは、下記の全てを満たす者です。

  • 65歳以上の老齢基礎年金受給者であること
  • 前年の公的年金等収入とその他所得の合計が下記の基準額以下であること

※基準額は生年月日により以下の通り
昭和31年4月2日以後生まれ:88万9300円
昭和31年4月1日以前生まれ:88万7700円

  • 世帯全員が市町村民税非課税であること

※老齢年金の繰下げ支給の申請をしている場合は、繰下げ中は給付金を受け取ることはできません。

3.3 老齢年金生活者支援給付金の支給額

老齢年金生活者支援給付金の支給額は、基準額と受給者の「国民年金の保険料納付状況」により計算されます。

【給付基準額】

  • 2024年:5310円
  • 2025年:5450円(約2.7%増)

【支給額の計算方法】

以下の1と2の計算の合計額

  1. 保険料納付済期間に基づく額:基準額(5450円)×保険料納付済期間÷被保険者月数480月
  2. 保険料免除期間に基づく額:免除割合によって決められた額×保険料免除期間÷被保険者月数480月

※2.で乗じる「免除割合によって決められた額」は、受給者の生年月日と免除割合によって異なります。

4. 今から計画的な貯蓄や資金形成を

今回の記事では、年金受給者の21.2%が月額10万円未満という低年金で生活している実態と、その背景にある年金制度の仕組み、さらに低所得の年金生活者向けの支援制度について説明しました。

現役時代の働き方によって、老後の年金受給額は大きな差が生じることになります。

低所得な年金生活者に対しては、「年金生活者支援給付金」という経済支援も用意されていますが、それでも年金だけで生活を賄うためには、支出を切り詰めることが必要になります。

老後の生活でお金に不自由しないためには、若いうちから年金制度をよく理解し、将来受け取れる年金額を把握した上で、不足分を補うための計画的な貯蓄や資金形成をしていくことが重要です。

参考資料