3.2 在職老齢年金制度の見直し
在職老齢年金とは、働きながら年金を受給する場合、一定以上の収入がある人の年金の一部または全部を支給停止する仕組みのことです。
支給停止となる収入基準額は現在51万円(2025年度)ですが、改正案では62万円となっています。
改正により、支給停止を避けるために働き控えする年金受給者の就業を促す効果が期待できます。
3.3 遺族年金の見直し
遺族年金の見直しの主な目的は、遺族厚生年金の男女差解消です。女性と異なり60歳未満の男性は原則遺族厚生年金を受給できません(遺族基礎年金の受給権者を除く)が、改正案では支給対象としています。
一方、女性にとっては遺族厚生年金の受給期間が短くなったり加算を段階的に縮小したりするなど、不利になる面もあります。
3.4 標準報酬月額の上限の段階的引上げ
標準報酬月額は、厚生年金保険料や将来の老齢厚生年金額の計算基礎となるものです。現在は1等級(8万8000円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれていますが、上限額を段階的に引き上げようとしています。
- 2027年9月から68万円
- 2028年9月から71万円
- 2029年9月から75万円
高所得者の人は厚生年金保険料がアップする一方、将来受け取る老齢厚生年金は増額になります。
4. まとめにかえて
直近の年金平均受給額は、厚生年金が月14万6429円、国民年金が月5万7584円です。年金だけで老後生活を賄える人は限られるため、いくら受給できるかを確認したうえで、事前の資金準備や老後の収入確保を検討しましょう。
現在、厚生年金を中心に年金制度の見直しが検討されています。
老後の家計に大きく影響する可能性もあるため、今後の動向に留意しましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「年金制度改正法案を国会に提出しました」
- 日本年金機構「 ガイドブック「パート・アルバイトのみなさまへ 配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさまへ」(従業員用)」
西岡 秀泰