最近、満員電車を避けるため、あるいは運動不足の解消のために、特に都市部では自転車で通勤する人がよく見られます。自転車事故の件数自体は減少傾向にあるのですが、実は事故の件数は通勤時間帯が最も多く、また若年層よりも30~40代や高齢者の事故が多いといわれます。意外にも、自転車通勤に関わる問題は山積しているのです。

自転車のルールといえば、3年前の道路交通法の改正が記憶に新しいところです。ただ、実際どう変わったのかは、なんとなくは知っていても、しっかりとは理解できていない人も多いのではないでしょうか。この記事では、「自転車の交通ルールはいま、どうなっているのか」をお伝えします。

2013年に「逆走」が禁止される

自転車の交通ルールについて定めている法律は、ご存じの方も多いと思いますが「道路交通法」です。また各都道府県により条例などでルールが定められている場合も多くあります。道路交通法の中で、自転車の交通ルールは、2013年と2015年の二度にわたって大きく変更されました。

2013年の改正の大きなポイントは、路側帯における「逆走の禁止」です。この改正によって、自転車が路側帯を走る場合に、通行できるのは左側に制限されました。違反した場合は、懲役刑や罰金刑が課されます。また、以前から、路側帯を通る際には「歩行者の通行を妨げてはいけない」とされていますので、あわせて注意しましょう。

しかし、逆走自転車はまだまだ多く見かけられます。筆者自身、車を運転していたときに、逆走自転車が前から来てヒヤヒヤしたことが何度かあります。自動車・自転車・歩行者全員が危ないので、逆走は絶対にやめましょう。

「ベル」の使い方に制限が

2015年には、信号無視など一定の「危険な違反行為」を犯して3年以内に2回以上摘発された自転車運転者を「悪質自転車運転者」とし、該当者に講習の受講が義務づけられました。ここでは「自転車による危険な違反行為」としてあらためて14の行為が明示されたことで、大きく話題になりました。その中でもよく話題にのぼるのは、自転車の「ベル」の使用制限と、スマホやイヤホンを使用しての運転の制限が明示されたことです。

少し前、SNSでも「自転車のベル問題」が話題になりました。昔は自転車が歩道を走り、ベルを鳴らして歩行者にどいてもらう光景をよく見ましたが、いまそれをすると法律違反です。自転車はあくまで「車両」なので、歩行者を優先しなければなりません。

道路交通法では、自転車のベルも自動車のクラクションなども特に区別されず「警音器」と呼ばれて区分されていますが、「道路標識に従って警音器を使用する場合」と「危険を防止するためにやむを得ず警音器を使用する場合」以外には、ベルを鳴らしてはいけません。

「スマホ・イヤホン」の使用制限

スマホとイヤホンの使用は、集中力を乱すような使用方法の場合に道路交通法の安全運転義務違反となるほか、都道府県の条例等で禁止されている場合もあります。

「スマホの使用がダメなのはわかるけど、イヤホンはどうしてダメなの?」という声をよく聞きますが、人間は思っている以上に聴覚に頼っています。耳を塞いで音を流していると、後ろから近づいてくる車や、見通しの悪い交差点で左右からくる車の存在に気づけず、はねられてしまう危険もあります。

被害者になる危険だけではありません。2017年12月には、女子大生がスマホとイヤホンを同時に使用しながら電動アシスト自転車を運転し、歩行者とぶつかって死亡させる事故がありました。自転車でも、ちょっと集中が欠ければ、重大事故につながる可能性があります。スマホとイヤホンは運転中、基本的に使用しないほうがよいでしょう。

事故が起きないことが一番

もちろん、ルールを守っている人は大勢います。しかし、逆走自転車やベルを鳴らしまくる自転車、歩道を走る自転車など、ルール違反の自転車を見かけることが多いのも事実です。

自転車は車やバイクのように免許制ではなく、交通ルールはグレーな部分が多いため、賛否が分かれることもあります。しかし、事故が起きずに、みんなが安全に移動できることが何よりも大事です。もちろん、ルール等で明確に禁止されているわけではなくても、安全性が低下したりする行為は本来すべきではないでしょう。

こうした法律や条例は、知らないうちに変更されていることも多いもの。最新の自転車の交通ルールについては、警視庁のサイト内のページ「自転車の交通ルール」などで確認できますが、地域によって異なる点もあります。そのため、お住まいの都道府県や管轄警察のサイトもあわせてチェックしておくことをおすすめします。自転車・自動車・歩行者の全員が気持ちよく、安全に移動できるように、いま一度ルールを確認しておきましょう。

※一部、法律・条例解釈の詳細等を修正しました。

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